ウノシルディス平定4
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
クヌートが士官候補生を別の場所に待機させた後、バルタザール殿を先頭に軍監10人が到着したのは、ハイデ隊の攻撃が佳境を迎えた時だった。
正面と左翼からは散発的な爆発音、右翼からは間断のない爆発音が戦場に響き渡る。
「バルタザール殿、お久しぶりです。相当無理をした行軍だったのでは無いですか」
私は右手を差し出してバルタザール殿に握手を求める。
私の背後では地上の地獄が実現しつつあるが、バルタザール殿にも私にも最早お馴染みの光景と成ってしまっている、ただ今回は私達が風下になっているので、硝煙の臭いを強く感じるが、戦場特有の匂いは余りしない。
「確かに強行軍ではあったが、ブルック殿が補給を確保していてくれたので、随分楽な行軍だったぞ。
それにシルディア殿下が使用した宿泊陣地が使えたので宿営地を作る手間が省けたのが大きかった」
援軍の士官候補生1000人はどうしても戦闘を体験させてやりたかったので出来る限りの便宜を図ったのが役にたったらしい。
余計な軍監10人もやっぱり付いて来てしまったか。
「見ての通り、現在我が軍は戦闘中である。
よって、自己紹介を行っている時間は無い。
戦況についての質問があれば、戦闘指揮に影響が無い限り答えるので、それで了承願いたい」
私はバルタザール殿に付いてきた軍監達に話しかけるが、半分は、目の前でアーレイによって引き起こされる惨劇とそろそろ漂って来た戦場特有の臭いに意識が奪われている。
(それにしても大公国公爵公女である私の前で一人を除き貴族の礼も行わないとは、いくら戦場とは言っても不敬ではないかしら。フローラやヒルダが居たらタダじゃ済まないわよ。それとも私に威厳が足りないのかしら)
「かしこまりました。シルディア殿下。
早速ですが敵味方の戦力を教えて頂きたい」
挨拶も無しにいきなり質問か、それにしてもコイツは、味方の戦力も把握していないとか、軍監として無能すぎる。
「よかろう、そこのテーブルを見てもらえれば大凡の敵味方の戦況は明らかである。
新たに戦局が変わった場合はそこに書き加えて行く」
特に隠す事では無いので、いきなりの塩対応に成らない程度にサービスはして置く。
帝国では使用していない黒板を使った戦況図に感心したらしい軍監が2名、後の者はその利点を理解出来ないらしい。
「4万の敵に2000騎で正面から挑まれるのか?」
コイツは既に戦闘が始まっているのに何を呑気な事を言っているのか。
『挑む』のでは無い、現に『挑んでいる』のだ。
だいたい『挑む』とは戦闘用語ではない。
1キロ近く離れていると言っても砂塵を巻上げ吹き飛んで行く敵陣を見ていながら戦争をスポーツと勘違いしているのではないか。
「4万と言っても1万は、あのように馬防柵に隠れて出てこない。
残り3万は逃げ支度で忙しく、戦意に乏しい。
我々ならば戦力的に問題は無い」
軍監共は半分も私の言葉を信じていない。
「ここに予備兵力10個戦隊を残してあるのは、予備投入兵力ですか」
正面攻撃しか考えられないのか、迂回して側背を突く決戦兵力以外の何に見えるのだろうか。
まるで初心者の戦術教室だが、初めてまともな質問を受けた気がする。
「それは予備兵力では無い、敵の側背を突く為の決戦兵力だ。
現在、敵右翼の防御陣地を削っている、あと半時もあれば、削り切れるであろう。
そうなったら、本陣も敵側背に移動し全軍で突撃を行ない、一気に敵軍を壊滅させる」
決戦兵力と聞いて軍監の半分はポカンと口を開けて意識が飛んでいる様子。
こいつらは、戦場に何をしに来たんだ。
エリーもクヌートもアンゼムルも呆れ果てた表情。
(年齢から考えて先の敗戦に参加しなかった、あるいは能力的にさせなかった武官。そして恐らく後者であろう)
「その攻撃には私がつれてきた士官候補生も是非参加させて頂きたい」
主従が逆だ、お前が士官候補生に付いて来ただけだろう。
(コイツが私の部下なら、決闘してでも追い出してやる)
「当然だ、この戦場に間に合った以上、物見遊山させている余裕は無い」
ここに来た士官候補生は、ウノシルディス放棄の軍中央の決定を良しとせず、クロスロードの騎士誇りに掛けて決死の覚悟で私の呼びかけに応じてくれた者達。
帝国の貴族の価値観としては愚か者、しかしクロスロードに於いては、貴族の貴族たる所以を知る熱き心を持った私が愛すべき騎士達。
私自身が彼らの指揮を執って戦ってこそ、彼らの決死の決意に報いる事が出来る。
「ありがとうございます。
私に彼らの指揮はお任せ下さい。
必ずやウノ族に勝利してみせます」
お前が彼らを率いるだと?
お前如きに彼らの指揮をこの私が任せる理由が無かろう。
一体何を勘違いしているのだこの男は?
エリー達が私に抑えて抑えてと必死に訴えて来る。
でもソロソロ私の限界は近いわよ。
「貴官は士官候補生の教官か? まさかその年で生徒ではあるまい」
エリーとクヌート、アンゼルムは完全に軍監を敵と認定した私の声を聞いて今にも逃げ出しそうな顔をしている。
もし逃げたら、それは敵前逃亡よ・・・・・あれ?この場合の敵って誰なのよ。
私の呼びかけと言うのは、例のあれです。
『私の最後の願いは、一掴みで良い、我らの血が流れた土をいつの日か持ち帰って欲しい』
改めて読んでも『中2』ですよね~。
しかし、この時代は貴族や騎士が闊歩している時代です。
貴族の頂点である大公国令嬢がその誇りを守る為に決死の覚悟の出陣を決意したならば、
血気盛んな若者は後先を考えず突っ走ってしまうものなのです。
まして、今回先陣を切るのは黒髪も美しい愛の女神と氷の女王の両方の微笑みを持つ絶世の美女。
その美女が戦旗を掲げて先陣を切る祖国防衛戦ともなれば、戦死したとしても自分の名前は一族の誉として語り継がれます。
うだつが上がらない貴族の次男や三男にとっては、命を掛けるに値する名誉なのです。
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