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第56話 一日目の夜
祭りの一日目はそれで終わった。
夕方、里穂の家で夕食をご馳走になり、私は祖母の家に戻った。仏壇に線香を上げた。雨が降り始めた。最初は静かな、霧のような雨だった。けれど、夜が更けるにつれて、雨脚は強まっていった。瓦屋根を打つ雨音。布団に入ったが、目が冴えていた。
東京で雨の夜を過ごす時、私はいつも雨音を煩わしく感じた。眠りの邪魔だ、と。けれど、今夜の雨音は煩わしくなかった。逆に心地よかった。子守唄のように私を包み込んだ。雨の一粒、一粒が自分の心臓と同じリズムで、屋根を打っているような気がした。
ぽたん、ぽたん、ぽたん。私は胸の上に手を置いた。
——雨と心臓が同期している。
おかしいと思うべきだった。なのに、怖くなかった。ただ、優しい、深い眠気が私を包んだ。最後にふと智樹のことを思った。智樹は今、東京で何をしているだろう。私がもう東京には戻らないかもしれないと知らずに。
その思いを深く追う前に私は眠りに落ちていた。




