ウノシルディス平定11
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「あの無様な陣は一体なんなの。3万位いるけど、全然戦闘陣形になってないじゃない」
望遠鏡をしまいながら言うと、エリーもアクセレイのバルタザール殿も頷く。
「伝令ーーー! 伝令ーーー!
シルディ様、カタリナ様から攻撃準備完了。攻撃開始命令を待つ。
以上」
伝令の催促に皆が頷く。
「カタリナ隊に命令。
交互射撃にて敵を殲滅、漸次前進せよ」
「クヌートに命令。
突撃騎兵はカタリナ隊と同調して前進、敵が突撃してきた場合は、突撃して来た敵のみを排除せよ。
敵本隊への突撃は別命あるまで禁じる」
私の命令を書面にするのももどかしく、書き終えた命令書の確認をエリーが行なうと矢の様に伝令が走り去る。
「命令書は間違の一番少ない方法だけど、ヤッパりまどろっこしいわね」
エリーは私の言葉に頷くが
「ですが、これ位の大きさの戦場になると、笛や鐘、手旗や信号旗での方法にはもう頼れません」
「そうよね〜戦場に腕木通信を持ち込む訳にも行かないし」
私は敵を前に考え込む。
「これ位の速さで進む戦争が私達にはまだ、丁度良いのではないでしょうか」
私が考え込んでいるのを見てエリーが適当な事を言う。
「それはそうかも知れないけど、研究をしておく事は必要よ」
もっともらしく言うけれど、どうすれば良いのか私にもサッパリ思い付かない。
「はい、シルディ様。
え〜〜と、それでカタリナ隊の攻撃が始まりました」
もはやお馴染みと成った爆音が聞こえ来る。
(敵だけど人が砕け散るのを見ながらこんな会話をしているのは、チョッと麻痺してるかも知れない)
後ろの士官候補生達を見ると、初陣に緊張しているのは明らかであるが、距離の遠さもあって、アーレイの爆発音に慌てる馬はいない。
敵の本隊の惨状も爆煙に隠れて望遠鏡無しには見えないのも考えれば良い事なのかも知れない。
再び前方に望遠鏡を向けると、血飛沫を上げて吹き飛ぶ敵の死体の向こうに敵の本隊が見える。
「右往左往。成すすべも無しと言うしかありません」
その光景を見ながら辛辣な事を言うのはアレクセイ。
(ちょっと後で精神的なケアが必要よね。アーレイの攻撃後なんて発狂レベルの地獄だもの)
「一本で10人程度が戦闘不能になっている様ですが、爆煙でもう良く見えません」
望遠鏡を使ってその地獄をジックリ観察しながら冷静な報告を行なうのはエリー。
「ハイデ隊も防衛陣地を越えて攻撃を開始したし、これで完全な包囲挟撃体制。
川を背にした背水に陣の格好だけど、敵の殲滅は時間の問題ね」
爆煙の影響で望遠鏡を使っても良く見えなくなったので、みんな望遠鏡をしまい込む。
この時、私達は戦争を甘く見ていたのかも知れない。
生き残る為にはどんな卑怯な事でも人間は行えると言う事を
アーレイの攻撃音が命令無しに止んだ。
「カタリナ隊が攻撃を中止しました。
爆煙の為詳細は不明です。
ハイデ隊は攻撃続行中」
アンゼムルの報告にも歯切れのよさは無い。
(攻撃に不備があった訳では無い。順調に敵を削っていたはず)
「詳しい報告を待ちましょう。ここで我々が慌てても仕方ない」
私は腕を組んで報告を待つ。
「何か問題が起きましたか」
本陣の後ろで待機していたバルタザール殿も本陣にやって来た。
「まだ何かわかりません。カタリナからの連絡待ちです」
◆ ◆ ◆ ◆
「伝令ーーー! 伝令ーーー!
敵が5000人以上の女性と子供を前面に押し出し人による壁を作り白旗を揚げた使者が総大将との会談を求めて来ました。
本陣に案内しても宜しいでしょうか」
私はエリーやバルタザール殿、アンゼルムと顔を見合わせる。
「ハイデ隊に伝令、直ちに攻撃を中止、別名あるまで現状を維持。口頭で良い急げ」
「はい! ただちに」
「使者との会談は本陣で行う。全員を連れて来い」
「かしこまりました」
カタリナが派遣してきた伝令がトンボ返りで戻って行く。
「カタリナ、クヌートに攻撃中止命令。別名あるまで現状を維持。口頭で良い急げ」
本陣から二人に別の伝令が走る。
「アキム族の時とは違い、歓迎出来る使者ではありませんな」
バルタザール殿の言葉に私は頷く。
「ええ、それに女子供で壁を作ると言う手段自体が気にいらない」
(さっきのアクセレイとの会談の影響で騎士道精神に毒されているのかも知れない。皆殺しにしようとする悪魔が相手なら、どんな手段も正当化されるのかも知れない。だけど、気に入らない)
「詳しくはわかりませんが、退却が完了するまで攻撃を控えなければ、人質を殺すと言う事でしょう」
エリーの冷静な分析は正しい。
「バルタザール殿、士官候補生達の見える所で謁見を行います。
士官候補生を下馬の上で整列させて会談場所を整えて頂けますか」
私が正しいのか、敵が正しいのか、候補生達に判断してもらいましょう。
「会談の内容を士官候補生に聞かせると言う事ですね。
戦隊長クラスを10名程同席させても宜しいでしょうか」
「構わない、もし戦闘と言う事になれば、士官候補生は私が直接率いる。
私と敵、どちらに正義があるのか候補生達に決めさせたい」
「かしこまりました、余計なお世話だとは思いますが、どうか御身を大切にして下さい」
バルタザール殿が会談場の整理の為に本陣を離れる。
(まいったわね。全てお見透視ね)
「エリー、私は冷静に見えるかしら」
「子供にでも分かります。とてもお怒りです」
「そう」
冷静な表情を繕おうとしたけれど、ダメだったらしい。
「ですが、シルディア殿下のお心のままに行動して下さい。何をご決断されても、私達がお支え致します」
エリーの言葉にアクセレイも頷く。
「そうか、私はよい部下に恵まれた」
「シルディ様、白旗を上げた使節が到着します。
バルタザール様会談場で対応されます」
「わかった、そちらに向かう。エリー、アンゼムル、一緒に来て」
「「はい、シルディ様」」
平民5000人の命と、騎士3000人の命を天秤に掛けたらどちらに傾くか。
この時代の常識では、平民5000人の命など、騎士の行動を制限するのに何の効果もありません。
ですがカタリナは攻撃を停止してしまいました。
それは、アーレイの性質から一騎打ちが基本の騎士とは異なり、平民を巻き込まずに敵を倒す事は不可能であり、平民を犠牲にする攻撃を続行する事によって生じるシルデイに対する悪評や、部下の士気の低下を恐れた為です。
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