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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.20 口論

「そうか脱皮だ!」

シュカヌが何かを閃いたように声を上げ、ニーガ・ルージがコクリと小さくうなずく。


「どういうこと?」

ニトが説明を求め聞いてきた。

「エネルギーを得たことで孵化したエンゾは、今どこかに隠れて成長しているんだと思う。だけどその成長の節目でヤツは脱皮を繰り返すんだ。そしてそれは決まって満月の夜。月光を浴びながら古い殻を脱ぎ捨てて、進化していくんだ・・・」

「月光を浴びながら?」

シュカヌが笑みを浮かべて、首を縦に振る。


「つまりその時は、見つけやすいところに姿を現すってことだよ!」

閉塞感が漂っていたその場の空気が、シュカヌの言葉で急に明るさを取り戻した。

(ふーん、生物の情報を取り込むことで成長してきたからこそ、多くの生命が影響を受ける月齢にも縛られることになっちまったってことかい・・・)

話を中断させないようにシャンネラは発言はせず、心の中で考えをめぐらす。


「通常ならそのタイミングがいつなのか推測は難しいのだけど、孵化したての今ならきっとこのタイミングで脱皮するんじゃないかな」

シュカヌは打開の糸口を見つけたことがよほど嬉しかったらしく、嬉々として皆に説明をしていた。


「・・・浮かれるのもいいが、喜ぶにはまだ早い」

だがシュカヌの浮わついた気持ちに釘を指すように、ニーガ・ルージが口を挟む。

「えっ!?」

「見つけられてどうする気だ?」

「そりゃもちろん、倒すけど?」

「どうやって?」

ニーガ・ルージにそう言われてシュカヌは正気にかえった、エンゾを探しだすことに躍起になっていたが、よく考えてみればその後どうするのかという策までは考えがまるで及んでいなかった。


「だからお前はアフォーなのだ。その場のノリと勢いだけで突っ走る・・・」

「だったら、ニーガならどうするつもりだよ?」

「まずは状況の整理だな・・・」

ニーガ・ルージは琥珀色の瞳を輝かせながら、ポツリと言った・・・。




「まず今みえている好材料はなんだ?」

「好材料?エンゾが15日後に現れるのがわかったってことかな・・・」

ニーガの問いかけに、まどろっこしいという感じで答えるシュカヌ。


「お前はなぜ、それが好材料と思うのだ?イヤ違うな・・・、なぜそれが好材料と思えるほど、今エンゾと戦って勝てる自信があるのだ?」

「そりゃあ、脱皮の直後を狙えれば甲殻が柔らかくなっているから、ダメージを与えやすいからだよ」

ニーガ・ルージは脱皮の事に気付いたのはついさっきなのに、やはり計画的なものもなく思いつきで動いているようだと思いながら話を続ける。


「まあいいだろう・・・、それでどうやってこの世界中からヤツが脱皮する場所を特定するのだ?」

「エンゾが消えたハーデルマーク周辺を重点的に・・・、だけど」

痛いところをつかれたという表情で、シュカヌは言葉に詰まりながら答える。

たしかにシュカヌがエンゾを見失ってからかなりの時間が経過していた。ハーデルマークの街とその周辺を探すだけでもそれなりに時間がかかると思うが、この間にエンゾが遠い別のところへ移動していないという保証は何もなかった。


「甘いな・・・。脱皮の直後を狙うなら、タイムリミットはその前後2、3時間がいいところだろう。当然ヤツも警戒しているはずだ、そんな中で見つけられるのか?」

「う・・・」

的を得たニーガ・ルージの意見に、シュカヌは反論できずに固まってしまう。


「だからお前は甘いのだ」

「そんなに甘い甘いって、言わなくてもいいじゃないか・・・」

「仕方ないだろう。そのせいで我輩は、二百年もお前を待たされる事になったんだぞ!お前が暴走しなければ、もっといい策があったかもしれないのに、ひとりで出ていった結果がこれではないのか?」

「だってあの時は、ああするしか手がなかったんだよ!」

「それは、お前ひとりの答えだったんじゃないのか?お前はひとりで全てを背負い込んで、自分だけが責任を被ればいいと思っているのかも知れないが、それは自分勝手な自己満足だ」

「そんな言い方ないだろ!」

「周りを巻き込んで、勝手にひとりで個人プレーをされて、残された者の気持ちを考えたら当然のことだ。現に今、お前に協力してくれている彼らにもちゃんと説明をしてきたのか!?」

ニーガ・ルージは部屋の隅に立つシャンネラたちに、チラっと視線を投げて問いかける。


「まあまあ、そこまで言わなくても・・・。シュカヌはちゃんと、ワタシたちに説明をしようと努力してくれていたよ」

自分たちの事が話題にあがったのを見計らって、シャンネラがまくし立てるニーガ・ルージとシュカヌの間に割って入った。その背後ではニトが焦ったように、ウンウンと首を縦に振っている。

「まあ、そなた達がそう言われるのなら、これ以上は我輩が口を挟む事ではないが・・・。」

ニーガ・ルージは納得しきれない様子だったが、それ以上シュカヌを責めることはなかった。


「お互い感情的になったんじゃ、建設的な意見交換もできないだろう。それでさっきの話の続きだけど、これからどうすべきかねえ?どうやって、15日後にあのバケモノを見つけるか・・・」

「策がないわけではない・・・」

シャンネラの問いかけにニーガ・ルージが口を開く。


「200年前エンゾは、脱皮の前に必ずと言っていいほど大規模な捕食を行っていた。脱皮のためのエネルギーをため込むように。つまり脱皮がなされるのなら、15日以内にどこかで大量の生物が襲われるはずだ」

「なるほど・・・。その襲撃が起こった場所が、脱皮の場所の目印になるということかい」

ニーガ・ルージがコクリとうなずく。

「だがそれで場所の目星を付けられるとしても、やはり人手不足は否めないか・・・」


「・・・キトトブもあなた方に協力しましょう」

今までのやり取りを黙って聞いていたハザサが静かに語りかけ、隣ではラガンナが深く目を閉じたままそれを聞いていた・・・。




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