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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.30 知恵

「それじゃあ行くよ!チンタラやってたらレヴナにケツを食われる前に、ワタシがぶん殴るからね」

「お・・・、おー!」

シャンネラの掛け声で士気を高められ、それぞれが動き出す。

シャンネラの部下たちはレヴナの方へ、ヌシ狩りの民の一人は皆に背を向けランブーの元へ、もう一人は先導のために少し距離を取って離れていく。


そんな中、ふいにシャンネラがユマを呼び止めた。

「ちょっと待ちなユマ」

「ほへ?なにシャンネラさん」

ユマは今にも飛び出そうとしていたスライドボードのハンドルを緩める。


「いいかい、絶対に無理はするんじゃないよ」

「うん?」

ユマは突然なんだろうと、不思議そうな顔で返事をする。


「ゼッタイに勘違いしちゃいけない、何があっても第一優先は自分の身の安全だ。ワタシの部下にはいつも言い聞かせているから心配してないけど、シュカヌっていう大きなお守りが付いてるアンタが逆に心配だよ」

「うん、わかった!」

そう答えながらユマは、さっき皆と合流する前の出来事を思い出していた。

確かにどこか浮かれた気持ちがあったのかもしれない、事故というのは大抵こういう時に起こるものだ。今から自分たちが立ち向かおうとしているのは、何人ものヒトが犠牲になっている危険な生物だということをふと我に返って思いだした。


さすが人の事をよく見ている、やはり見かけによらず繊細でスルドイ人だなと思いながらユマは礼を言う。

「ありがとう、シャンネラさん」

「ああ、気をつけるんだよ」

「うん!」

そう言うとユマはスライドボードを操り、なだらかな斜面を勢いよく下り始めた・・・。





「で、でかい・・・」

シャンネラの部下たちはレヴナに近づくにつれ、改めてその巨大さに気付きゴクリと息をのむ。

遠目に見ていた時には、ただ大きいとしか思わなかったのだが、そのリアルな巨大さにレヴナのまとう殺気めいたオーラが相まって、腹の底から込み上げてくるような恐怖心が襲ってくる。

気を引き締めていかないと命を落としてしまうという気分に、否応なく引きずられていってしまう。


ターン・・・


その時、どこかから一発の銃声が響く。

シャンネラと交わしていた作戦開始の合図だった。

レヴナはその銃声にも驚くことなく、悠々と頭を上げて接近者の存在に気付いた。



だが・・・、動かない。

接近者たちの存在を無視するかのように草を食んでいる。


ブーン・・・、ブーン・・・


目の目で起こっていることを否定するかのように、スライドボードから響く小さな音と、流れる風の音だけが静かに聞こえている。

「なんだ、ナメてるのか?」

シャンネラの部下の男が、額に汗をにじませ小さくつぶやいた。

心の奥底に芽生える、得体の知れない小さな焦り。

だがこういう時の焦りは、時間が経つにつれ制御できないほどに急成長する。


(どうする、もう少し近づいてみるか・・・)

男はスライドボードのハンドルを握る手元を、確かめるように持ち直す。

しかしレヴナがどれほどの敏捷性と機動力を持ち合わせているのか分からない以上、必要以上の接近は命取りだ。

ジリジリと焼け付くような緊張感が高まっていく。

男は汗ばむ手のひらに力を込めた・・・。





「やだ、すごい緊張感・・・」

「うん」

ユマはレヴナと距離を取りながらスライドボードの上でつぶやく。

しかしこれだけの距離でありながらレヴナから漂ってくる腐敗臭のような強烈な臭さに、ユマはクラクラしながらもハンドルを強く握る。


「ねぇシュカヌ、もう少し近づいてみようか?」

「待ってユマ、もう少しこのまま様子を見よう」

「わかった・・・」

ユマがシュカヌにそう答えかけた時、状況は動いた。


「見てシュカヌ!あの人が行くみたい」

そう言ってユマが指さす方にシュカヌが目を向けると、一台のスライドボードがレヴナに向かって突進する様子が見えた。

「待て、近すぎる・・・!」


シュカヌがそう言い終わりもしないわずかな時間で、レヴナは加速を無視した即トップスピードのような速さでそのスライドボードに迫る。

「危なーい!」


ズザザザ・・・


レヴナが頭でスライドボードを振り払おうと、あとわずかな所まで距離を縮めたところで、巨体に繋がった大きな木の残骸が足かせとなって、わずかなタイミングのズレを生じさせる。

スライドボードはその隙にスルリと、レヴナの目の前をすり抜けていった。


ユマとシュカヌはその光景を間近で眺めていた。

「あ、危なかった・・・。心臓が止まるかと思ったよ」

「うん、でも・・・」

「うん?」

「・・・レヴナのスイッチが入った」

シュカヌの言葉通りレヴナの様子がこれまでとは明らかに違うのはユマにもわかった。

殺気だった目であたりを警戒している。


「ユマ気を付けて、今までとは様子が違う」

「うん、わかってる」

シュカヌが気持ちを引き締めるようにユマと言葉を交わす。

そしてシャンネラたちも同じように、その変化を感じ取っていた。

(・・・来る)

シャンネラが心の中でそう思った瞬間、レヴナが再び動く。


シャンネラのスライドボードが牽引する風船に反応したレヴナは、その大きな角で風船を突き刺そうと目にもとまらぬ速さで体当たりをしてくる。

「くそっ、速い!」

悪態をつきながらシャンネラがスライドボードを操りレヴナの攻撃をかわそうとするが、風船がレヴナの角にわずかに接触してシャンネラを乗せたスライドボードがバランスを崩す。

「危ない、シャンネラさん!」

ユマの叫び声が辺りに響くが、シャンネラは器用に体勢を立て直した。


ドクンドクンと腹にまで伝わってくる早い鼓動を抑えつけながら、シャンネラは背後の気配を探る。

大丈夫だ、レヴナが追いかけてきてはいない。

「囮の風船を全員外しな!」

慌ててレヴナと距離を取りながらシャンネラが叫ぶ。

「こんな囮を付けてたら、こっちが危険だ!」

「で、でも・・・」

ユマがシャンネラに近づき並走しながら困惑した表情を見せる。

「心配しなくてもヤツは、こんなモンがなくたってワタシらを狙って追いかけてくるよ!」

シャンネラに見てみなと促されて、ユマがレヴナをうかがうと、その眼は確かにスライドボードに乗る者たちを追いかけていた。


「さっきの攻撃は囮に向かっていったんじゃない。あいつはワタシを襲うのにスライドボードを狙うんじゃなくて、囮の風船を狙った方が捕まえやすいとわかって攻撃してきたんだ」

「えっ!?」

「厄介だね・・・。コイツ、思ってた以上に知恵がありやがる」

シャンネラは忌々しそうにつぶやいた・・・。




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