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第85話 おかえりなさい
村長がゆっくりと私の前に進み出た。
「相沢美咲さん」
「はい」
「これより、あなたは水守の里の、新しい水見です」
私は頷いた。
「ようこそ、美咲」
村長が深く頭を下げた。村人たちも、皆私に向かって、深く頭を下げた。
「ようこそ」
「ようこそ、美咲さん」
「ようこそ、お帰りなさい」
口々に村人たちが声をかけた。里穂が両手で私の手を握った。
「美咲さん、これで私たち、本当の家族ですね」
ハツが私の頬を、優しく撫でた。
「お祖母様も、きっと喜んでおられるよ」
源蔵が私の肩に手を置いた。
「水見の道は長いさ。でも、ここでずっとわしらが見守っとる」
私は村人たち一人ひとりの顔を見回した。皆、温かく微笑んでいた。母のように。父のように。兄や姉のように。
——家族。
その言葉がすとんと胸に落ちた。私は両手を合わせて、深く頭を下げた。
「皆様、ありがとうございます。これからよろしくお願いいたします」
風が私の頬を撫でた。湿った、川の匂いを含んだ風。その匂いはもう不快ではなかった。むしろ、子供の頃から知っている、家の匂いだった。




