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第48話 底へ降りる階段
私はその場に座り込んでいた。涙が頬を流れていた。けれど、不思議と塩辛い、普通の涙ではないような気がした。ふと頬を指で拭った。透明な、ほとんど無臭の水だった。
結衣を思い出した瞬間、私の体から結衣を悼む涙が流れ出した。けれど、その涙はもう人間の涙ではなかった。
——私はすでに半分変質し始めている。
そう思っても、もう手が震えなかった。震えるべき場面で、震えない自分がそこにいた。立ち上がった。奥へ進むしかなかった。結衣のいる場所——四十八人のいる場所——美智子の見たもの——すべての答えが、この奥にある。トンネルはさらに五十メートルほど続いて、突き当たった。
突き当たりはコンクリートの壁ではなかった。自然の岩盤が剥き出しになっていた。コンクリートで囲われた人工のトンネルが唐突に自然の地層に入れ替わっていた。掘削がここで止まった、ということだ。そして、その岩盤の中央に亀裂があった。
人ひとりがぎりぎり通れるくらいの、縦の裂け目。裂け目の奥は暗かった。懐中電灯で照らした。その先にぼんやりと階段のような岩の段が続いていた。自然にできたものか、誰かが削ったものか、わからなかった。
——下へ続いている。
私は深く息を吸った。そして、裂け目に体を押し込んだ。




