シルディの騎士団11
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「ま~冗談はさておき。
後退の棹立ち一転方向転換は綺麗に決まったが、停止が決まらなかったな・・・」
「クヌート、お前が・・」
ブルック先輩が全てを言う前に
「戦隊長の行動に従います」
俺は答えた。
侯爵家の次期当主の発言を遮る行為に周りから称賛とも非難とも取れる視線が集まる。
(不敬罪には問わないのだから問題あるまい)
「うむ・・・・その通りだ。
実戦では本陣からの笛や鐘の合図が届かない事の方が多いと言うか、まず届かない。
今回戦隊を戦闘の基本単位にしたのは、それを考慮しての事だ。
本陣からの指示が届かない場合は戦隊長が全ての命令を下す。
従って、他の戦隊の動きが見えても、戦隊長が後退しているのであれば、その戦隊の騎兵は迷わず戦隊長に従う様にするのが正しい」
「もう一度確認します。突撃騎兵、護衛騎兵の分隊長が戦隊長の命令違反を指摘するのもダメなのでありますか」
俺は分隊長を強調する事で、戦隊内での命令の規律の重視を強調する。
「突撃騎兵、護衛騎兵の分隊長が指摘を行うのは構わない、しかし命令は絶対だ。
戦隊長の本陣からの命令違反は結果によっては責任を問われない。
突撃騎兵、護衛騎兵は戦隊長の命令に従っていれば良い」
「もう一度確認させて下さい。それが、部隊を全滅させる命令であってもですか」
「時に戦隊長は部隊の全滅を覚悟の上で命令を行う場合もある。
戦隊長にはその権限が与えられている。
戦隊長が部隊の全滅を覚悟した上で命令を下したのであれば、その命令は遂行されなければならない。
その命令を取り消せるのはより上位の司令部の命令だけだ」
「分りました。繰り返し繰り返し同じ質問を致しまして申し訳在りませんでした」
ここまで俺が確認したらのだから、もう命令の重みを誤解している奴は此処には居ないだろう。
「いや、構わない、むしろ良く聞いてくれた。
これまでの騎士団との戦いとは最も異なる所だから、今は納得するまで質問してくれて構わない。
それはそうと、一斉斉射のはずが、戦隊毎の射撃になった様だが・・・・不味いな」
ブルック先輩が耳の横を掻きながら言う。
「はい、3戦隊程が先走って射撃を行いました。
・・・不味いのですか?」
俺にはまだ何が不味いのかがハッキリしない。
「エルンスト、何が不味いかわかるか?」
仕方が無いので親友の意見を求める。
「笛による本陣からの命令の伝達ミスですね。
その証拠に本陣から戦隊に向けて伝令が走りました。
命令の齟齬を無くす為と考えます」
我が親友よ、俺の疑問はそこじゃない。
「・・・エルンストの言う通りだな。
この様に戦隊長の判断が間違えていた場合は、本陣から伝令が送られる。
それによって間違った判断は訂正され、部隊独自の判断があった場合は、本陣にその情報が伝えられる」
それが証拠にブルック先輩の解説も上っ調子で形式的なものだ。
きっと何か他の事を考えている。
「本陣から直接敵が見えない場合もそれならば有効に命令機能が動きますね」
エルンストよ、もう芝居の時間はどうやら終わったらしいぞ。
「ああ、その通りだが、・・・・本陣に『実弾発射の警告旗』が揚がった・・・嗚呼ヤッパりか。
よく聞け! 俺が合図したら、観測窓から離れ耳を抑え、口を開けてしゃがみ込め。
この観測室はアーレイの直撃にも耐えられるから、安心しろ。
(狙われない限りは)
わかったか!」
さっきまでの演習の時とは違い、戦闘指揮の口調に変わった。
「しかし、ブルック先輩。
せめて訓練に使用したボルトを回収した後にするべきでは」
エルンストがこの状況で意見を述べる。
「それはそうだが、シルディがそんな貧乏くさい事をする訳がない。覚えておけ」
「「はい、ブルクハルト様。わかりました!!」」
観測室の一同が敬礼しながら答える。
(お前ら、一体何が『わかった』と言うのか、最後の言葉だけなら問題だぞ)
戦隊長がサーベルを抜き、シルディア殿下の合図を待っている。
サーベルと勲章のキラメキがとても美しい。
貴族や平民の観客席から歓声が沸き起こる。
たっぷりと勿体を付けてシルディア殿下が騎士台の前に進みサーベルを引き抜く。
「今だ、しゃがめ! 耳を抑えろ、口を開けろ。腰を抜かすなよ」
ブルック先輩が号令を出すと皆が命令に素直に従う。
(腰を抜かすなって、気構えでどうにかなるものなのか?)
「2呼吸程か、割と長いな」
そう言った瞬間、爆音が観測室に響き渡り、熱い風が吹き抜け、埃が舞い散る。
倒れている者や鼻から血を出している者はいないが、腰を抜かした奴や何かの液体を溢した奴はいるが、放って置こう、武士の情けだ。
「良し、もう窓から覗いてもいいぞ」
肩に落ちたホコリを叩きながら、ブルック先輩がヤレヤレと言う感じで言う。
「クヌート、的が無いぞ」
真っ先に外を確認したエルンスト。
「そりゃ~あれだけの爆発だからな」
俺はわざと呑気な風で同じ様に覗き窓から外を見る。
「う~~ん、確かに土台の土嚢以外は木端微塵、見事に何も無いな」
まさに木端微塵、跡形も無く5メートル四方の的は消え去っていた。
あれほど歓声が上がっていた観客席もアーレの威力と音の迫力に静まり返っている。
しかし・・・
「シルディア殿下万歳!!」 「クロスロード万歳!!」の声が一度上がると、
万歳と歓声に再び包まれた。
「諸君、観光は終りだ。この後15時から予定通りウノシルディス解放軍の結成式がある。
全員この演習場に完全装備、出撃準備の上で集合する事。
出撃は明日だが、今夜は宿泊所に泊まる事になる。
何か質問は・・・・・無ければ解散」
「クヌート、エルンスト付いてこいシルディア殿下に一言文句を言いに行く」
今日一番真面目な声で言うブルック先輩に俺達は震え上がった。
「あの、自分も準備があるのですが・・・」
「クヌートと同じく自分も・・・・」
ささやかな抵抗を試みる俺達。
「命令は絶対だ。拒否権は無い」
ですよね~、判っていました。
「イェス!! ブルックハルト」
帝国式の最敬礼で俺達の戦いは始まった。
ウノシルディス領には1つの侯爵家と3つの伯爵家(ブルマイスター家、アッカーマン家、バーデン家)と数家の子爵家、多数の男爵家、公国騎士で成り立っています。
領土分割的には30%が侯爵家30%が伯爵家、残りを40%が大公国公爵家領で子爵が代官として赴任して20家程の男爵家が統治しています。
大公国公爵家領の騎士は子爵家に領地を預ける事で領地の所有権を保証して貰い、その保証料として税金と労役を課せられています(新興公国騎士)
領地を持たず侯爵家や伯爵家に雇われる事で禄を得ている騎士も大勢います(在来騎士)
他の領地に比べて大公国領が多いのは、200年前にこの地方をシルディス女王がクロスロード王国に合併し王国の騎士を多数配置した事によります。
(ウノシルディス=シルディス(女王)が合併した土地)
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