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第75話 智樹の到着
招の日の昼下がり、空は嘘のように晴れていた。
明日が水守祭の最終日。「還の日」。
昼過ぎ、村のバス停まで私と里穂が出迎えに行った。
「美咲さん、緊張しないでいいですからね」と、里穂が私の手を握った。
「智樹さんは私たちみんなのお客様。村のみんなでもてなしますから」
私は頷いた。バスが村に到着した。降りてきたのは智樹、一人だった。リュックを背負った、いつもの智樹。私を見つけて、彼は嬉しそうに手を振った。
「美咲!」
私も手を振った。智樹が駆け寄ってきた。私の前に立ち、しばらく私の顔をじっと見つめた。
「美咲」
「うん」
「なんか、ちょっと雰囲気、変わったね」
「変わった?」
「うん。なんていうか……落ち着いた感じ。あとすごく、ふんわりしてる」
「ふんわり」
「うん。村の空気のせいかな」
智樹は笑った。私を軽く抱きしめた。その腕の中の、智樹の温もりは本物だった。生きている、人間の温もり。私は彼の背中に両手を回した。そして、彼の肩に頬を預けた。




