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第26話 山麓の小さな家
翌朝、ハツが私を美樹の家まで送ってくれた。
「家まで一緒に来ようかと思ったけど、最初は二人だけのほうがいいでしょうから」
ハツは村の小道の途中で立ち止まり、私の手を握った。
「美樹さんはね、たくさん話してくださると思うわ。でも、辛そうにしたら、聞き止めてあげてね」
美樹の家は村の端、山麓の細い道を少し登った先にあった。古い木造の平屋。雨樋は村の他の家のような太い配管ではなく、普通の細いものだった。庭にはいくつかの野菜の小さな畝。私が玄関の前に立つと、戸が内側からゆっくりと開いた。
小柄な、白髪の老婆が立っていた。背は曲がっていたが、目は澄んでいた。
「お祖母様の、お孫さん?」
「はい。相沢美咲です」
老婆——美樹は私の顔を、長い、長い時間、見つめた。それから、震える指先で自分の口元を覆った。
「ああ……」と、小さな声を漏らした。
「やっぱり、来てくれたのね」
「私のこと、ご存知だったんですか」
「美智子さんから、写真、見せてもらってたから。何度も、何度も。
『この子が、私の宝物よ』って」
——宝物。
胸の奥がしめつけられた。私はあまり、祖母の家には来なかった。十二歳を過ぎた頃から、来なくなった。それなのに、祖母は私の写真を、ずっと誰かに見せていた。
「中に、入って」と、美樹は言った。
「ずっと、待ってたよ」




