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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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96/110

ウノシルディス平定17

3カ所で同時発生している事を並行して描いていますので、場面展開が多くてすいません。

火曜日と金曜日に更新を行います。

又、本編で書ききれなかったお話を外伝として不定期で投稿致します。

「バルタザール殿、火の手が上がりました。

本隊と左右に展開した部隊とが分断されます」


「シルデイ様の読みの通りです」

バルタザール殿に焦りは無い。

それは私に平常心を取り戻させた。


「はい、ですが、まだ全軍の配置は完了していません。

敵の側面への展開が完了し次第、敵に張り付き攻撃を開始させます。

アーレイの使用も許可します」

バルタザール殿がいなければ、私はこの瞬間全軍に闇雲な総攻撃を命じていたかもしれない。


「敵の数は2万を切っておる。撃ち漏らしの無いように落ち着いて攻撃されれば良い」


「はい、解りました。『全てシルデイ様の想定通り。焦る必要は無い』全軍に徹底させます。

私とバルタザール殿は作戦指揮を攻撃部隊の中央で行うべく第5戦隊後方まで移動を急ぐ。


   ◆    ◆    ◆    ◆


私達が第5戦隊後方に移動し各戦隊に攻撃命令を準備していると、逆に前線から掛けて来る伝令がいる。

「伝令! エルンストからカタリナ隊へ。

エルンスト隊は敵右側面に移動、カタリナ隊の突撃騎兵として前衛にて待機する。

以上」

私と、バルタザール殿は顔を見合わせ、右手の拳を突きあわえた。


「エルンスト殿は素早い、そして良い判断をされます。さすが帝国士官学校の首席卒業」

にっこり笑ってバルタザール殿に私は言うと


「初陣とは思えんな。さすがブルック殿の直伝の後輩じゃな」

とバルタザール殿も微笑まれる。


「それよりも、バルタザール殿、敵の左翼の土煙が気になります。良くは見えませんが、相当な人数が動いている様に思われます」


「確かに、ハイデ殿の部隊の移動にしては、少し派手な砂埃(すなぼこり)じゃが、爆音も聞こえぬし、アーレイの爆煙とも思えん」


「いずれにしても我々も前に出ます。全軍に攻撃命令を急ぎましょう」


「そうじゃな、前進して近付けば、はっきり判るじゃろう」


「はい」

一瞬私はアキム族の裏切りを考えたが、それならばハイデ隊が天地をひっくり返す勢いでアーレイを撃ちまくっているはずと思いその考えを否定した。


   ◆    ◆    ◆    ◆


「アクセレイ殿、各部隊の隊長、集合済みです」

砂と埃にまみれた男達を見回す。

皆、俺と同様に自分の血で赤く染めた布を右の肩に巻いている。


「諸君、シルディア様に我々の覚悟を見せる機会が早速に訪れた。

我らはこれより敵の脇腹に突入し、敵陣を斜めに横切りシルディア様をお助けする。

もしその途中でウンガノ族の首脳部を捉える機会があれば捕らえろ。

歯向かうウノ族は倒せ、逃げるウノ族は追うな。シルディア様との合流が最優先だ」


ここで言葉を区切り皆の顔を改めて見る。


我らの同胞3万を殲滅させたかつての敵の総大将の救出に向かう事に不満を持つ者はいないか。

もし殺された同胞の敵討ちと言う短慮に動かせれる者がいれば、最悪の結果を招く。

だが、その様な者はいない、戦うべき目的と真の敵に納得している様だ。


ブルマイスター要塞でアーレイが作った地獄の中で俺を信じて死んでいった者達の『無念』を浮かべた目の光とは全く異なる戦士の光。


同胞3万を無意味に殺戮された恨みは俺にも有った。

だが、ロガチョフ義理兄の勇戦を讃え、自らの血を我らの降伏の証として手渡された時、その思いは完全に消えた。


ウノ族のシキタリでは、大将の血の血判は降伏した事の証で、勝者が敗者に渡す物では無い。


それを大勢の部下の前で降伏した使者に手渡す絶対勝者としての余裕。

我らアキム族を捨て駒をして扱い、小細工に走るウンガノ族が勝てる相手ではない。


胸鎧の内側にいれたヒルデガルト様の髪の毛を押さえると

(これが私のシルディアお姉様よ)

