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異郷の砂に刻む足跡  作者: Rizanthe Dravenhart


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臆病者の覚悟

雲に覆われた太陽のせいで、今日は少し暗い。冒険者ギルドの中では、雨を恐れて多くの人々が集まっていた。


サンヤ、トガ、そしてゼラティアは依頼板を見ている。しかし、貼ってある依頼はたったの三枚で、すべてモンスター討伐の依頼だった。


「どの依頼にする? ゴブリン討伐、リザードマン討伐、それともランタンフライ討伐?」サンヤが尋ねる。


「ゴブリンは確かに簡単だが、いつも集団で動いている。リザードマンは非常に賢い上に、やはり集団行動だからリスクが大きい」とトガ。


「それならランタンフライにしない?」ゼラティアが言う。


「ランタンフライか…でも、何百匹ものあの虫がいる巣穴の中に入らなきゃいけないんだぞ」とトガ。


「どの依頼も、今日はリスクがすごく大きいみたいね」ゼラティアが言う。


(なんだか、チャンドラがいたらきっとすぐにやる気満々になるんだろうな。あいにく彼はドロティと滝で修行中だけど…) サンヤは心の中で思う。


「トガ…あなたはリスクを考えすぎるのよ。冒険者なら、どんな状況でもモンスターと戦えなきゃ」とサンヤ。


「それはそうだけど…俺はモンスターが怖いし、戦って死ぬのも怖いんだ」とトガ。


「それなら、冒険者を辞めたほうがいいわね」サンヤが高い声で言う。


サンヤはすぐにランタンフライの依頼を手に取り、一人で出て行ってしまった。ゼラティアはトガをじっと見つめる。


「トガ、どうしよう…サンヤお姉さん、一人で行っちゃったよ」とゼラティア。


トガはただその場に立ちすくみ、拳を強く握りしめていた。


(俺が…冒険者を辞めるべきなのか…?) トガは心の中で思う。


トガはギルドを出て行き、ゼラティアを一人置き去りにしてしまった。


「私、どうすればいいの…二人が喧嘩しちゃった。きっとチャンドラとドロティを探さなきゃ」ゼラティアはそう言って、チャンドラとドロティを探しに滝へと向かった。


一方その頃、サンヤはすでに森の中へ入り、ランタンフライの巣穴を探していた。


「もうトガの臆病な態度にはうんざりよ。チャンドラみたいにいつも勇敢じゃないんだから」


「よくもまあ、リスクも取らないで冒険者なんてやってられるわね」


しばらく森を進むと、ついに大きなランタンフライの巣穴を見つけた。彼女は茂みの陰に身を隠す。


「ランタンフライの巣穴がもうこんなに大きくなってる。私がコンステラ級でも、全部を倒すのは無理ね」


「女王だけを殺して、それから巣穴に火を放つしかない」


サンヤはゆっくりと巣穴へ向かって歩き出した。空中で見張っている何匹かをやり過ごしながら。


彼女は巣穴の入り口に到着した。中には無数の穴が開いている。


「どの穴が女王のもとへ続いているの?」


サンヤはゆっくりと中へ入っていく。辺りはますます暗くなり、生臭い匂いが鼻を突く。突然、数匹のランタンフライが一匹の小さなモンスターを運びながら飛んできた。


(あれは…女王への餌だ…) サンヤはすぐに地面に伏せ、身を隠した。


ランタンフライたちは一番下の穴の中へ入っていく。


(私の魔力と気配を消さなきゃ…)


魔法がサンヤの体を包み込み、彼女の姿は少し透き通り始めた。そして、彼女はそのランタンフライたちを尾行した。


しばらく歩くと、彼女は女王を見つけた。女王ははるかに大きく、魔力の石の上には光る卵が無数にあった。


ランタンフライたちはモンスターを女王の前に投げ出すと、女王はそれを骨だけになるまで吸い尽くした。


サンヤはゆっくりと、餌を吸っている女王に近づいた。


(女王の頭の下にある、あの光る弱点を狙わなきゃ…)


サンヤは岩の陰に隠れながら、ゴールデンアワー王国の魔法の剣を抜いた。


彼女は一気に駆け出し、女王の頭の下へ向かう。そして、その光る弱点目がけて跳び上がり、剣を突き刺した。


剣が魔法を爆発させる。女王は断末魔の大きな叫び声をあげて絶命した。


サンヤはすぐに卵の陰に隠れた。巣穴全体が激しく揺れ始め、何百ものランタンフライが女王の元へ殺到してきた。


(さて…どうやって外に出よう? 一匹ずつ倒すしかないのか? そうだ…こいつらの部位はすごく高く売れるんだった…)


サンヤの手にした魔法の剣は、濃密な魔力に包まれていた。彼女の顔に笑みが浮かぶ。


(これよ…私が一番好きな瞬間。全部まとめて片付けてやる…)


サンヤはたった一人で、何百ものランタンフライに立ち向かった。


――その数時間前。


トガは冒険者ギルドを出た。足取りは重く、心はとても苦しかった。


――「それなら、冒険者を辞めたほうがいいわね」


サンヤの言葉が頭の中で何度も繰り返される。


トガはリーフィアットの噴水広場へ向かい、上下に揺れる水をただ見つめていた。


(なんで…俺は冒険者になんかなろうとしたんだ?)


