ウノシルディス平定19
わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。
そんな作者の願望から始めた物語です。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
短編の外伝を作成しました。
こうれからも不定期で作成してまいります。
『主人公じゃないけど頑張ります』
https://ncode.syosetu.com/n1976mm/
こちらからどうぞ
「シルディ様!!」
ハイデが馬から飛び降りて私の前に膝を付く。
いきなり飛び降りられたハイデの愛馬が、「僕どうしたらいいの」と困った様子で主をトコトコと追いかけて来る。
「ハイデ、良く来てくれた。ありがとう」
私も下馬してハイデの手を取る。
所在無く立っていたハイデの馬が私のホライゾンに睨まれて「ピキーン」と固まるのが可笑しい。
「ご無事で良かったです」
ハイデは泣きながら私の手に頭を付けるので、丁度撫でやすい高さにあったハイデの頭をよしよしと撫でる私。
「貴方の判断が無ければ、危うかった。
良く決断してくれた。
アンゼルムにも言葉を掛けてやるが良い」
同じく下馬したアンゼルムが戦旗を掲げて私の横の立つ。
「あの時、この戦旗が見えなければ、私には決断が出来ませんでした。
よくシルディ様の戦旗を掲げ続けて下さいました」
私の手からさっさと逃げ出しアンゼルムを見つめ、さり気なく惚気るハイデ。
ハイデの頭を撫ぜていた私の手が空しく宙に浮いたのだけど、どうしてくれようか。
「いえ、自分はシルディア様の横でただ立っていただけです」
(あのねアンゼルム、ハイデは、貴方がここに居るのが判ったから命令違反ギリギリの判断の決心が出来たと言っているのよ。このお子ちゃま、ってまだ12歳か)
「アンゼルム、こんな時は、『君に会えて嬉しい』と言うのが殿方の役目です」
私は、年相応に朴念仁のアンゼルムの背中をフローラの代わりに頼りになるお姉様らしくそっと押す(つまり、蹴飛ばす)
「はい! ハイデに会えて嬉しいです」
アンゼルムは12歳の男の子らしく直球で返す。
「アンゼルム殿」
ハイデは自分より少し背の低いアンゼルムを抱き上げる様に抱きしめる。
「ご無事で良かった」
「ありがとう、ハイデ」
全く、そこはプロポーズをしてキスの一つもする所でしょうが。
(まあ、12歳ではまだ無理か)
アーレイが飛び交い爆音と悲鳴をBGMにして大殺戮継続中の戦場で勝手に大団円を迎えてしまった二人を放置して、私はアクセレイに向き合う。
「この二人はしばらく戻って来ないので、大人の話をしましょうか、アクセレイ」
戦闘の真っ最中に本陣で始まってしまった恋愛劇にポカンとしているアレクセイ。
(慣れなさい。女性にとって戦争と恋愛は等価値なのよ)
「はっ、シルディア様」
アクセレイは私の前に膝を付いて騎士の礼を取る。
「まず、この度の戦功、見事である。
良くぞ私の窮地に一族を率いて駆けつけ、我が軍の勝利を決定付けた。
よって、貴官を伯爵に叙し、これまで一族で治めていた領地の統治を認める。
更に今後行われるタカツ地方攻略の際には副司令官に任じ、タカツ地方攻略の後は侯爵に陞爵する物とする。
そして、アクセレイ、正式に我が幕下に加われよ」
「有難き幸せ、このアクセレイ、シルディア様に永遠の忠誠を誓い、閣下の覇業の成就に微力を尽くします。
閣下より頂いたこの赤き肩布に賭けて」
アクセレイは肩に巻いた私の血判が押された肩布に手を掛けて誓う。
「その言や良し、今後はその肩布をアキム族の戦士の誉とするが良い」
(もう私は血判はしないわよ)
「身に余る栄誉、有難く頂きます」
(うんその方がいい。アクセレイだけが私の血判を持っている方が箔が付くし)
「アクセレイ、立て。
いつまでも跪いていられては戦の指示が出しにくい。
