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第15話 水守源蔵
里穂は私を村の中心にある、もう一軒の家へ案内してくれた。
「祖父母に挨拶していただけると、嬉しいです。お祖母様の最期、看取ってくれたのは、二人なので」
里穂の家は村の中でも特に立派な日本家屋だった。広い土間、磨かれた板の間、奥から漂う煮物の香り。老人がひとり、囲炉裏の前に座っていた。背は曲がっていたが、目だけが鋭かった。
「祖父の源蔵です」里穂が紹介した。
「美智子さんのお孫さん、いらっしゃいました」
老人はゆっくりと顔を上げた。私を見た瞬間、その表情が少しだけほどけた。
「ああ……」と、声を漏らす。
「あんたが、美智子さんの孫か」
「はい。相沢美咲です。祖母がお世話になりました」
「いいや。世話したのはこっちの方さ」
源蔵は私を上から下まで、ゆっくりと見渡した。何かを確かめるように。そして、長く息を吐いた。
「美智子さんによう似とる」
その声には優しさと、何か別のもの——ためらいのようなもの——が混じっていた。
「ここの水、飲んでいくかね」
源蔵が湯呑みを差し出した。中に、澄んだ水が入っている。
「ありがとうございます」
私は湯呑みを受け取った。
——その瞬間、リュックの中の桐箱の瓶の重みが、急に意識された。




