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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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ウノシルディス平定8

「梶 ゆう」の初回投稿です。

書きながら色々勉強して行きたいと思っています。

この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。

皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。

火曜日と金曜日に更新を行います。

「貴官がアキム族の族長、アキム・アレクセイであるか」

私は初めて見るアレクセイを当人にも判る様にマジマジと値踏みする。


「はい、その通りであります。シルディア・フォン・クロスロード殿下」

完璧な帝国式の貴族の礼を行うアクセレイも当然私を値踏みするが、貴族の礼の範疇は越えていない。

(まあ、この程度の挑発に乗る訳がないか)


「そうか、私がシルディア・フォン・クロスロードである。先ずは席につかれよ」

私はアレクセイが席に着くのを待って銀で出来たカップを無造作に並べるとポットから紅茶を注ぐ。

当然の様に、アクセレイの供の二人はアクセレイの後ろに立とうとするが「席が用意されているのに、何をしているか、お前達も座れ」とアクセレイはお供の二人にも着席を促す。

(完全に帝国式の降伏の形式ね)


私はその様子を見ながら

「どれでも好きなカップを選ばれよ」

咄嗟に供の者が毒見の為に動こうとするが、アクセレイが手で制し、自分に最も近くにあるカップに手を伸ばし私よりも先に一口飲む。

(これも完全に帝国式の降伏の作法ね)


その動きをちらりと見て私は、アクセレイが手を伸ばした隣のカップに手を伸ばし、一口飲む。

「貴殿は、帝国に居た事がおありか?」

降伏の使者に総大将がお茶を勧め、使者はこれを毒見を行わずに飲むのが帝国流の降伏の形式。

(ヒルダも自分が気に入ったのであれば、少しは情報を流しても良いのに完全に私の判断に任せるわけね。ヒルダが全ての功績と引き換え私に会そうとした男だもの、只者(ただもの)の訳けが無いわ。それにしてもシルディ機関で何か情報を掴んでいなかったのかしら)

ちらりとエリーを見ると首を横に振る。


「はい、五年程前に帝国士官学校を卒業致しました」

(こら!ブルック! 貴方の一年先輩じゃない。本当に何も情報を掴んでいなかったの?)


「五年前・・・ブルックの卒業した前の年ね」

(あっ、声に出てしまった)


「それがブルックハルト・フォン・グランド殿の事であれば彼とは直接の面識はありませんが、彼の卒業する一年前の卒業になります」

(ブルック! 職務怠慢よ。帝国の士官学校を卒業したウノ族の族長なんて、最重要調査事項じゃない)


「そう、それでブルマイスターで降伏を申し出たと言う事であるが、ブルマイスターで降伏した人間が何故、今ここにいる?」

(ブルマイスター要塞が解放されたのは8日前、その日に出発するくらいじゃないと間に合わない)


「アキム族の生き残りがいれば、間違いなく棄兵(きへい)として殿(しんがり)を割り当てられ、見捨てられる事をヒルダ様にご説明をさせて頂き、降伏をしたその日に許可を頂き出発致しました」

(ヒルダの手紙もあるし嘘は無い。あのヒルダがこの男をそこまで信頼した理由は何かしら。そしてフローラとベルンもその決定に異を唱えなかったのね)


「私は、この度の出征に当たり、侵略者であるウノ族に対し、

『一片の情けも慈悲も必要無し。蹂躙せよ!殲滅せよ!叩き潰せ!』と檄を飛ばした。

その考えに今も変わりは無い、その上で汝に問いかける。

何故、私に降伏を申し出た」

私の言葉に何故かアクセレイの表情が一瞬緩んだ。

(今の私の言葉の何処に笑える要素があるのだろう。それにしても私には相手の意図を読む間があるのに、彼には間が無い。私の質問を想定済みと言う事ね)


