シルディの騎士団10
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
ブルック先輩の説明に不安は増すが命の心配までは多分なかろうと言う事でシルディア殿下の騎士団の演習を見学する。
「貴族や一般人の見学も尋常では無い数ですね」
俺達とは違い安全な観客席には10万人位の観客人が集まっている。
(今、このウノシルディスには60万人の人間が集まっているが、それにしてもこれ程の人数が集まるのはクロスロード大公国建国以来なんじゃないか)
「皆に説明しておく。
今回の演習ではこれまでの部隊編成をやめ、10騎の弓騎兵を中心とした30騎の直衛槍騎兵と60騎の突撃槍騎兵による戦隊単位の動きの訓練を行う。
何か疑問に思う事があれば、遠慮なく言って欲しい。
俺は侯爵家次期当主だが、この観測室での言動については、不敬罪は一切適用しない」
「ブルック先輩良いですか」
質問の作法が判らないので、取りあえず敬礼しておく。
「何だクヌート」
「槍騎兵の指揮、特に突撃槍騎兵の指揮は誰が行うのですか」
俺の質問に顎に手を当て
「突撃槍騎兵・・・長いな、今からは突撃騎兵、直衛騎兵と言う。
それで、突撃騎兵の現場指揮は諸君らが行う事になる。
ただし、大まかな指揮、突撃、戻れの二つの命令に関しては戦隊長が行う」
(『進め』と『下がれ』だけか、まあ細かい指示をされても戦場ではあまり意味は無いが、犬並みだな)
「女の指揮に従うのでありますか?」
エルンストもブルック先輩が俺達を特等席に呼んだ理由が解ったらしい。
「エルンスト、彼女達の前でもう一度それを言う勇気があるか?」
ブルック先輩の微笑には威嚇の効果がある。
「いえ、自分の心得違いでありました。
女性であろうが男性であろうが、戦隊長の指揮に従います」
今日の分の仕事はしましたよと言う感じのエルンスト。
「諸君達も不満に思うかもしれないが、彼女達の左腹の勲章と、肩から掛けた勲章のリボンを見ろ。
戦隊長は全員男爵家の当主だ。
貴族世界の常識として、例え男爵家であっても当主とあれば、俺の様に侯爵家の次期当主であっても一定の敬意を払う必要がある。
まして当主でもない諸君達であれば、逆らう事や命令違反は軍規からも貴族の慣習からもありえない」
成程、本来別である貴族社会のルールと軍隊のルールを上手く織り込んで納得させる訳ですね。
「ですが、戦隊長の指揮に誤りがあった場合はどうするのですか」
「クヌート、貴様は戦場での直属の指揮官の指揮に不満があれば、指揮官の命令に意見をするのか」
「いえ、不満ではありません、明らかな誤りがあった場合のお話です」
「貴様は帝国の士官学校で何を学んで来た? 貴様の質問に対し貴様が正しいと思う対応を述べよ」
完全に士官学校時代のブルック先輩に戻っている。
「誤りについては聞きます。
直すべき点があれば直ちに修正しますが、命令は命令として実行させます。
実行しない場合は抗命罪として処刑します」
俺は、士官学校時代にブルック先輩から教わった事をそっくりそのまま復唱する。
「それで良い。
意見としては受け入れるが、命令は実行されなければならない。
戦隊長が『陣地の死守』を命じたのであれば、部隊が壊滅し、戦闘不能になるまで死守するのが軍隊だ」
「わかりました」
ブルック先輩、俺も今日の分の仕事は十分に果たしましたよ。
「さて、典礼演技も終わっていよいよ実戦訓練だ。
弓騎兵は基本的に敵から200メートル以内には近づかない。
エルンスト、何故かわかるか?」
「はっ、アーレイの射程は800メートルもあるので、それ以上近づく意味が無いからであります。
それと200メートル以内に接近するとロングボウの有効射程圏内に入ります」
「完璧だ、後でビールを奢ろう」
「ありがたき幸せ」
(うわ~~~定番通りの展開。脚本家としての才能はブルック先輩は無いかもしれない)
「だから、200メートル以内の敵の対応は、護衛騎兵の仕事になる。
彼女達のボルト(矢)は200メートルより遠い距離だと貴様らの頭の上を越えて行く。
だから同士討ちの心配は無いから、護衛騎兵は存分に戦うが良い。
クヌート、この時お前が200メートル以内に敵が侵入した時、突撃騎兵をどう動かす?」
「戦隊長の指揮を待たずして、200メートル以内に侵入した敵を掃討します」
「それで良い。
敵を200メートル以内に近づけない事が突撃騎兵、護衛騎兵の区別無く、最優先の任務だ」
「わかりました、200メートル以内には敵を近づけさせません」
(下手な芝居だが、ここにいる皆に何をすれば良いのかが明らかになっただろう)
「さて、いよいよ最後の仕上げだ、全部隊が一斉に前進しているだろう」
「はい、見事な騎兵運用です。帝国の騎馬隊でもここまで美しくは揃いません」
「そら、『全軍一斉引き鐘だ』」
「素晴らしい。馬を竿立たせての一点方向転換は、ウノシルディスの騎士でも今は出来る者は少数です。
馬がバランスを崩して乗りかかってくれば、騎士の命はありませんから」
「エルンスト、もし実戦で『全軍一斉引き鐘」が鳴らされたら、護衛騎兵の対応は?」
「敵が至近にいた場合は、弓騎兵が安全な距離を後退するまで敵を足止めします」
「突撃騎兵の対応は?」
「敵が400から300メートル以内に居た場合は、突撃して掃討です。
いない場合は弓騎兵を守って後退です」
「突撃すれば命令に背く事になるぞ」
「そうはなりません。
命令は全軍の後退ですから敵が至近にいた場合にこれを掃討するのは後退の支援です。
ですから、突撃したとしても命令違反にはなりません」
「正解だ、さすが幻の士官学校主席と次席、卒業試験で白紙答案さえ出さなければ帝国のエリートで卒業出来たのに、悪い先輩に引掛かったな」
「「それをブルック先輩が言いますか」」
一同から本気の忍び笑いが起きた。
帝国が最盛期の時は、近隣の諸国から士官学校に留学する者を大いに受け容れていました。
槍騎兵が最大兵力であった当時、大規模な槍騎兵を養えるのは諸国を圧倒する帝国の経済力しかなく、基本的に数が力であった当時、帝国の持つ槍騎兵隊に互する兵力を周辺諸国が持つ事はあり得なかったからです。
帝国としては帝国の力を周辺諸国の豪族・蛮族に見せつけ、反抗する気力を削ぐ事が上策を考えていました。
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