ハイデもアンゼルムもそろそろ良いだろう。
貴様らの婚姻についてはこの私がバルタザール殿とフローラに話を通して置くから安心しろ」
「「はっぃ」」
私の言葉に二人の世界に籠もっていた二人は、裏がえった声を上げて飛び離れ、直立不動で固まる。
私は「フー」と溜息をつき
「コンラート、私の直衛に100騎を残し、突撃騎兵をアキム族の前面に2列の突撃隊形で整列させよ。
突撃の合図は私が出すが、指揮は貴様に任せる」
真面目に戦争の指揮を執る。
「かしこまりました」
了解の敬礼の後、300人の槍騎兵にコンラートが私の命令を伝えると
「「うぉーー! クロスロード帝国 万歳! シルディア陛下 万歳! 」」
歓声が上がり、即座に整列を完了させると、9000人のアキム族が見守る中、コンラートを先頭に前線に向かう。
軽症の者が巻いた包帯に血が滲むが、戦意に衰えは無い。
むしろ実戦を潜り抜けて来た凄みを増している。
『精鋭にして精強』
と言うに相応しい槍騎兵の行進にアキム族が自然と花道を開ける。
「ハイデ、両翼のクヌートとカタリナの突撃騎兵に突撃準備。
中央の突撃騎兵の突撃に合わせてアーレイによる攻撃を中止、突撃騎兵による突撃を敢行。
合図は戦旗で行う」
「直ちに命令を伝えます」
ハイデが直衛の騎兵の中から伝令を選ぶ為に向かう。
「アクセレイは、私の指揮を補助せよ」
「かしこまりました」
「アンゼルム、私の合図で戦旗を掲げ、コンラートと共に突撃の先頭に立て」
「かしこまりました。シルディ様はこの本陣で待機されるのですよね」
「そうだ、私は直衛の100騎と共にここで待機する」
私が突撃に加わら無い事を確認して安堵の表情のアンゼムル。
「シルディア様、そろそろ火計の火が収まってまいりました」
アレクセイに言われて再び騎乗して辺りを見回す。
まだ左右の火は収まっていないが、後方の火はほとんど収まっていた。
「結局、油樽を燃やしただけで他の仕掛けは無かったわけね」
(クロスロード大公国の精強な騎兵がただ油の燃やしただけの火計に全滅する訳がないじゃない。完全に情報の収集と分析、研究不足よ)
ただ、火は収まったが付近は油の臭いで臭い事この上ない。
さらに埃も油を含んで髪に混じってベトベトして気持ち悪い事この上ない。
「この戦いが終わったら必要になるのは、大浴場ね。
カロッサ村に温泉があったら良いのだけど、牧羊が主な産業だそうだから望み薄ね。
今後の事も考えて、この地に軍事拠点を造ろうかしら・・・・うん造りましょう」
目の前の戦況よりも戦後の温泉の心配をする私に再びポカンと意識が飛んだらしいアクセレイ。
「アレクセイ、軍隊を動かす基本は補給の確保よ。
補給とは食糧や武器だけでは無く、衣服、住む所からトイレまで色々な物が含まれる。
そして十分な補給の支えがあるからこそ、決戦の時、兵は人の限界を越えた働きで応えてくれるの」
「良く分かります」
「もっとも最初からそれを計算に入れた作戦を戦隊長が提案したら新兵からやり直させるけどね」
ニッコりと笑って口角を上げると
「大変、良く分かりました」
と酷く真面目に返された。
アレクセイとアキム族の再教育はブルックにさせる事にしよう。
(アキム族は確かに勇猛で忠義心に溢れた良い兵士だけど、逆境に耐える事に慣らされ過ぎている)
私はこの時そう決めた。
機動力に長けた大規模な騎馬隊がただ単に野原に撒いた油による火計だけで全滅するのはおおかしいと前から思っていました。
あの有名な赤壁の戦いでもいくら木造で、すぐに動けない様に鎖で繋いでいたとしても、焼き討ち船の攻撃だけで全滅するのはおかしいです。
と言う事で、油による火計にまんまとハマったシルディですが、髪の毛がべた付くと言う精神的被害を除いては、たいした損害を受ける事は有りませんでした。
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