と言われた気がした。


俺は右肩の巻いた、シルディア様の血で染められた赤い布を手で確かめる。

何人かが俺と同じように右肩の血で赤く染めた布に手をやる。

「赤い布に染められた思いを忘れるな・・・・我らは、シルディア様の信頼に必ず応える。

未来を勝ち取る! 行くぞ!!」


「「おぅ!!」」


リーダーが部隊に戻ると、部隊でも雄叫びが上がる。


「アキム族の未来を勝ち取れ!」

リーダー達が煽(あお)る。


「「おぅーーーーー!!」」


生き残った9000人のアキム族の男達が一斉に雄たけびを上げて壕を飛び出す。


アキム族の部族旗が戦場の風を受けて誇らしげに舞う。


   ◆    ◆    ◆    ◆


陣形は自然に先陣を絞った細い楕円形の形となる。


中央は俺とハイデ殿とハイデ殿の直衛の10騎ほどで形作る。


彼女達は、騎乗しながらロングボウに近い大きさの大型の弓を自在に操る恐るべき弓騎兵達。

ハイデ殿の指揮で50メートル程度前方の敵を狙撃し、その後を俺の部隊が蹂躙する。


全員が大柄で背が高く、弓を弾く関係で胸の大きさが一層強調されて男達の目を引く。

しかし、彼女達の弦音(つるおと)が響く度に確実に一人の人生が終わる。


しかも、冷静に部隊長クラスを狙って攻撃している様で、老兵や少年兵で射抜かれた者はいない。


だが、これは彼女達が優しいのでは無く、限られた矢を効率的に使っている為であろう。


美しきクロスロードの戦乙女(ワルキューレ)達だ。


「アクセレイ殿、見えた! あれです『戦旗』! 横にいる赤い服の人がシルディ様に間違いありません」

ハイデ様が叫ばれる。

シルディア様まで、500メートル。


ウノ族が罠として放った炎と黒煙が禍々しい背景となっているが、その色彩までもが、シルディア様を引き立てる。


前衛部隊の2000程の歩兵を挟んで、ロングボウ兵が200人程見える。


た(・)っ(・)た(・)の(・)2(・)0(・)0(・)人(・)、ウノ族が、いやウンガノ族がどれだけ大規模な戦を知らない蛮族であるかが良く判る。


さらに防御陣を構築しているはずの歩兵が僅か100騎程の騎兵に追いかけ回され、陣を乱している。

あの腰の引けた歩兵では100倍いても、クロスロード大公国の槍騎兵に敵(かな)うはずがない。


彼らは、『戦旗』を掲げ腕を組み、退(しりぞか)かない主君の御前で戦う誇りに溢(あふ)れている。


主君が退かないのは、部下達への信頼の証。

その信頼に応えるのは、騎士の誉。


その証拠に前線で戦う槍騎兵達は兜を被っていない。

歩兵相手に兜が視界を遮るのを避ける事も勿論ある。

だが、あれは騎士としての覚悟を示している事に他ならない。


戦場で総大将を護る為に御前で槍を振う栄誉に浴する機会が一生に幾度あるだろう。

今前線で戦っている騎士達は自身の命など欠片(かけら)も惜しく思っていない。


『死処を得る』


絶対の忠誠を尽くす者が居ない我々ウノ族には理解出来ない考え。


いやブルマイスターで死んだ者達は最後まで逃げなかった。

俺が言い出さない限り降伏しなかった。

彼らも死処を得ていたのだろうか。

俺は彼らの忠誠を受け取るに相応しい存在だったのだろうか?


「部族旗を前に! 弓兵を蹂躙し、歩兵を蹴散らせ! 総員突撃! 我に続け!」

叫んでいる俺の全身の血が煮えたぎる。


「「おぅーーーーー!!」」

(恐れる物など何もない。君主に忠誠を誓うとはこういう事か)


俺はハイデ様から借りた馬に跨り、戦場に躍り出る。

新しくシルディ部下になったアクセレイと中堅の部下であるカタリナ、シルディを育てたバルタザール殿の3人を同時に描くと、アクセレイの真面目さが目立ちます。

前のお話のハイデも真面目な性格でシルディは2回も機会を与え期待以上の働きをしているのですが、もう少しですね。

『個人的に助けたい人がいるから貴方と共に戦う』が、建前ではそっちの方が90%の動機になったら良かったのですが、でも子爵を狙う辺りは結構成長しました。

さて、アクセレイですが、士官学校を主席で卒業する位なので、能力的には十分あります。

ただ、彼の場合は20万を超えるアキム族の長である事、この戦いで3万以上の同族を助けられなかった事が重荷になっています。

この呪縛が解けるのは、ヒルダとの再会を果たしてからになりそうです。



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