ウノシルディス平定10
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
アレクセイ達降伏した者達を見送り私は、中断していた戦争に戻る。
(中断出来る戦争って一体何なのよ)
ただ、その前にもう一仕事ある。
「御覧の通りだオベール伯爵殿。
アキム族はウノ族を見限り私に降伏、私はイネス地方の併呑の先兵となる事を条件にこれを受け入れた。
これから併呑するイネス領地は全て私の領地とする。
帝国にはそのまま報告されるが良い」
もはや帝国に対して取り繕うのも面倒臭い。
私は完全に開き直った。
「かしこまりました。私共は観測場に退避致します」
オベール伯爵は慇懃な挨拶を行い軍監を引き連れで退席する。
「ヤレヤレ、とうとう、ブチ切れてしまったのですね。
ご安心下さい。お兄様と共に、お支え致します、シルディ様」
もの凄く良い顔で微笑みながらエリー。
「イネス全土の占領は半年程度で可能ですかな」
メチャクチャ私を酷使する気満々のバルタザール殿。
「ブルック先輩が過労で倒れられても、私がお支え致します。ご安心を」
とエリーと同じ様な事を言うクヌート。
(いま貴方、『死んでも』と言わなかった)
「シルディア様に相応しい摂政になれる様に頑張ります」
今までで最高に背伸びしたアレクセイ。
(フローラに叱られても知らないわわよ)
普通の物語であれば、此処は格好良く一番盛り上がる所でしょう。
どうして、私の幕僚は本音をモロにぶつけてくるの。
◆ ◆ ◆ ◆
「最後の仕上げです。
作戦を第二段階に移行し、敵の側背を突きウノ族を包囲殲滅する。
ハイデ隊は防御陣地を越えてゆっくりと前進、交互射撃で敵本隊に圧力を加えよ」
伝令が素早く私の命令を命令書にするとクヌートとエリーに確認を貰い走り出す。
「エルンストは全突撃騎兵を速やかに側背に移動、カタリナ隊の前衛を固めよ。
尚、移動後はクヌートが直接指揮を取れ」
「かしこまりました」
「エリー、部隊の移動に合わせて本陣も移動する」
「はい、シルディ様」
「バルタザール殿」
そう呼び掛けると、バルタザール殿は大きく頷くと
「儂は、ヒヨッコ共を側面に移動させる。
見せ場を作ってやってくれよ、シルディア殿」
やはりバルタザール殿に細かい指示は不要らしい。
(私の父でさえ子供扱いなのだから、私達なんか孫や曾孫ね。でも安心出来る)
「宜しくお願いします。
バルタザール殿、最後の一撃はお任せします」
「ははは、了解しましたシルディア殿」
3000騎に増えた私の軍が一斉に動き出す。
半分は、赤い10匹の大蛇の様に一糸乱れずに動き出す。
半分は、まあそれなりに整った騎兵隊として動く。
だがその半分は、ほとんど今回の戦闘が初陣だ。
その事の重みに今気づいた私は、今更ながら体が震え出すのを止めれない。
残敵数3万、味方は3000。
兵力差は10倍、学園を出陣した時の100倍からは、随分楽になったけど気休めにも成らない。
槍騎兵は歩兵の10倍の戦力があると言われている。
しかし、私は机上演習以外で槍騎兵の指揮を取った事は無い。
初陣の兵と経験不足の指揮官。
(でも大丈夫、今までだって私一人の力で勝って来た訳じゃない)
「クヌート、突撃騎兵の指揮は貴官とエルンストに任せる。
アーレイの攻撃で混乱した敵を槍騎兵の突撃で殲滅。
帝国士官学校首席卒業の実力を見せよ」
「かしこまりました。
必ずやシルディア様のご期待に応えて見せます」
冗談とも真剣とも取れる返事だが、さすがのクヌートにも10倍の敵との戦闘を前にして、声が緊張が見える。
(彼の反応が普通なのよ、他の幕僚の精神が図太過ぎるよ)
フローラやエリー、そしてヒルダが『シルディ様(お姉様)がそれを言いますかと言う声が聞こえた気がした。
「クヌート、必ず、私為に、私の期待に応えなさい」
私はクヌートに騎士の誓いを求めるべく、左手を差し出そうとするが、さっき自分で切った傷の手当の包帯が巻いたままであったのを思い出し、仕方なく右手の甲を差し出す。
(クロスロードの平和の為でも、民の幸せでも無い、私だけの為に勝てと言う傲慢の極み)
「シルディ様、お止め下さい、ブルック先輩に殺されます」
(彼の声から震えが消えた。目前の敵以上の敵が現れたらしい)
「それは大丈夫、貴方やエルンストを信頼したから、ブルックはこの場に居ないの。
大体、この場に居ないブルックが悪い」
私は要求する様に右手を更に突き出す。
アクセレイは口を開けて目をまん丸に見開いて可愛い。
エリーとバルタザール殿は(またやらかした)と言う目で私を見ている。
(ああ、そういえば左手は部下の忠誠を誓わせる時で、右手は愛を誓わせる時にキスさせるんだっけ。でも愛の時は手の平の方だから大丈夫・・・・たぶん)
クヌートは、観念したかの様に私の前に膝付き
「必ずや、勝利をシルディア皇帝に捧げます」
と私の右手の甲にキスを行い本陣を後にする。
「シルディ様、この戦が終わったら忙しくなりますよ」
今の光景を黙って見ていたエリーが薄ら笑いを浮かべながら言う。
「それは当然の事でしょう」
(何をいまさら当然の事をエリーは言うのだろう)
「その事ではありません。ブルック兄様にフローラ、カチア、そしてクヌート、アクセレイ。
婿が三人に嫁が二人。
皇帝陛下も大変ですね」
極上のオモチャを手に入れた笑顔のエリー。
「アクセレイはヒルダの婿よ」
(あのヒルダが、私の大好きな髪の毛を切って渡した男よ。惚れたに決まっているじゃない)
「皇帝陛下については否定されないのですね」
とても良い笑顔で微笑む悪魔のエリー。
(そこか! エリーに一本取られた)
「エリー、この私を貴方の全力で支えなさい」
私からも震えが完全に消えた。
さすがはエリー、私の操縦が上手い。
「この戦でウノシルディスを平定する。
勝利は我等の手中に在り!!」
「「「イエス! シルディア!!」」」
エリーにバルタザール殿にアンゼルム、見事に私の幕僚の敬礼が見事に揃った。
因みにウノ族の習慣で戦場に赴く戦士に未婚の令嬢が自分の持ち物を渡すのは「武運をお祈りします」の意味になります。
名前が入っていたり、個人を特定出来る物を渡した場合は、「いつもあなたの傍にいます」という意味になり、未婚の令嬢の場合は、結婚の許諾になります。
そういえば、シルデイは名前の入ったハンカチに血判をして手渡していましたね。
エリーとバルタザールはその事に気が付いていますが、シルデイは当然知りません。
ま~いつもの楽しいシルデイに「ヤラカシ」ですね。
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