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第10話 人型の水染み
土曜日、午前四時。
アラームが鳴る前に目が覚めた。昨夜の夢のせいか、シーツが湿っている。汗か、それとも——
手で触れてみると、シーツは確かに濡れているが、匂いがない。汗特有の匂いも、その他の体液の匂いもない。ただ、無臭の水分。
そして、濡れたシーツに奇妙な模様ができている。まるで、私の体の輪郭に沿って、水が染み出したような。人型の水染み。
しばらく見つめていたが、考えるのを止めた。今日は、長い一日になる。
シャワーを浴びた。熱い湯を浴びているのに、なぜか寒気がした。排水口に流れていく水を見つめていると、渦が人の顔に見えた気がした。慌てて目を逸らした。
鏡を見ると、首筋に小さな痣のようなものがあった。薄い青色の、水滴の形をした痣。触れてみると、ひんやりと冷たい。まるで、皮膚の下に水が閉じ込められているような——
昨日まで、こんな痣はなかった。
何かが、変わり始めている。
リュックの底に、桐の箱に入った祖母の瓶が入っている。その上に、薄手のセーターを被せた。リュックを担いだ時、瓶の重みが、肩にかすかに伝わった。
出発の支度を整え、玄関の鍵を回した瞬間、廊下の遠くから、ぽたん、と水音がした気がした。
振り返ったが、誰もいなかった。




