↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
16/16

第16話

 4話修正


 司祭を修道院長(マザー)に変更



 魔王軍で不穏な空気が流れる中、アルディア聖王国でも一波乱起きていた。


「インチキ教会が!」「金を返せ!」


 民衆や例の王国襲撃事件の被害者たちが、正教会を取り囲み、抗議の声を上げていた。

 この国の民たちは教会の守護保険というものに強制参加の義務がある。

 魔族から守るための備え、そして、魔族の襲撃で命を落とした場合に支払われる保険だ。が、ここ数十年は魔族が王国領に攻め入ってくるということがなかったので、殆ど、教会への施しと化していた。


 しかし、この間のレインによる襲撃で、騎士団や冒険者を中心に多くの死者が出た。それらの遺族が保険金を求めたところ、教会は払えなかった。

 こんな事態を想定しておらず教会の催しや建築に使ってしまっていたからだ。


 教会の信用は堕落し、まんまと出し抜かれた騎士団にも非難の声は及んだ。

 頼みの綱の勇者も現れない。


 この事態を受け、正教会にて教会と騎士団による緊急の会議が行われた。


「王都の防衛は騎士団の仕事です! 責任はそちらにあるのでは!」

「教会の負傷者の支援が遅れたからだ!」


 話し合いと言っても、責任の押し付け合いだった。

 聖女候補として、そして、事件の目撃者としてセレナも身を縮こまらせながらそこに居た。


「くっ。エリシア様が亡くられて、勇者不在のままとは……」

「そもそも、正教会は彼女を勇者と認定したそうだが、本当にあっていたのか? 正直、彼女から勇者らしい器を感じなかった」

「口を慎みなさい!」


 話が脱線し、勇者の話に話になった頃、騎士の誰かが思い出したように言った。


「シスター・セレナ、あなたは逆賊レインと対峙したうちの唯一の生き残りで、奴と言葉を交わした。彼は自分こそが勇者だと言い、勇者の剣をかざした。そうですな?」

「あ、いや、それは……」


 それを聞かれた時、教会のトップである司祭と、自分の上司であるマザーがじっとこちらを見る。

 先程の話だ。勇者の認定を下すのは正教会。もし間違いがあったとすれば、教会の責任となる。


『実はレインさんが勇者でした。薄々と気づいていましたが、放っていたら大変なことになりました。皆でレインさんにあやまりましょう』

 言えるわけがない。いや、もう何もかも遅い。


「そう言っていましたが、あれは狂人の戯言です。今思えば、勇者の剣もレプリカでしょう」

「まぁ、でしょうな」

「実際、剣は遺跡の台座にあった。奴は嘘つきだ」


 いいや、本当は遺跡のものがレプリカだ。教会が慌てて用意した。


「早急に新しい勇者を探し出せねばなりません」

「それに関しては、騎士団としても賛成だ」

「その使者をシスター・セレナ。君に頼みたい」

「私が?」

「何を言っている。君はあの悪魔の様な男と対峙して、生き延びた英雄ではないか。まさしく聖女。頼んだぞ」


 大人たちの勝手な取り決めに、セレナは絶望的な気持ちになった。

 一方で、それに反旗を翻す者が居た。


「遅い! 現れるかどうかわからない勇者を待っていられるか!」


 声を張り上げたのは騎士団第2大隊団長、アルフ・ロドマンだった。


「勇者頼りで市民を救えるか? レインという男がのうのうと生きていて、国民が安心して眠れるか!? 否! 我が団は早急に魔王軍とそして逆賊レインに対して報復を行う!」


 彼は一方的にそう告げると、団員たちをつれて会談の場を後にした。


(一体、どうなってしまうのでしょう……)


 セレナは溜息をつくほかなかった。


 ◇


 人間が内ゲバを起こしている間、魔王軍側もレインとキリシアンの悶着で内ゲバを起こしていた。

 が、参謀リゼの仲介で、2人は引きはがされ、表面上は何も起きないまま、2週間が経った。


 リゼからの呼び出しはなくなり、レインは自らの屋敷でだらだら過ごしていた。

 しかし、一方的に幽閉されていたわけでは無かった。


「レイン様、ご報告したいことが」

「うん」


 クルリだ。

 彼女は恭しくお辞儀すると、レインの前にいくつもの書類を並べた。


「最近のリゼ様に関する動向です」


 クルリは秘密のネットワークを持っていた。

 今まで荒れ放題だった魔王軍領地は、リゼの手腕もあり、回復傾向にある。

 彼女がそれまでの堕落した幹部が無謀な戦いや無意味な労働に割り当てていた下級魔族たちを、効率的に配置換えしたからだ。


 それは今まで不遇な思いをさせていたクルリへの謝罪の意味もあった。そして、クルリは下級魔族の道を切り開いた『お姉様』として、彼らの星となった。

 魔王軍の拠点にて、清掃や炊事、雑用に割り当てられている下級魔族が見聞きしたことは全てクルリに伝わっている。

 そして、そのまま、レインへと伝わる。


「へぇ。あのキリシアン様とお熱いみたいだ。何度も執務室で二人きりで話していると」

「裏切りでしょうか?」


 クルリの瞳に怒りが迸る。


「いや、まだ分からない。恋かもしれないし、友達かもしれない。これじゃあ、判断できないな」

「ですが、そんな悠長にしていては、レイン様の魔王の座が」

「ああ、もちろん、それは困る。だからさ、クルリ。《《おめかし》》しろよ」

「えっ?」


 怒りや動揺に浸っていた彼女は大きな目を丸めて驚く。


「あいつが魔族の友達に会うって言うなら、俺達も会うのさ。人間の友達にさ」



 ◇


 アルディア聖王国、王都郊外の寒い町にて。


「うう……寒い」


 セレナは1人で彷徨っていた。

 正教会は彼女に新たな勇者探しを命じた。

 が、その実態はあての無い放浪の旅。

 聖女と囃し立てられたとは思えない、酷い扱いだ。

 事件直後、レインが勇者かもしれない、そんなことを報告したセレナは教会から疎まれるようになっていた。


「今日はもう宿で休みましょう」


 彼女は小さな町の小さな宿に入った。

 レストランも兼ねているようで、少々の地元民が入っていた。


「あの、正教会の者です。一晩泊めて頂きたいのですが……」

「はい。聞いてますよ」


 彼女は首を傾げた。何の話か見当もつかない。教会が先に手配してくれたのだろうか?


「ああ。お客様、待ち人が来られましたよ」


 受付が自分の後ろの誰かに声を掛け、セレナは振り返った。

 血の気が引いた。


「よぉ。待ってたよ。セレナ」

「レ……レイン、さん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。