ウノシルディス平定7
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
敵陣の方を観るために望遠鏡を向けると、確かに白旗をもった使者が3人徒歩でこちらに向かって来る。
「クヌート、改めて攻撃中止命令を出して」
軍監の相手をしていた時間が惜しまれるが、幸いな事の前線のハイデとエルンストが冷静に対応してくれたらしい。
(本当に優秀な部隊指揮官で助かったわ)
「本当に降伏して来ましたね」
エリーの言葉に私もクヌートも頷く。
「シルディ様、一部隊だけが降伏して来た場合は、どう対応するのですか」
アンゼルムは戦場のシキタリについては詳しく無いと言うか、私も教科書以上の事は知らない。
「帝国では根回しの上で寝返った場合を除いては、警備兵をつけて戦場からの離脱させます」
クヌートが士官学校で学んだ知識を披露してくれる。
バルタザール殿が頷いているのでそれで良いのだろう。
「エリー、この場合はヒルダの寝返り工作の成功と言う事になるのかしら」
「そうですね、詳しくは会って見ないと判りませんが、両方の対応を考えておかれた方が宜しいでしょう」
「そうね」
と私はエリーに同意する。
「ハイデとエルンストに防御陣の降伏した部隊とその後ろの本隊を注意させる様に。
特に本体が降伏した部隊に接近する動きを見せた場合は、これを排除する事」
「了解致しました」
クヌートが伝令を呼んで私の命令を伝えている。
◆ ◆ ◆ ◆
白旗を揚げた使者は、私達の本陣の手前30メートル位で一度止まり、剣や槍を置き鎧もそこで脱ぐ。
「作法的にも帝国の作法に従った降伏の使者の振る舞いです」
クヌートが感心した様に教えてくれる。
「蛮族にしては珍しい」
エリーがやや皮肉を込めて言うが、仮にも使者に立つ者であるならば、それ位の知識はあるだろう。
「使者を迎えに参ります」
クヌートが席を立つ。
敵の本隊にも動きは無いらしく、アーレイの爆発音も無く戦場には風の音しかしないと思ったら、後ろからさっきの軍監共が戻って来た。
「シルディア殿下、敵が降伏を申し入れて来たらしいので、我々も立ち会わせて頂く・・・が宜しいでしょうか」
軍監(其の1から8)が偉そうに言うが、『大公国公女への口の利き方も知らぬのか』と言いかけたら、途中で口調が変わった。
「降伏の立ち合いは軍監の職務、もちろん構いません。
ただし、一切の口出しは無用、これを破った場合には直ちに退席して頂く、宜しいなオベール伯爵」
私は鞘ごとサーベルを腰から外すと石突を地面に突き立てオベール伯爵を睨む。
「承知致しております。シルディア殿下」
オベール伯爵が一歩下がって片膝を付いた騎士の礼を行うと軍監(其の1から8)もそれに従がい、騎士の礼を取ったので、まあ良しとしよう。
◆ ◆ ◆ ◆
「お連れ致しました、シルディア殿下」
クヌート3人を連れて来ると使者は私から5メートルは離れて地面に両膝をついて頭を地面に擦り付ける。
背後の軍監から、『蛮族らしい』という囁きが聞こえたが、オベール伯爵が囁いた者を黙らした。
(それにしても蛮族の礼らしいが、奇妙な習慣ね。確かに最上級の礼と言われればそうなのだろうけど、人としての尊厳としてはどうなのだろう)
「シルディア殿下、この者から書簡を預かっております」
クヌートがエリーに書簡を渡す。
「エリー、読め」
「はい、シルディア殿下」
「自分事、アキム・アレクセイはアキム族の族長として、シルディア・フォン・クロスロード大公国公女殿下に全面降伏する。
これが受け入れられた場合、アキム族はシルディア殿下に絶対の忠誠を誓う。
その証として、族長アキム・アレクセイを人質としてシルディア殿下に預け、アキム族の持つ全ての領地をシルディア殿下の保護の下に置く」
族長自らが人質となり、全ての領地とはこれは又随分に思い切ったわね。
それにしても降伏の相手が私になっているのが微妙な心境を表しているわね。
「もう一通あります。
これはヒルダ様からシルディア殿下宛のお手紙です」
「構わない読め」
「はい。
親愛なるお姉様へ
そこにいるアキム・アレクセイは、統率力、知力、胆力共に申し分なく、お姉様の王道に必ず役に立つ人物である事をヒルデガルト・フォン・クロスロードとして保証致します。
重ねて、我が功績の全てをもってアキム・アレクセイとアキム族の助命を嘆願致します。
お姉を心からお慕いしている妹ヒルダより。
あと、髪の毛が一房入っております」
私は、エリーから手紙をなるべく冷静を装って受け取ると髪の毛の香りをナチュラルに嗅ぐ。
『ああ、ヒルダだ』この香りを私が忘れるはずがない。
その行為に
「ナチュラルに臭いを嗅いで幸せそうな顔をしないで下さい」とエリー。
「シルディア様の笑顔が眩しすぎる。ブルック先輩の果報者」とクヌート。
「なんて素敵なシルディア殿下のお姿。僕もフローラ姉様の髪の毛が欲しい」と私と同じ倒錯の扉を開けてしまったアンゼルム。
また、『ヤラカシてしまった』と思ったけれど、幸いにして額を地面に押し付けているアレクセイ達には私と司令部の醜態は見えていない。
軍監共には見られたけれど、私の評判が下がるだけであれば、まあ良いわ。
「クヌート、降伏の使者達に席を用意せよ。会談を行なう」
「はっ! ただちに」
クヌートは使者達3人と私とエリー、アンゼルムの席を即座に用意させ、テーブルにお茶まで用意する。
一方、自分は仁王立ちで私の背後に立つ。
そして自分の背後に軍監達10人を屏風代わりに立たせている。
(軍監を屏風代わりに使うなんて、クヌートもブルックと同じく結構お茶目なのね)
クヌートの悪戯に本来なら緊張する降伏の使者達との交渉に私は笑顔で余裕をもって臨む事が出来た。
(ブルックより弟子のクヌートの方がシャレが解っているんじゃない)
同日同時刻にブルックがくしゃみを連発したと言う様な些細な記録はさすがのシルディ機関の諜報網の記録にも無い。
ウノ族の総人口はおよそ100万。
うち80万はイネス地方に居住し、20万はウノシルディスに居住しています。
その内、アキムは全体で20万程ですが半数はウノシルディスに居住しています。
今回のウノ族は総兵力10万でウノシルディスに侵攻しましたが、その内4万はアキム族でそれはイネス領に居住するアキム族の成人男性のほぼ総数に相当します。
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