第58話 ミクスチャーの誘導の件
とりあえずヘリから降りたらヘリの操縦士の言うようにローターの範囲外まで駆け抜けた。
多分操縦士の言う『ローター』って上で回ってるプロペラの事なんだろう。
────俺はそう思っているのだが、違ったらどうしよう。
────恐る恐る振り返ってみた。
操縦士は口元しか見えなかったが、ジョッキをあおる様なゼスチャーの後で白い歯を見せてニヤリと笑った後で敬礼すると離陸していった。
────なんだよ、すげぇカッコいいじゃねーか。
車の後はヘリの免許もほしくなったじゃねーかよ。
───え?車とヘリの免許を同列に考えるなって?
まぁ、そうだなぁ、専門用語とか面倒臭そうだなぁ。
専門用語といえば、ローターがプロペラの事かどうかもまだ確証ないしなぁ……。
────まぁ、俺には無理だな。
この話は無かったと言うことで。
ヘリを降りると俺は警察官に付き添われて建物の中へ。
「───地元の公民館を臨時の災害対策本部として使用しております」
両脇を長身でガタイの良い警察官に堅められての建物内の移動。
────超VIPっぽい!
いやいや、VIPっぽいからっておっさん達みたいににょきにょきとピノキオの鼻を伸ばさないようにしないとな。
自慢出来ることはまだ何もやってないんだからな。
でも警察官とこんな感じで話をする立場になるなんて思ってもみなかったよ。
自転車乗ってて職質されるだけが今までの俺と警察官の関係だったからな。
「────今は国道を避けて海岸に誘導するべく警察と自衛隊で協力しております」
案内された会議室でホワイトボードに色々書きながら説明してくれた。
────だけどさ、土地勘ないから全く入ってこない!!
俺がどうしたらいいか全然わからーん!
「───おい、あの男なんなんだ?頼り無さそうだが大丈夫なのか?」
「────突然上から連絡きたんだが、俺も詳しい話は聞いてない」
離れたところでなんか俺の事を話してる奴がいる。
────頼り無さそう?そりゃそうだ、特別な訓練もしてない一般人ですよ。
───でも、なんかナメられるのはやだなぁ。
───あ、こんな時には俺には心強い電脳コンビがいたんだった。
「アイちゃん、ゴンちゃん聞こえる?聞こえたら返事して!」
『───聞こえるよー』
『───我輩も聞こえるぞ』
───突然部屋のスピーカーから電脳コンビの声が聞こえた。
突然スピーカーから聞こえたその声に、部屋の中にいた大勢の警察関係者が面白いように挙動不審な動きをする。
何も映していなかったモニターに勝手に現場の航空写真が表示された。
フフフ、我々のテクノロジーをフルに活用したちょっとしたイタズラをプレゼントだ。
君たちが思ってる以上にうちの組織は出来る子がいっぱいいるのだよ。
───だからと言って俺は何にも偉くはないがな。
「────これは暗いけどリアルタイム映像?」
『これはドローンで撮影した五分前の映像だよ~。ちなみに、ドローンはさっき墜落したよ~』
「─────墜落?敵の攻撃!?」
敵の攻撃だったらヤバイね。
猿と犬のミクスチャーがどうやって飛んでるドローン落としたんだろう?
────犬と猿だけじゃなくてキジまで合成してるんじゃないだろうな!?
『───突然報道局のヘリが高度下げてきて干渉~』
───桃太郎を意識した合成じゃなかったわけね。
「────報道のヘリをどこかへ退避させることは出来ないんですか?」
その場にいた偉そうな人に聞いてみた。
警察とか自衛隊の権限でどうにかできないのかな?
少なくとも俺の変身シーンは撮ってほしくない。
音声までは拾えないとは思うけどさ、万が一俺の名乗りが全国放送で流れたとしたら、もう俺はお嫁に行けない─────元々不可能だけどな。
「────いや、私はここの管理を任されてるシルバー人材の者なので……」
─────あ、またやっちゃった。
──────は、恥ずかしい…………。
あ、シルバー人材のおじさんも申し訳なさそうに恥ずかしがっている。
───おあいこだな。
走馬灯には採用されなかったぜ。
『ヘリはゴンちゃんのコントロールで、強制的にお帰り願ったよ~』
『ついでに撮影されていた映像も消去完了。ブルーは何も心配せず暴れてもらって大丈夫。────証拠隠滅は我輩の得意分野』
『───でも思ったように海の方にミクスチャーを誘導できてな~い』
「─────それは申し訳ないです。車両でのバリケードを易々飛び越える能力を持っているようでして………」
『ブルーの能力をフルに発揮するのに海岸に誘導しようとしてるんだけど~なかなか誘導できないの~』
『完全にコントロールを失って理性じゃなくて野生の本能で動き回ってる感じ~』
「───本能で動いてんなら簡単じゃん。海岸で肉焼いたり、大量の熟した果物を置いたりして匂いで誘き寄せたらいいじゃん」
みんな、ミクスチャー相手でそう言う発想無くなってるかもだけど、普通野生動物を罠にかけるにはエサで誘き寄せるって相場が決まっている。
『ブルー、冴えてる~!』
『我輩、勉強になった』
──ふふふ、もっと誉めてくれ!
そもそも普段誉められることがないので、俺が誉められて伸びる子なのか、調子にのって怠ける子なのか全くわからないがな。
「────只今準備します!」
回りの人が慌ただしく動き始めた。
遅くまでやってるスーパーで誰かが買い出しすんのかな。
────はい、何もいわなくても言いたいことはわかっております。
また変身しませんでした。
もう、ここまでくると狼少年ですね。
───────わん。
────────犬じゃん。