(モンスターに出会うたびに怖くて、体が動かなくなるのに…)


(もう…冒険者を辞めよう。チャンドラにも謝らないと…)


トガは首からヴェイルにもらったネックレスを外した。


「ヴェイル…俺はどうすればいいんだ?」


「サンヤが危険な依頼を一人で受けちゃった…」


突然、噴水が止まった。周りの全てが止まったかのようだった。水が濁り、トガの背後に回り込む。そして、ヴェイルが現れた。


「時間を無駄にしてはいけない。全てが手遅れになる前に、行きなさい」とヴェイルが小声で言う。


トガが振り返ると、全てが元に戻っていた。噴水も再び動き始めている。


「そうだ…彼女の言う通りだ。俺は急いで行かなきゃ」


トガは全力で走り出した。木の根が地面から飛び出し、何度も彼を転ばせそうになる。


「くそっ…」


彼は走り続ける。息は切れているが、足は止められない。


小さな小枝が頬や腕をかすめ、赤い傷跡を残していく。それでも彼は構わなかった。


(早く…早く行かなきゃ。サンヤを助けないと…)


突然、遠くから轟音が聞こえた。地面が少し震える。


(あの巣穴からだ…)


トガは唇を噛みしめた。あそこがサンヤが一人で戦っている場所だとわかった。


迷わず、彼は巣穴へ向かってさらに足を速めた。


ーー


その頃、サンヤはすでに倒したランタンフライの死体の山の真ん中に立っていた。服はあちこち破れ、左腕からは血が流れている。


しかし…彼女の体はふらつき始めていた。


「まだ…私はまだやれる…」


彼女は再び魔法の剣を掲げる。しかし手が震えている。剣を包む魔力は弱くなり始めていた。


あらゆる方向から、何十ものランタンフライが近づいてくる。彼らの瞳は暗闇の中で赤く輝いている。


「こんなに倒したのに…」


サンヤはかすかに笑った――苦い笑顔だった。


「せめて…女王は倒せたから…」


突然、ある穴の中から、大きな足音が聞こえてきた。モンスターの足音ではない。


人間の足音だ。


「おい、サンヤ!」


その声は…


サンヤは顔を上げ、目を見開く。そこに立っていたのは、トガだった。


「なんであんたが来たのよ、臆病者!」サンヤが叫ぶ。


「俺は心配だったんだ」トガが答える。


「いいからあんたは帰りなさい!私は臆病者なんか必要ない!」サンヤが叫ぶ。


数十匹のランタンフライがサンヤを取り囲む。もう剣を振るう力も残っていない。魔力もほとんど尽きかけていた。


ランタンフライの頭から強力な光が放たれ、サンヤに向けて撃ち放たれた。


「お父さん…お母さん…ここで終わりみたいです…」


サンヤは静かに目を閉じた。


無数の魔法弾が彼女に向かって放たれる。しかし…


彼女が目を開けると、そこにはトガが自分を抱きかかえていた。


「トガ…あんたはあんなに速く動けなかったはずでしょ…」サンヤが言う。


「わからない…奴らが撃とうとした瞬間、まるで時間が止まったみたいだった。俺はすぐに走って君のところに行けたんだ」トガが答える。


二人は見つめ合う。


サンヤはトガの顔を押しのけた。


「そんな風に見つめないでよ」サンヤが言う。


「悪かった」トガが言う。


トガは顔を赤らめながらサンヤを下ろし、一瓶の回復薬を差し出す。


「サンヤ、これを飲め。傷が治るから」とトガ。


「ありがとう…トガ」サンヤが小さく言う。


サンヤは回復薬を飲み干す。傷はみるみる塞がっていく。そして、彼女は魔法の剣を差し出した。


「仲間と一緒に戦うか、それとも冒険者を辞めるか。選びなさい」とサンヤ。


トガはその剣をじっと見つめ、毎日を共に過ごしてきたパーティの仲間たちの顔を思い浮かべた。


「わかった。俺は戦う」とトガ。


トガは魔法の剣を受け取り、ものすごい速さでランタンフライに向かって走り出した。一瞬のうちに、数十匹のランタンフライが真っ二つになった。


トガはランタンフライの死体の山の上に立ち、息は乱れていた。そして彼は地面に寝転がった。何かが奪われたような感覚だった。


「すごく…疲れた…」とトガ。


サンヤがトガの上から顔を覗き込む。


「それは、魔力を使いすぎたってことよ」とサンヤ。


サンヤはトガの隣に座った。


「ねえ…トガ。助けてくれて、ありがとう」とサンヤ。


「いいや…俺の方こそ謝らないと。君に一緒に来なかったことを」トガが答える。


二人は、何百ものランタンフライの死体が転がる中、話し続けるのだった。

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