シルディの騎士団12
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
俺達二人を率いて、ブルック先輩はシルディア殿下の指揮所に向かう。
「エルンスト、お前一昨日の謁見の時はどうだった?」
雑談でもしていないと怖くて仕方がない。
「どうもこうも、名前を名乗って「歓迎します」と「貴君にはウノシルディス槍騎兵の取りまとめを任せるつもりです」のお言葉を頂いてそれで終わり。お前と一緒だよ」
「そうだったよな。会話するにも話題が無いもの」
俺達二人は共に溜息をつく。
まあ、槍騎兵の取りまとめについては良い、爵位も能力も俺達以外に取りまとめられる人間はバルタザール殿しかいない。
バルタザール殿はこの後に合流する帝国士官学校のヒヨッ子共の再教育を行うそうだ。
「さ~着いたぞ、浪費の女帝のアジトだ。二人とも帰りはちゃんと自分の脚で歩いて帰れよ」
ブルック先輩、司令部を悪の組織みたいに言うのは不味いと思うのですが
「シルディア!」
殿下を呼び捨てにして、ブルック先輩は指揮所への階段を上る。
「あっ、ブルック」
『あっマズイ』という大公家の令嬢らしからぬ豊かな表情でシルディア殿下がブルック先輩と俺達二人を見る。
(これは案外俺達は後ろに立っているだけでいいんじゃないか)
「この二人もお前に質問があるそうだから連れて来た」
(ブルック先輩、俺達一言もそんな事、一言も言ってませんけど)
「クヌート・フォン・アッカーマン殿、エルンスト・フォン・バーデン殿よく来てくれました。
ブルックから次のウノシルディスの軍を背負って立つ逸材と聞いています。
二人には正式にこの後、ウノシルディスの槍騎兵の総部隊長と副総部隊長に任命します。
我が軍の幹部である以上、私に対し貴族的敬語は不要、勿論直答を許可します。
又、軍務に関する事に関しては、不敬罪は問いません。
それで、今日はどの様な質問なのかしら」
一瞬で冷静さを取り戻し、公爵令嬢としての威厳と落ち着きを感じるが、どこか芝居じみていて指導者の迫力もカリスマ性も感じない。
ただ単に上品な公爵令嬢のお嬢様でしかない。
そういえば、後ろに立つエリー様とハイデ殿、カタリナ殿もワザとらしい能面を被っている様に見える。
「二人の質問には後で答えてもらうとして、俺から質問していいかな?」
言葉は丁寧だけれどもブルック先輩に婚約者を許す気は無さそうだ。
そして、ブルック先輩の追求の矛先が向いた瞬間シルディア殿下の演技が破綻した。
「え~~と、ええ何かしら」
完全にシルディア殿下はブルック先輩が何が質問されるか判っているらしい。
はぐらかそうとして完全に失敗、貴族の嗜みとしてのポーカーフェイスも崩壊している。
後ろのエリー様は首を横に振っているが、これは「またやらかしました」と言う感じに見える。
ハイデ殿とカタリナ殿はまるで見当がついていないらしい。
「午前中の射撃訓練で使用した通常ボルトの数を知っているか?」
ブルック先輩、公爵令嬢にその口調はヤバイと思います、いくら婚約者でも。
「400人で10射したから4000本位かしら・・・」
キッチリ数字を覚えているのに、はぐらかそうとしているのが丸わかりのシルディア殿下。
「そう、その4000本の中で回収出来たのは何本だと思う?」
ブルック先輩、もう少し、もう少し婚約者に優しく。不敬案件すれすれです、俺達の胃が持ちません。
「3500本位? かしら」
シルディア殿下の目が完全に泳いでいる。
「そうだね、君が最後に実弾射撃をしなければ、それぐらいは回収出来たね」
ここまで聞いてハイデ殿やカタリナ殿もブルック先輩の怒りの原因が解ったらしい、勿論俺達も。
だが、俺達は気づいてしまった、ブルック先輩が実は全く怒っていない事に。
(あの先輩が、こんなに判りやすく感情を表に出す訳がない。つまりこれは二人のジャレ合い。エルンストも気づいたらしい。俺達には二人のジャレ合いを楽しむ余裕が出て来た)
「(ごめんなさい)解りました、今後、気を付けます」
大公国公女の立場もあり、謝罪の言葉は無いがもし犬だったら耳をペタンと下げてシュンとしてた感じで、全身で「ごめんなさい」の謝罪のオーラが溢れ出ているシルディア殿下。
(これは反則です。シルディア殿下。女性として可愛過ぎます。オーバーキルです。ズキューンです)
学園で紅の戦旗を掲げ、「我に命を預けよ」と全生徒の支持を得た統率力。
ウノ族10万に「我が名を覚えよ。貴様らを殲滅する者なり」と戦場の名乗りを上げる胆力。
敵とは言え、4万の人間を半日で消滅させた圧倒的軍事力を誇る殺戮軍団の氷の指揮官。
そして婚約者の前でひどく可愛いい女性を演じるシルディア殿下。
彼女の実績と能力は主君として仕えるのに全く問題は無い。
そして、まだまだ俺達には計り知れない数多くの魅力が出て来そうだ。
「分かったなら良い。クヌート、エルンスト。お前達の質問を言ってみろ」
(え~~この状況で丸投げですか。これって、卒業試験の3日前に三徹の仕事を振る以上の無茶振りじゃないですか?)
自慢の学園の生徒の騎馬運動が綺麗に決まらなかった事で、実はシルディは相当怒っています。
ですが、明日からの出撃前に戦隊長やハイデやカタリナを叱る訳にも行かず、フラストレーションはMAXです。
当初から、この事態を予想していたブルックは、観客の中にサクラを仕組み、もしシルディの暴走が始まってしまったらそれを情報操作で良い様に誘導する予定でした。
そしてシルデイと直接面識が無いクヌート、エルンストにシルディの人となりを理解させるべく、即興でシルデイとジャレ合ってみたわけです。
この作品が面白いと思われましたら下の★をクリックしていただける作者の励みになります。
又、ご意見・感想なども頂けましたら嬉しいです。




