ウノシルディス平定18
わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。
そんな作者の願望から始めた物語です。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
短編の外伝を作成しました。
こうれからも不定期で作成してまいります。
『主人公じゃないけど頑張ります』
https://ncode.syosetu.com/n1976mm/
こちらからどうぞ
「コンラート、第3列後退、第4列突撃せよ」
私は身振りも交えてややオーバーアクション気味に指示を出す。
「イェス! シルディア! 」
「大きな負傷をしている者はいないか? 見事な働きであった、暫し休息せよ」
引揚げてくる第3列を戦った騎士達に大きな負傷をしている者が居ないのを見て少し安心する。
「第4列、激突しました。
・・・・敵、攻撃を支えきれません、防御陣崩壊、壊走を始めました」
「深追いはさせるな。
現状の守備ラインを維持せよ」
第4陣は敵の歩兵の中を自由自在に走り回り、槍を振るい敵を駆逐している。
もはや狩りに近い。
(あまりこの様な戦いに慣れさせない方が良いわね)
「引き鐘! 第5列前進、現状の守備ラインを保持せよ」
(総司令官の私が戦隊指揮をしていたのがバレたら、ブルックに怒られる。エリーは、行ってこいと言ってくれたから大丈夫。ヒルダとフローラには・・・黙っておきましょう)
「イェス! シルディア! 」
「全く、たった60騎の攻撃を支え切れない歩兵の防御陣って何なのよ。
もう少し真剣に戦争してくれないと決死の覚悟で突撃してきた私達がバカみたいじゃないの」
ほとんど八つ当たりである。
(あとでブルックに絶対に怒られるし)
「それはですね、先程から始まったハイデ隊とカタリナ隊の猛攻によって、敵の首脳部が崩壊したのでは無いでしょうか」
コンラートの推論はもっともらしいけど、外れている。
「毎分400発程度かしら、あと10分も続ければ、弾切れを起こすわね」
(今後の戦いでは専門の補給部隊が必要ね)
「弾切れは不味くありませんか?」
(不味いわね、私の財布に。これもブルックに怒られる)
「大丈夫、その前にあの左側面を突いたあの大部隊の攻勢でこの戦闘は終わる」
見慣れない旗を掲げた3000人程が紡錘陣形で敵を蹴散らし迫ってきている。
「まもなくこちらに達しますが、あれは敵が寝返ったのでしょうか」
「まあ、半分当たっているけどあれは、アキム族でしょう」
「アキム族ですか。
しかし、アキム族には陣地での待機をご命じになったのでは?」
「私が炎の壁に包まれたのを見て慌てて駆け付けたのでしょう」
「命令違反にはなりませんか?」
「独断であれば、命令違反ね。
ただ、私が不様に罠に掛かったと思っての命令違反なら、責める事は出来ないわね。
むしろ非常時の臨機応変な対応を褒めるべきね。
それに、クヌートかハイデの許可を得ていれば問題はないわ」
「寝返ったばかりの部族にその出撃許可を出すのは難しいのではないでしょうか。
少なくても自分であれば、許可は出来ません」
「普通の戦隊長であればその判断で問題ありません。
ですが、二人は左翼の総司令官、戦争の意味、戦場全体を考えて判断が求められる立場です」
「自分にはまだ、その様な大きな命令権に耐えれそうにありません。
第4列が戻ります」
首を振りながら答えるコンラート。
「まだ、候補生ですもの今は出来なくて普通よ。
これから成長しなさい。
貴方達は、私の帝国の中核となる将校になるのですから」
コンラートの正直過ぎる告白に笑いながら私は期待を込めて見つめる。
「努力致します」
私はコンラートの返答に微笑で頷きながら、帰還した第4列を出迎える。
「見事な騎兵の運用であった。
良く敵を追い回し、上手く引いた。
勝利は目前である、暫し休息せよ」
私の労いの言葉に目を輝かせて敬礼で答える第4列の騎士達。
「敵の前衛が完全に崩壊。後方に壊走を始めました」
「あの旗はハイデね。
意外だったけど、ハイデとアクセレイ殿とアキム族が一番に駆け付けた様ね。
想定よりかなり早い」
「はい、その様ですが寝返ったばかりのアキム族を近づけて大丈夫でしょうか」
「さっきも言ったけど、大丈夫よ。
今ここで私を倒してもアキム族が滅亡するだけだもの。
それにコンラート、憶えておきなさい。
そのリスクを恐れていては帝国は成立しない。
そして、そのリスクを放置して無視していると帝国の様にゲートリング大公国の叛旗を招き崩壊する」
「肝に銘じます。
それでは、ハイデ様とアクセレイ殿に迎えを出しますが、アキム族については、ウノ族に対して警戒態勢で待機と言う事で宜しくでしょうか」
「ええ、それで良い」
コンラートが伝令に命令書を手早く作成して伝令に手渡す。
「アキム族が右の肩に付けている赤い布は味方の印で良いのでしょうか」
初めは前衛の3000人しか見えなかったが、アレクセイはアキム族全員、約9000人を連れて来たらしい。
そして、そのアキム族は全員右の肩に赤い布を巻いている。
「私がそう命じましたから間違いありません」
私の前衛に整列しだした9000人の軍勢は中々に壮観である。
「あれは、正式の軍装として定着するのでは無いでしょうか。
目立ちますし、縁起も良い、第一格好が良いです」
コンラートも私の幕僚として徐々に染まってきたようね。
「元々は私の血判だもの、値打ちが違うわ」
「まさか、アキム族全員に血判をするおつもりではありませんよね」
これはコンラート流の冗談なのだろうか。
「私を貧血で殺すつもり?
