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第54話 もう、こっちの人の顔
祝詞が終わり、村人たちがそれぞれの家に戻り始めた。その帰り際、村人たちはひとりずつ、私の前を通り過ぎていった。そして、皆私に小さく頭を下げた。
「お帰りなさい」
「待っていましたよ」
「美智子さんによく似てらして」
「ありがとうございます」
口々に声をかけてくれた。私はそのどの声にも、笑顔で応えた。ふと自分の表情に気づいた。私は自然に微笑んでいた。緊張も、警戒も、なかった。生まれて初めて、たくさんの「家族」に迎えられたような、満ち足りた感覚が胸に広がっていた。
特に年配の女性たちの視線が暖かかった。
——皆、私のことを知っている。
私がここに来ることを最初から知っていたのだ。そして、私自身も、ここに戻ってきた、と感じ始めていた。
「美咲さん」
ハツが私の手を両手で握った。柔らかい、温かい手。
「あんた、いい顔になってきたね」
「いい顔、ですか」
「うん。ここに来た時は東京の、疲れたお嬢さんの顔だった。今日はもうこっちの人の顔だよ」
私はその言葉をふしぎなくらい素直に受け入れた。




