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世界最高の狙撃手、異世界辺境伯に転生して【必中魔法】で国を揺るがす暗殺者になる  作者: 翡翠


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第1話:ハズレスキルと、現代科学の魔弾

「おい見ろよ、ヴァルハイト家の出来損ないだぜ」


「せっかくの辺境伯家の長男なのに、授かったのは【必中魔法】っていう攻撃力ゼロのハズレスキルらしい」


ヴァルハイト領の訓練場。


十歳になった俺――レオン・フォン・ヴァルハイトの後ろで、家臣の子供たちがヒソヒソと陰口を叩いている。


この世界では、十歳になると本格的な戦闘訓練が始まる。


周囲の期待を裏切った俺への風当たりは強かったが、俺にとってはそんな外野の雑音などどうでもよかった。


(……よし、誰も見ていないな) 


俺は木製のおもちゃの弓矢を手に、訓練場の隅へと移動する。


この世界の連中は、【必中魔法】を「放った魔法を必ず命中させる補助スキル」としか思っていない。 


だから、威力のないハズレスキルだと嘲笑う。


だが、前世で世界最高の狙撃手だった俺の結論は違う。 


(この魔法の本質は、魔力を付与した『物質』の軌道を、標的に向かって強制誘導することだ) 


つまり、矢でも、石ころでも、俺が放ったものなら「絶対に外れない弾丸」になる。


問題は、威力が足りないことだ。  


弓矢や石を投げた程度では、人間の肉体すら貫けない。 


なら、どうするか?答えは簡単だ。 


足りない威力は、現代科学の知識で補えばいい。 


俺は誰もいない物置の裏で、あらかじめ用意していた『特製の筒』を取り出した。 


ただの頑丈な鉄の筒だ。だが、中には領内の鉱山から極秘裏に集めた硫黄と炭、そして硝石を絶妙な比率で調合した粉末――【黒色火薬】が詰まっている。  


そう、銃だ。 


魔法という超常現象があるこの世界には、火薬を使った兵器の概念がまだ存在しない。 


「……ターゲットは、あの山肌の岩。距離は、およそ一・五キロ」 


俺は常人には点にしか見えない遥か彼方の巨岩に、生まれ変わって手に入れた『神域の視力』のピントを合わせる。 



常識で考えれば、火薬の質も悪く、ライフリング(銃身の溝)もないただの鉄パイプで、一・五キロ先の標的に弾を当てるなど100%不可能だ。


風に流され、弾道はバラバラに散る。だが、俺にはそれらをすべて無視できるチートがある。 


「【必中魔法】、起動」鉄筒に装填した鉄球(弾丸)に、俺の魔力を染み込ませる。


筒の底にある火薬に、火属性の初級魔法で小さな火花を飛ばした。


――轟音。


鼓膜を震わせる爆発音とともに、鉄の筒が激しく跳ね上がる。


凄まじい推進力を得て放たれた鉄球は、激しい風に煽られ、本来なら大きく軌道を外れるはずだった。


しかし、俺の【必中魔法】が強制的に弾道を補正する。 


目に見えない見えない魔力の誘導線が、大気を切り裂き、鉄球を一・五キロ先の巨岩へと一直線に導いていく。


ドォン!!!遠くの山肌で、激しい破砕音が響いた。直撃だ。


前世のライフルを遥かに凌駕する速度と威力で放たれた鉄球は、硬い巨岩を文字通り「粉砕」していた。   


「……ふぅ。火薬の反動がガキの肉体にはきついが、威力は十分だな」 


俺は煙を吹く鉄筒を服の袖で隠しながら、ふっと唇を吊り上げた。


射程距離、一・五キロ以上。


障害物を完全に無視し、風の計算も不要。


視界に捉えさえすれば、どんな相手の脳天でも確実にブチ抜くことができる。


攻撃力ゼロのハズレスキル?馬鹿め。


世界最高の狙撃技術と、現代科学の火薬が合わされば、これは神をも殺せる『一撃必殺の魔弾』だ。


「レオン様! 今の凄まじい音は何ですか!?」 


慌てて駆けつけてきた護衛の騎士たちの足音が聞こえる。


俺は一瞬で「スキルのせいで落ち込んでいる無力な子供」の表情を作り、振り返った。


「ううん、何でもないよ。魔法の練習をしてたら、ちょっと失敗しちゃって……」 


国を揺るがす最強の暗殺者は、こうして静かに、その牙を研ぎ澄ませていく。

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