ウノシルディス平定3
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「全戦隊、戦闘配置完了です」
「こちらの配置が終わるまで、ほとんど動きが無かったわね」
私の言葉にクヌートが頷く。
「はいシルディ様。動きがあったのは馬防柵の向こうの本隊だけです」
クヌートが本陣から約1キロ位離れた場所に築かれた防御陣地から更に後方1キロ位離れた所に居座る3万人程の敵本体を指さす。
「クヌート、貴方がここにきてから何隻くらい渡し舟は動いている?」
私は望遠鏡から目を外してクヌートに向かい合って尋ねる。
「約30分に50隻程度が出発し、50隻程度が戻って来ました。
1隻に20名程度乗っているので、1000人程が撤退した感じです。
望遠鏡で見ている限りでは人のみを運んでいる様で、物資や家畜は運ばれていません」
クヌートの説明は簡潔にして明瞭、さすが首席卒業。
「ま~あ作戦通りに行きましょう。ハイデ、エルンスト、敵防御陣に対し前進を開始。
200メートル以内には接近しない様に、但し右翼の敵陣は完全につぶして下さい。
攻撃は右翼から始め、中央と左翼は牽制に留める事」
「「イェス! シルディア!!」」
ハイデ率いる10個戦隊が幅5キロ位の横隊陣形で前進を始める。
約1000騎の騎馬が一斉に動き始めると、地鳴りの様な音がする。
この地鳴りの音だけでも、塹壕に籠る兵には恐怖であろう。
「各戦隊の間隔は500メートル位かしら」
私は各隊の様子を望遠鏡で確認しながらクヌートに確認する。
「はい、シルディア様。
500メートルの間隔が援護射撃の点からも、突撃騎兵の援護の点から適切です」
部隊の再編成を指揮したクヌートが指差しながら答える。
「命の危険を冒して、的の後ろで観察した甲斐があったわね。
・・・本体の奥の方に見える塔は教会・・・村なのかしら」
私はいつもの作戦テーブル代わりの黒板に丸印を付ける。
「はい、カロッサ村です。人口は500人以下、牧羊を主な産業とするカロッサ男爵の領地です」
クヌートが私の付けた丸印の下に村の名前を書く。
「カロッサ男爵というとカタリナの副官のクララの領地と言う事?」
「はい、その通りです。ちなみにカロッサ男爵は我がアッカーマン伯爵家の寄子であります」
「そう、それではクヌートはこの辺りの地理には明るいの?」
「申し訳ございません、自分は妾の子でしてウノシルディスの館と帝国の首都しか詳しくありません。
ここに来たのも今回が初めてであります」
「そう、それは仕方ない事ね、別に貴方が恥じ入る事ではないわ」
まあ、貴族にはよくある話だけど、アッカーマン伯爵は良くできた人物の様に思えたが。
「ありがとうございます」
「一応確認するけど、アッカーマン伯爵を公都でお見掛けした様に思うけど間違いない?」
「はい、父は侵攻当時は公都で公務を行っていたはずです。
ウノシルディスの領地は兄が実質的に管理していおり、領民の避難も兄が中心となって行いました」
アッカーマン家の領地経営は、上手く回っているようだ。
「貴方はウノシルディス城で何をしていたの?」
「ウノシルディス城での避難民の保護とブルック先輩のお手伝いをしておりました」
兄弟で力を合わせて貴族としての仕事をきちんとしていた様ね。
「そう、それはご苦労様。つくずく悪い先輩に捕まったわね」
ちょこっとカマを掛けて見たけど、ブルックに対する愚痴の一つも聞けるだろうか。
「そんな事は有りません。ブルック先輩は尊敬の出来る素晴らしい先輩です」
クヌートは姿勢を正して真っすぐに私を見つめて言う。
その目に揺らぎや迷いは感じられない。
「そう、婚約者としてブルックが褒められるのは素直に嬉しいわ。ありがとう」
私が素直に礼を述べると、クヌートは真っ赤になって俯いてしまった。
『その笑顔、男として心が抉られる』とクヌートが呟く
『あの笑顔は反則です』とアンゼルム
『無自覚にやっている所が悪女ですわ』などとエリーが呟くのが聞こえる。
「もうすぐ攻撃開始です。貴方達、もう少し緊張感を持ちなさい」
「「イエス! シルディア!!」」
全く、返事だけは良いんだから。
と言いながらも4万の敵に2000で戦いを挑もうとしているのだから、普通なら緊張でガチガチでも仕方ないにも関わらず、普段と変わらない会話が成り立つ私の幹部達は素晴らしい。
◆ ◆ ◆ ◆
「ハイデ隊から白十字緑旗、攻撃準備完了です」
伝令部隊長がハイデ隊からの状況を報告する。
「これぐらいの広さの戦場だと、旗信号で十分ね。攻撃開始、白十字赤旗」
「攻撃開始。白十字赤旗。了解致しました」
伝令部隊長がテキパキと指示をだす。
「さて、敵の前衛は動くかしら」
私は新しいコーヒーを銀で出来たカップに注ぎながら前衛の動きを注視しようとした。
「報告!バルタザール殿の援軍が到着致しました。
兵数1000。兵種、槍騎兵。軍監10人を伴います」
「バルタザール殿と軍監は此処に案内する様に。
援軍は我が軍の右翼後方500メートルに集結して休息する様に。
クヌート頼める?」
「了解致しました」
「バルタザール殿と援軍は歓迎だけど、軍監もこのタイミングで来るとは、厄介な予感しかしない。
念の為、サーベルは指揮刀に変えておきましょう。
気分で軍監の首を飛ばすと後が厄介だわ」
独り言になっていたらしい。
エリーとアンゼルムの顔が引き攣って見えるがきっと気のせいね。
私の幹部は私の独り言程度でそんなテンプレな反応をする程単純じゃない。(きっと)
確実な伝達方法が無い為に通信手段には苦労しています。
基本的な命令は命令書で行なっていますが、咄嗟の命令変更には、鐘やら笛やら旗やらラッパやら色々試しています。
長距離通信には、腕木通信の運用が始まっていますが、戦場では使えません。
仕方がないので、各戦隊の戦隊長に艦船の艦長並みの命令権を与え、戦場での急変に対応する事にしています。
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