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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.29 自虐

「船、船、シャンネラさんの船っと・・・」

「ちょ、ちょっとユマ!前をよく見ててよ!?」

上空に意識を取られながらスライドボードを運転するユマに、シュカヌが焦った様子で語りかける。


「大丈夫、だいじょーぶ・・・。ん?きゃあー」

そう言って答えたユマだったが、突然目の前に現れた小さな岩に驚いて悲鳴を上げる。

だが岩の大きさはさほどでもなく、あえて言うならスピードが問題だった。

普通に考えれば単に迂回すればいいだけの話なのだが、微妙な位置に木が立ちはだかり邪魔をしていて進路を変えることができない。

「やばいやばい、止まらな~い!」

「えっ!?」


猛スピードで二人に迫る岩。

そしてハンドルをギュッとつよく握りしめるユマ。

「・・・シュカヌ覚悟はいい?」

ユマが虚ろな瞳でシュカヌに問いかける。

「なにっ!?」

心の準備という言葉があるが、大事な時ほどそんな余裕はないものなのである。

シュカヌは瞬時に身の危険を感じたが、彼になす術はない・・・。


シュカヌにしっかり掴まっていてと伝えて、ユマは覚悟を決めた。

「ユマ・・ちゃん・・・、みらくる・・・ジャーンプ!」

「なんだなんだ!?」


「とぉーっ!」

「うぉーっ!?」


ボヨン・・・


ユマとシュカヌを乗せたスライドボードは宙を舞い、そのままの勢いで一回転の後方宙返りを決めると牽引していた赤い風船のうえで一度バウンドして、ゆっくり減速しながら止まる。

「し、死ぬかと思うた・・・」

「だから言わんこっちゃない・・・」

「そ、そうね・・・。これからは気を付けます」

難は逃れたが、全身に冷や汗をかきながらユマが謝る。


「でも」

「うん?」

「不幸中の幸いというか、宙を舞っているときに船が見えた」

「えっ、どこ?」

そう言ってユマがシュカヌの指さす方向に目を向けると、たしかにシャンネラの船が見える。

そしてその下あたりの丘陵をなめるように視線をスライドさせると、巨大なレヴナが悠々と歩いている姿が確認できた。


「レヴナいた!」

「うん」

その時ザザザという雑音と共に、再びシャンネラの声が届く。


「・・・マ、ユマ。今・・どこだい?」

「あっ、シャンネラさん。今、あたしたちも船の見える所についたよ!」

「そこ・・ら・レヴナ・、見える・・かい?」

「うん」

次第にレシーバーから聞こえてくる音が、音声多重のように響いて聞こえるようになってくる。


「あ、あれ?なんだか耳がおかしいな・・・」

「心配ない、僕もだよ」

「だよね?」


「いたいた!ここだったのかい」

「あ、シャンネラさん」

声のした方向にユマとシュカヌが振り返ると、スライドボードに乗ったシャンネラと数人の部下たち、そして狼犬に乗ったヌシ狩りの民二人が揃ってそこに立っていた。

「これで誘導組が全員そろったね」

シャンネラは全員の顔を見渡して確認するように言うと、全員が無言でうなずく。


「じゃあ全員揃ったところで、ワタシらの作戦を伝えるよ。ワタシや部下とユマ、シュカヌのシャンネラ組が、散開しながらレヴナを挑発して誘導する。そしてレヴナがこの中の誰かにターゲットを決めて追走を始めたら、残りの者はそのターゲットを全力でサポートするんだ」

「ふむふむ・・・」

「そしてヌシ狩りの民の二人のうち一人には、ターゲットされた者の前方を走って安全な進路を先導してほしい。アンタらの方がまだこの地に詳しいだろうからね。で、残ったもう一人がランブーの元に戻って、作戦開始を伝えるって事でいいね?」

「了解!」


「しかし、それではあなた方への負担の方が大きすぎるのでは・・・」

黙ってシャンネラの作戦を聞いていたヌシ狩りの民が口をはさむ。


「バカ言ってんじゃないよ、ここはワタシらが請け負った仕事だ!シャンネラは自分の仕事はキッチリとやる。その代わりアンタらにも、アンタらのやるべきことをキッチリやってもらうよ」

「・・・わかった」

複雑な表情で答えるヌシ狩りの民に、ニッっと笑顔を向けるとシャンネラは号令をかけた。

「それじゃあ行くよ!チンタラやってたらレヴナにケツを食われる前に、ワタシがぶん殴るからね」

「お・・・、おー!」

誰もがシャンネラに殴られる自分の姿を想像しながら、掛け声を上げるのであった・・・。





「ランブー、シャンネラたちがレヴナを発見したようだ」

「そうか」

モールの報告にランブーが答える。


「順調に進めば、こちらに到着するのも間もなくだろう」

「そうだな、こっちも準備は整っている」

モールが返ってきた言葉に、無言でうなずく。


「どうかな、彼らはウマくやるかな?」

「大丈夫だろう。というより大丈夫でなくては、こっちが困る」

「まあ、そうだが」

モールはそう言いながら自分たちの長である少年の顔を見つめる。

この二年間でヌシ狩りの民は大きく変わった。ヌシ狩りの民の中心人物だった者たちが追放されたなかで、この幼い長への負担は計り知れないものがあったであろう・・・。しかし彼はよくやってきた、そして今もよくやっている。


幼いながらも能力や手腕を認められて長になったとはいえ、民が離散してヌシ狩りの民という集団組織が消滅しかけたにもかかわらず、よくここまで持ちこたえさせたものだと思う。

そして同時に子供に負担を背負わせて生きながらえている、自分を含めた大人たちのふがいなさに腹立たしさを感じずにはいられない・・・。

偉そうに理屈をこねるくせに、自分のプライドを守るために周りを巻き込んで自滅する。


まったく救いようがないなとつぶやき、モールは自虐的な笑みを浮かべた。


「・・・ル、モールどうしたんだ?」

「ああ、いや何でもない」

「こっちもシャンネラたちが到着するまで、最終確認をしておこう」

「そうだな」

二人はその場を後にして歩き始めた。




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