結構痛いし、せいぜい隊長までよ」
真剣に心配そうな素振りのコンラートを見ていると、まだまだ私の冗談が判っていない様だ。
「冗談はさておき、コンラート。両翼のクヌート隊長とカタリナ隊長に命令」
「はっ」
「両部隊は、全力を上げて敵残存部隊をタマ河に追い落とせ。
尚、右肩に赤い布を巻いた歩兵は、友軍である」
今更細かい命令は要らないだろう。
私の安泰のみ知らせれば良い。
◆ ◆ ◆ ◆
「クヌート隊長」
「アリーセ殿、ハイデ殿はアクセレイ殿と共にシルディア様の救出に向かわれたましたか?」
「はい」
「指揮権について引継ぎ事項はありますか」
「はい。今後の指揮は次席であるクヌート殿が行なう事。
ただし、アキム族が裏切った場合は、クヌートの命令の如何を問わずアキム族の殲滅を最優先とする命令を受けております」
「裏切った場合ですか・・・その場合はハイデ殿は・・・」
「アクセレイ殿を信頼しシルディ様の救出に共に向かったのは、ハイデ隊長の判断です。
戦場での判断です。
それが間違っていた時の覚悟など今更ですよ」
(アリーセ副隊長はさも当然の様に言い切るが、その判断は伯爵クラスの司令官でも難しい。
俺でもその判断が出来る自信は無い)
まして、彼女達は殆どがたかが男爵か公国騎士家でしかも女性だ。
学園では一体どんな高度な士官教育を行なっているのだろう。
「分かりました。
指揮権を引継ぎます。
ですが、ハイデ隊長の判断は正しいと自分も考えます」
今、アキム族が裏切り、シルディア様を害しても一族丸ごと殲滅されるのは明らかだ。
それよりもこのピンチをチャンスと考える位の知恵は有るだろう。
「クヌート殿、全ハイデ隊の指揮権をお譲り致します。
伝令! 全ハイデ隊はこれよりクヌート殿の指揮下にはいる。
全戦隊は敵の左翼150メートルに戦列を作れ」
アリーセがハイデ隊の全戦隊に命令を行なう。
「伝令、突撃騎兵は、弓騎戦隊の30メートル前方に展開せよ」
俺も命令を飛ばす。
「ウノシルディス平定の総仕上げです。
派手にやりましょう」
俺が右手の拳を差し出すと、アリーセ殿も拳を合わせた。
「ええ、仕上げです、派手にやってやりましょう」
(少しは私の財布の事も考えて欲しいというシルディの願いは二人には届かなかった)
この地域で火薬に関する知識を持っているのは、スクルド王国、ゲートリング大公国、帝国、クロスロード大公国の4地域だけで、本格的に生産出来るのはスクルド王国とクロスロード大公国のみです。
クロスロード大公国に関してはシルディアの産業情報収集機関であるシルディ機関のみが原料の調達からアーレイやロングの生産までの技術を持っています。
ウノ族には先の大敗の原因は火計とだけ伝わり、未知の兵器である火薬については伝わっていなかった、あるいは伝わっていても理解出来なかったのでしょう。
また、仮に伝わっていても大量生産する事は不可能である事はシルディ機関の調査で明らかであったので、シルディは自信を持って騎兵突撃を行う事が出来ました。
また、今回シルディが行った騎兵突撃は、1000騎程度の突撃で部隊規模としては中規模に当たります。この程度の数であれば、反転離脱する事も容易であるので、シルディは騎兵突撃を行いました。
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