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第11話 逆さに流れる雨
新宿駅から特急で四時間、それからローカル線に乗り換えて、さらに一時間。最後はバスで山麓の村まで、四十分。電車の窓から景色を眺めていると、ふと雨が窓を打っているのに気づいた。今朝の天気予報は晴れだったはずだ。
そして、おかしなことに、雨粒が窓を上から下に流れていない。横に流れている。あるいはところどころで、下から上へ流れている雨粒もある。私はしばらく窓を見つめていた。何度瞬きしても、その光景は変わらなかった。
隣の席の老婦人が、私に気づいたようだった。柔らかい声で、こう言った。
「あなた、御霊山の方へ?」
「ええ。祖母の家の整理に」
「気をつけてね、お嬢さん」
「はい」
「水は、選ぶから」
老婦人はそれ以上は何も言わず、次の駅で降りていった。私は窓の外を見た。雨はもう、上から下へ、普通に流れていた。バスに乗り換えた時、運転手が私の顔をじっと見つめた。一瞬、何かを言いかけて、止めた。代わりに、こう尋ねた。
「水守村まで、ですよね」
私はうなずいた。
「ご親戚の方?」
「祖母が、近くに住んでいました」
運転手はもう一度、私の顔を見た。
「そうですか」
それ以上は何も言わなかった。ただ、バックミラーに映る運転手の目が、何かを知っている目だった。