「ウノ族と一言で言っても、複数の部族の寄り合い所帯です。

我がアキム族もその中の一つですが、アキム族はクロスロード大公国とも関係が深く、このウノシルディスに暮らす者ウノ族の殆どがアキム族です。

我が一族は今回の出兵には反対でありましたが、ウノ族の主流派である族長には逆らう事は出来ず出兵する事となりました」

アクセレイは淡々とアキム族の状況を述べるが、述べる事に嘘は無いであろう。

(ウノ族が部族集合体であるのは知っていたけど、どの部族がウノシルディスに住んでいるかまでは調べなかったわね。これは私もブルックも蛮族と侮っていたらしい。バルタザール殿であれば何かご存じであろうか)

ちらりとバルタザール殿を見ると、アクセレイ殿を見ながら紅茶を楽しんでおられる。


「アキム族の置かれた境遇には同情はするが、それはウノ族の中の話である。

そして、今そなたが立っている大地がウノシルディスの大地である以上、アキム族も侵略者である事に変わりはない」

(ここは戦場、そして今は戦争の真っ最中。長々とした交渉をしている時間はない。それにヒルダがこの程度の言い訳でアクセレイを評価し、アキム族を信用したとは思えない。敢えて冷たく突き放してみた)


「シルディア殿下のおっしゃる通りでございます。

ですのでアキム族は、今回の出兵の賠償としてアキム族が所有する全ての領地をシルディア殿下に差し出した上で私自身が人質となります」

(降伏の条件としたは破格である。これがヒルダが評価した理由だろうか。だが、私はそれ程甘く無い)


「そして『族長を人質を取られたアキム族は、大公国の先兵となって同じウノ族と戦う事を強(しい)いらえた』と言う事でアキム族の名誉は守られ、私は悪女の名前を高めるわけね」

(自身が人質になると言うのは一見全面降伏の様に思えるけど、人質に取られたので仕方なく同族を裏切ったと言う建前にもなる)


「違います。強いられたのでは無く我々の意志です。

現在のウノ族への義理は今回の戦いで十分に果たしました。

ウノシルディス要塞の攻城戦で散ったウノ族の主力の半分、殿(しんがり)の軍の殆どがアキム族の男です。

一族の男の大半を失ったアキム族にはシルディア殿下の後ろ盾を頂き、タカツ地方とウノ族を併合して頂きその庇護の元で生きるしか、アキム族がタカツ地方で生き残る道はございません」

淡々と語るアクセレイ。

(アキム族3万程を殺したのは私。しかし、私に対する恨みは感じられない。それどころか私にウノ族を併合しろとそそのかす)


「安心されよアクセレイ殿。

今回の侵略軍を殲滅した後、私はタカツ地方を併合し、ウノ族を傘下に収める。

私が併合した後は、ウノ族内部の戦いは認めない、そして愚かな戦いにウノ族を駆り立てる事はしない。

このウノシルディスとタカツ地方にウノ族を含めて民がして暮らせる社会を作り上げるつもりだ」

(言葉は綺麗だけど、タカツ地方とウノ族平定にアキム族の助力は不要、故に特別扱いも降伏も認めないと言ったのだけど、ちゃんと伝わったかしら)

エリーとバルタザール殿を見ると先ほどまでの余裕は無く、凄く険しい顔をしている。

アンゼルムは、ポカンと言う感じだけど、私が言った事の意味は分かっている様ね。

(ここは私の戦場、剣やアーレイが爆発しなくても私の戦いは続ているのよ)

以前でも少し触れましたが、5年前まで帝国は異民族にも広く門戸を開いていました。

それは彼我の間に知識だけでは絶対に埋められない圧倒的な技術力の差が存在していた為です。

そしてその政策はシルディには不満を抱かせるものではありましたが、民に平和をもたらすものであり許容できる事であったので、学園やシルディ機関を作って大公国令嬢では無く、実業家シルデイとして生きるつもりでした。

それが覆ったのは、クロスロード大公国以外の構成国に対する帝国の施政が変わった事に起因します。


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