シルディの騎士団8
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「ハイデ、カタリナ、部隊を前進」
短い笛が2回吹き流される。
号令に合わせて総勢約400名の弓騎兵が前進を始める。
ただ、10騎ずつの戦隊で一団となっている所がこれまでの学園での典礼訓練と大きく異なる。
「やはり、見栄えと言う点では横一列の方が見栄えが良いわね」
貴族との会見や叙爵式、戦勝舞踏会と2日続けての儀式三昧に飽きた私は久しぶりの騎乗訓練に浮かれているらしい。
「シルディ様、これは実戦訓練ですから、典礼訓練とは違います」
ハイデが私の軽口に真面目に答える。
(これもハイデの個性ね。カタリナなら軽口で返しそうだけど)
「そうね、典礼と実戦は違う。貴方も実戦では『優雅に、華麗に、美しく、ブチ込んでやる』と発破を掛けていたものね」
ちょっと意地悪かな?
「そんな時もありましたが、もうあの様な下品な発破をしなくても私の部隊は大丈夫です。
あれからみんな成長しましたから」
演習を隣で見ているアンゼルムの方がハイデの迫力にあたふたしている様に見える。
「そうね、頑張って成長して行きましょう」
「はい、シルディ様。一層努力致します」
(ハイデ、部下達への配慮も忘れないでね)とカタリナ。
(勿論です。みんなで努力して強くなるのです)とハイデ。
(精悍な指揮官のハイデもカッコいい)とアンゼルム。
(アンゼルム様、恥ずかしいです。頑張ります)とハイデ。
(私も今度から訓練の時はなるべくブルックを傍に置いておく様にしよう)
口に出さずの考えただけなのにエリーとカタリナに何故か睨まれた。
「ハイデ、私達に見惚れているウノシルディスの騎士共と貴族、市民に私達の技量を見せつけてやりなさい。全軍一斉反転! 全力後退!」
今日の服装は、礼服では無く学園の制服、つまりアンゼルムをからかった時のあの制服である。
但し決定的に異なる点が一点、全員が子爵、男爵、あるいは公国騎士の貴族の勲章を身に付けている。
流石に勲章のリボンは乗馬の時に邪魔なので、服に縫い付けているが、右の肩から左腹に斜めに掛けられた貴族の勲章は良く目立つ、そして貴族を表す勲章が光輝く。
「はい、シルディ様。全軍一斉反転全力後退する! 引き金! 連打! 」
ハイデの命令で連絡係が、引き鐘を文字通り連打する。
前進していた部隊が、引き金に合わせて一斉に馬を竿立たせ、馬首を180度右に回し、速やかに後方に向けて疾走に移る。
馬が立ち上がった瞬間に全員の左腹の勲章がキラリと光る。
見学の騎士団と貴族から『見事!』『美しい』との言葉が洩れ、市民から歓声が上がる。
(素晴らしい、綺麗に決まった! 普通の騎士団だったら帰ったらビールを奢る所ね。夕食のデザートにケーキを出せるかしら)
「よし、ハイデ! 全軍後退停止」
ハイデの命令で連絡係が長い笛が2回吹き流す。
しかし、聞き逃した部隊があったらしく一発で全軍停止とはならなかったので、少しの間を置いて再度長い笛が2回吹かれる。
下がり過ぎた部隊にハイデとカタリナがやや怒った感じで細かい指示を出し列線を整える。
「やはり、この距離だと疾走中は全軍への号令はもう無理ね。
それにその場で停止させると馬への負担も大きい」
私にしては珍しい馬術に関する意見。
「はい、シルディ様。
疾走中は笛での号令ではどうしても聞き逃しが出ますし、これ以上陣が大きくなれば無理ですね。
それにその場で停止させるより、ゆるく円を描いて停止させた方が槍騎兵隊が加わった場合、戦隊としての秩序が保ち易そうです」
戦隊への指示を終えたカタリナが私に進言する。
「そうね、号令の方法は後で考えるとして、実戦での停止の方法はカタリナの言う方法に統一しましょう」
「はい、シルディ様」
「それでは最後に前進して斉射射撃をして午前中の訓練を終わりとします。
騎士や貴族、それに市民も見ている、しっかり決めてね」
「分りました、部隊を前進させます。ハイデ、そっちの部隊の用意はいい?」
「もう少しお待ちください。足を痛めた馬がいます」
「ハイデ、足を痛めた者は、下馬させた上で後方に下げる様に。
