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第64話 山田香織の名

「鈴木義雄、四十五歳」


「高橋勇、二十八歳」


「渡辺隆、五十四歳」


村長は一人ひとりの名前を丁寧に読み上げていった。


「佐々木健一、二十四歳」


その名前を聞いた瞬間、私の隣の誰かがわずかに嗚咽をこらえた。私は横を見た。


——美樹。


いつの間にか、私の隣に美樹が座っていた。八十九歳の彼女が御霊山の中腹までいつ登ってきたのか、わからない。けれど、彼女は今、ここにいた。美樹は私の手を両手で握っていた。震えていた。けれど、涙はもう流していなかった。朗読が続いた。


「山田武雄、五十二歳」


私の手の中で美樹の手にぐっと力がこもった。


——山田武雄。


香織の、曾祖父。そして、続けて、村長は年代をめくった。


「平成五年、山田香織、二十二歳」


その瞬間。私の頭の中である光景が揺らめいた。ショートカットの、若い女性。御霊山の頂上で笑っている。


——いや、それは結衣ちゃんの姿だったか。


それとも、山田香織?


「香織」と「結衣」の、二つの名前が私の中で混じった。


私にはもう思い出せなかった。

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