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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.28 手負いの亡霊

ズ・・・、ズズ・・・


草木がまばらに茂る丘陵に、ボロボロに朽ちた大木を引きずるレヴナの姿があった。

巨体に突き刺さった槍にも似た数本の棒、そのうちの一本から出ているテグスによって朽ちた大木と繋がれたその光景は、まるでソリでも引いているようにも見えなくもない。

そしてその槍の刺さった傷口が化膿しているのだろうか、レブナが歩くごとに何ともいえない異臭を周囲に放っていた。


ブフォォ・・・


レブナの呼吸は荒く、肌寒い朝の空気のなかで、蒸気のように白くなった呼気が口元を流れている。

その眼は血走り、全身を静かな怒りのオーラのようなものが包んでいた。

レブナは足元の草を食もうと口を近づけるが、なぜか途中で思いとどまって朝露に濡れた草をすこし舐めて頭を上げる。


周囲に広がるのはいつもと変わらない風景。

だがいつも新鮮な草を横取りしていく、目障りなヒックルの群れが今日は見当たらない。


ブフォォ・・・


レブナは荒い鼻息を大きく一つ吐きだすと、いずこへともなく歩き始めた。






「・・・ちぇっ。僕も下でユマたちと一緒に、レブナの捜索が良かったな」

上空に浮かぶシャンネラの船、その操舵室でふてくされたようにニトがつぶやく。


「まぁまぁ、そんなにイジけないで下さいよ坊ちゃん」

「そうですよ、愛しのユマちゃんならシュカヌくんと一緒だから大丈夫ですよ」

操舵室の乗組員たちが、なかば冷やかすようにニトの独り言に答える。


「なななっ・・・、ボ、僕はそんな事を言ってるんじゃ」

「(・・・噛み噛みじゃないですか)」

分かりやすいと誰もが思ったが、純情な少年の気持ちをおもんぱかって誰もあえて口にはしなかった。


「まあザパンのレヴナって言ったら、厄介なヌシってことで有名ですし、坊ちゃんに何かあったら親分も気が気じゃないでしょうからね」

ニトはまたそれかと思いつつも、話題が変わったことに便乗して話を続ける。


「レヴナか・・・、百年も生きているってホントなのかな?」

「さあ?実際百年も生きているヒトなんかいないんだから、その噂もマユツバもんでしょうけど」

乗組員たちもヒマなのだろう、自分たちの仕事をこなしながらニトとの会話を楽しんでいるように見える。


「でもレヴナって名前の語源は、レヴナントからきてるんでしょ?」

「まぁ、そう言う噂ですね」

「ってことは、死んで生き返ったってこと?」

「それもどうなんですかねぇ・・・」


「ひゃっ、もうやめてよー。アタシはそういうオカルトチックなハナシは苦手なのに」

「オレじゃないよ、坊ちゃんが」

女性の乗組員たちからの非難を受けて、舵を握る男があわてて言い訳をする。


「・・・でもさぁ、ヌシって一体何なんだろう?」

「そりゃあ、その土地土地で一番強い生物じゃないですかね?」

「いやそういうことを言ってるんじゃなくて・・・」

そう言いかけてニトが黙りこくる。


「ん、どうしました坊ちゃん?」

「いや・・・」


その時だった、船内のスピーカーから怒声が響く。

「・・・ゴルァー、お前たち!」

「ヒッ!?」

「黙って聞いてりゃ、さっきから無駄話ばかり。上空からのレヴナの捜索はどうなってるんだい!?」

声の主は誰が聞いても間違えようのない、シャンネラの声だった。


「あわわわわ、やってます!やってますよ、そりゃあもうヤリまくりです」

「何を言ってんだい!」

船内のノンビリとした空気は一瞬で消え、わけもなく皆が慌ただしく動き出す。


「こっちは今ザパン周辺をあらかた見て回ったけど、この辺にはいないようだね。そっちはどの辺をあたってるんだい?」

「こちらはザパンを出て、南西の方角に進路を取って捜索しているんですが」

「なにか収穫は?」

「いえ、今のところ・・・。イヤちょっと待ってください!観察員がなにか見つけたようです」

「早くしな!」

しばしの沈黙。


「いました!巨大な黒い物体。レヴナです、レヴナに間違いありません!」

「でかした!場所は?」

「ザパンから向かって、ちょうど南西に2300ヤールの位置です」

「よしお前たちは、そのままヤツを見張って上空で待機してな」

「了解!」


「ニト、ニトはそこにいるかい?」

「いるよ」

シャンネラの問いかけに、ニトがふてくされた口調で答える。


「いいかい?今回はそこでじっとしてるんだよ」

「ハイハイ」

「間違ってもこっちに来ようなんて思うんじゃないよ!」

「ハイハイ」

「・・・降りてきたら、鎖をつけてハタムに拘束するからね」

「わかったよ!」

隙を見てスカイモービルで下に降りようと考えていたのを見透かされて、ニトは苛立ちを隠そうともしないで答えた。


「まったく、クソオババ・・・」

「聞こえてるよ」

通信が切れたと思っていたら返ってきたシャンネラの言葉。

聞こえていても流せば済むだけの話を蒸し返す、こういう祖母のねちっこさというか、いやらしさがニトを余計に不快にさせることがよくあった。


「やれやれ・・・」

ニトは椅子から立ち上がり、操作盤のある場所にスタスタ歩いていくと通信スイッチを切る。


「ぽちっとな、っと」

船内にどよめきと歓声が巻き起こり、同時に再び穏やかな空気が船内に戻ったのであった・・・。






その頃まだザパンにほど近い場所で、スライドボードに乗ったユマたちがレヴナの捜索を続けていた。

「・・・マ、・・・ユマ聞こえるかい?」

「あ、シャンネラさん?」

スライドボードに取り付けられた簡易レシーバーから、シャンネラの声がザザザという雑音に混じって届く。


「聞こえるよー」

「部下に、・・・上空からレヴナ、・・・探索させたんだけどね」

「うんうん」

雑音交じりのシャンネラの声は聞き取りづらいが、会話ができないほどではない。


「・・・南西だ、・・・そこから南西の方角に、・・・レヴナ・・るらしい」

「南西だってシュカヌ」

「うん、聞こえた」

ユマは背後のシュカヌに語りかける。


「ちょっと厄介だね」

「え、なにが?」

「ここから南西だと、ランブーたちとの合流地点までの間に、川を挟んでしまうかもしれない」

「そっかぁ、そうすると誘導が難しくなっちゃうかも」

「うん」

二人は少し神妙な顔つきで、考えをめぐらす。


「・・・マ、・・・ユマ?」

「あ、ごめんなさい」

「レヴナ・・上空に、船を待機・・・、それを目印に・・・」

「船を目印にして、南西に向かえばいいのね?」

「・だ。・・・からそっ・・に向かうよ」

「了解、あたしたちも向かうね」

「・・・気を付けて」

「はぁい」

そこでシャンネラからの通信は途切れた。


「あたしたちも行ってみよう、まずはレヴナを見つけなくちゃどうすることもできないし」

「そうだね、対策を考えるのはそれからだ」

ユマは進路を南西に向けてスライドボードを走らせ始めた。



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