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第13話 待っていた女

バス停の小さなベンチに、若い女性が座っていた。私と同じくらいの年齢に見えた。三十前後。長い髪を一つに束ねて、地味だけれど清潔感のあるシャツとデニムを着ている。私が降りると、女性は立ち上がり、ほっとしたような微笑みを浮かべた。


「相沢美咲さん、ですよね」


私は驚いた。誰にも到着の予定は伝えていない。祖母の家の鍵を持っていたから、村役場にも連絡していなかった。


「あの、どうして——」


「里穂です。水守里穂」女性は丁寧に頭を下げた。「美智子さん——あ、お祖母様の家、ずっと管理を手伝ってたので」


「祖母の?」


「はい。お一人になってから、私の祖父母がよく顔を出していて。お祖母様が亡くなった後も、お家の風通しとか、庭の手入れとか」


私の胸の奥がふいにゆるんだ。祖母は東京の家族からは疎遠になっていた。最後の数年、誰がそばにいたのか、私はちゃんと知らなかった。母も、祖母の話をしたがらなかった。


——この人たちが、祖母を看取ってくれたのだ。


「ありがとうございます。何も知らずに、お任せしてしまって」


「いえ、こちらこそ、美咲さんが来てくださって嬉しいです」


里穂は私の荷物に手を伸ばした。


「お疲れでしょう。家までご案内します。一緒に歩きましょう」


その声は本当に温かかった。


しばらく、私が忘れていた何か——家族のような優しさ——が、近くに戻ってきたような気がした。

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