うちの推し優秀過ぎる!
「あー…宿に行く前に寄り道すっぞ。」
「寄り道?」
「宝石商だ。」
寄り道することになった私とナナシさん、宝石商は何処だろと思っていたら直ぐに見つけていた。ナナシさんすげぇ。
「さっき地図貰ってたからな。」
「あ、なるほど。」
「いらっしゃいませ。ご要件は…」
受付嬢さんが対応していた。ただナナシさんを見てビビっていたけど。アイテムボックスから宝石の山を出した。盗んだと怪しまれない?
「は、拝見します。これはもしや…ドラゴンの宝では?」
「ああ、お前にだけ特別に教えてやるよ…若いドラゴンが溜め込んでいた宝石の山をドラゴンを倒したついでに回収したんだ。」
「そ、それはそれは…」
…ん?情報開示早いな?ナナシさんらしくもない。ついでと言わんばかりにドラゴンの鱗を出していた。え、ひょっとして脅しとして使ってない?
「ほ、本物…」
「もし適正価格で売らねぇのなら考えがある。」
「ひっ!か、かしこまりました!適正価格…いえ、それ以上にお支払いします!」
…あれぇ?とんでもない事してないこの人?脅してる、脅してるよこの人!ギルドマスターらしき人が現れてヒソヒソと話し込んでいた。こほんと咳払いして宝石の山を見つめていた。
「ブルートパーズからピンクダイヤモンドまであるとは…いやはやこれはこれは素晴らしい実力で。」
「そういうのはいい。で?」
「はい、こちらになります。」
おお、金貨4千枚って書いてある。ってか私読めるんだ。良かったー。これでいいのでは?とチラ見したら納得してない顔していた。
「ほぉ?4千枚ねぇ。こっちは苦労して倒したんだぜ?なのに4千枚はねぇよ。」
ひぇっ、この人鬼だ!鬼以外何がある?!ギルドマスターさんビビっているよ?!後なんか…空気がおかしいっていうか!…あれ?なんか虚ろな目になってない?ギルドマスターさん。
「適正価格は?」
「大金貨100枚となります。」
「ぎ、ギルドマスター?!」
「なるほどな。騙そうとしていたわけだ。適正価格はそれにしろ。」
「は、私は何を…貴様何を?!」
「…ほぉ?俺に嘘ついただけじゃなくて冤罪ふっかけようってか?勝手に言ったのはそっちだぜ?」
「くぅ…!」
こうして宝石の山と引替えに大金貨百枚をGETしたのだった。というかいくらくらいあるの?
「銀貨が百円、誰にでも支払えるとすりゃあそのくらいの値段が妥当だ。なら金貨は一万円。大金貨は一枚で十万だとすりゃあ。俺たちの所持金は千万円くらいだ。」
「ほぇー!」
「観察しとけ。ほら行くぞ。」
後ろから騒ぎがするのだけども怖いから振り向かないようにして店から出て大通りを通って宿屋へとやって来た。大きいなぁ。
「いらっしゃいませ。」
「泊まりてぇんだが。」
「申し訳ございませんが空いている部屋は…」
「ふぅん。」
なにか考え込んだかと思えばまた目の前にいる人の目が虚ろになった。ペラペラと喋り始める。平民風情がこの宿に来るなとか、ここは貴族専用の宿だとか…うっわ。この人こんなこと考えてたの?というか、これどう考えてもナナシさんの魔法だよね?!
「そのつもりなら別の宿にするわ。」
「は、わ、私は何を?!」
「だから泊まれなかったのか?!」
「平民で悪かったな!」
「ヒィィィィ!!!」
騒ぎを無視して私たちは別の宿を探したのだった。というかさっきから違和感を覚えたんだけどあれはどう考えても。
「ああ、俺の四騎士魔法だ。」
「やっぱり。」
「流石は俺を作っただけあって察しがいい。」
「ヨハネの黙示録に登場する四騎士だからよく知ってる。」
【支配】【戦争】【飢餓】【死】
の四つを宿してるとされるのがヨハネの黙示録の四騎士だ。私が設定したんだから分かってる。まさかあそこで支配使うとは思ってなかったけど。
「敵意丸出しの奴に魔法使わねぇ方がおかしい。」
「それはそれでどうなの。」
「そういうもんだ。ここならいいだろうな。」
さっきの大きな宿屋よりは庶民的な宿屋で入りやすい。入ると元気な子供が手を振っていた。
「いらっしゃいませ!」
「この宿に泊まりてぇんだが。」
「お母ちゃんに行ってきます!お母ちゃん!お客さん!」
「んな馬鹿な。あの出来たばかりの宿屋に客が吸い取られて…あらホント!すみません今すぐ用意します!」
「いえいえ何時までも待ってますんで。」
いや誰だよ。さっきまで支配してペラペラ本音を喋らせていたのによくもまあそんな顔をしていられるもんだ。かっこいいけどもさぁ。
「こちらの番号のお部屋をお使いください。」
「ありがとうございます。」
「い、いえいえ!アンタ!夕食の準備しな!」
「え、客は…嘘だろ居る!?」
「夕飯と朝食付きでいくらしますか?」
「銀貨五枚です。」
「どうぞ。お釣りは…」
「あんた!大金貨を出すお客さんだよ!張り切りな!お、お釣りはこちらになります!」
「ええ、ありがとうございます。そんな緊張せずとも。」
「い、いえいえ…なんて紳士的なのかしら。」
「おーい!マリアー!手伝ってくれー!」
「はいはい分かりましたよ!で、ではごゆっくりー。」
…さっきの女店主さん、ナナシさんのファン化したな。そりゃそうだ。イケメンで紳士的な男なんだから。猫被ってるけど。
「行くぞ。」
「アッハイ。」
宿屋にある部屋に入ると、ベッドが2つあった。ラッキー!寝転がるとふわふわで中々心地よい。
「ギルドカードは次の日に発行するらしいから明日取りに行くぞ。」
「ウッス。」
「その後お前のレベル上げだ。分かったな。」
「へい!」
「へいはやめろ。」
「はい!」
「それでいいが…そのナナシさんってのやめねぇか?」
「…なんで?」
「なんでもだ。」
「…ナナシ?」
「それでいい。」
えー、ホントなんでナナシさんって呼んだらダメな訳?と言おうとしたら撫でられた。何これぇ?小動物扱い?
「何となくそう呼ばれるのが嫌だからな。」
「え?」
「さっさと寝るぞ。」
意味深いこと言うだけいって寝たーー!!…まあいいや寝よ。ぐっすり眠ることが出来たのだった。夕飯のことをすっかり忘れて。
「あ、夕飯。」
「さっきアイテムボックスの中に入れておいたから何時でも食える。」
「な、ナナシ様…」
「そういうのやめろ。」
改めて推しのステータスを見る、うーむ、性癖全開。どうしようかコレ。
「気楽にやれ。」
「主従関係逆転してません?!」
「お前がポンコツだからだろうが。」
思わず土下座したのは言うまでもない。