訓練で馬には無理をさせないで」
(私は訓練で無意識に人には無理をさせても良いと思っているらしい。『馬には』と言ってしまった)
「はい、わかりました」
再びハイデが細かい指示を出すので、少し待つ。
「この辺りの指示は各戦隊長が行う事になっているのですが、今回の訓練では何処まで許容するか統一出来ていませんでした」
「ちなみにカタリナ、これが実戦であったら?」
「戦況の状況によって分かれます。優位か不利であれば馬を大事にしますし、圧倒的不利であったら馬を使いつぶしてでも命令に従わせます」
『使いつぶしてでも』と言う強い言葉にハイデとアンゼルムがビクッとなる。
「カタリナ、貴方の判断で正解です。
私から全軍に通達しますから、今後もその方針で指揮して下さい。
しかし、やはり一斉反転全力後退は、最後の手段と考えた方が良いわね。
馬の負担が大きすぎる様です。
反転についても通常は円を描いての反転に統一しましょう」
私の言葉にハイデとアンゼルムが安心した顔をする。
(貴方達、本当に考えている事が同じなのね)
「はい、シルディ様。この後の反省会で戦隊長に徹底致します」
カタリナがメモを取りながら了解する。
「戦隊整いました。前進出来ます」
部隊への伝令から報告を受けたハイデがテキパキと言う。
「よし、ハイデ、部隊を前進させなさい」
私の命令でハイデが指示を出し、連絡係が短い笛を2回吹き流す。
全部隊が見事な戦列線を保って前進する。
左腹の勲章が光り、見学の騎士団や市民から再び歓声が上がる。
「斉射射撃用意」
短い笛の後に長い笛が2回吹かれる。
やはり3部隊程が号令を聞き損ねたらしい。
射撃体勢を取らない部隊がある。
ハイデとカタリナが指示を出すべくその部隊に伝令を飛ばす。
「もう一度、斉射射撃用意の笛を」
私の命令に従い短い笛の後に長い笛が2回吹かれる。
すると、私が予想した通り命令を取り違えて慌てて斉射を行ってしまった部隊がある。
ただ、斉射自体は間違っているのだが、400メートル先の5メートル四方の的を外すボルトは無い。
カタリアとハイデが私を見る
「もう一度、斉射射撃用意の合図を」
私は同じ命令を繰り返した。
既に誤って発射してしまった戦隊の子達が、懸命にアーレイの発射装置である大型騎乗積載型のクロスボウの再発射準備を行う。
再装填が完了した戦隊の戦隊長の一人が、頭上で両手で丸を作っているのが見える。
「あんな合図は決めてないけれど、とっさの判断ね。有効だわ。誰?」
「私の副隊長のクララです」
カタリナが自慢げに言うとハイデは少し悔しそう。
(臨機応変の対応はカタリナ隊の方が少しあるようね。ハイデ隊は隊長に似て真面目なのかしら。でも一番若い子達が集まっているからこれは仕方はないわね)
「実戦であったら待てない事もあるけど、今日は演習なので安全に行います。
全部隊の発射準備を確認して下さい。
それと副部隊は実弾、アーレイを装填する様に。
実弾発射の警告旗を掲げて下さい、忘れないでね」
私の指示にエリーが何か言いたそうだが、何を言いたいのは聞かなくてもわかる。
「・・命令を聞き違えて先走った部隊の失敗を観客に忘れさせます。
騎士団と貴族と市民にアーレイの威力を見せつけるのです。
ハイデ! カタリナ! あのを木っ端微塵、粉々にしなさい!」
私は、400メートル先の的を指さして叫ぶ。
「経費が・・・それにそのセリフ、ポーズは悪の総帥です・・・」エリーが何やら呟いている。
「「イエス! シルディア!!」」
ハイデとカタリナの二人が顔を見合わせ力強く頷くと、全部隊に伝令を飛ばす。
同時に実弾発射の警告旗が揚がる。
◆ ◆ ◆ ◆
隊の中でもベテランの副部隊長はボルトの交換程度で時間は取らない。
すると準備が終わった戦隊の戦隊長がサーベルを抜いて頭上に掲げこちらを注視する。
戦隊長が抜いたサーベルに光がキラメキ、騎士団、貴族、市民から歓声が上がる。
「準備完了の合図を今決めたの?」
私はハイデをカタリナに尋ねると
「「はい! シルディ様」」
と二人が元気よく返答して来る。
「ふふ、良くやった。
素晴らしい。
それでは発射の合図は私が行います」
そう言いながら、私は自分のサーベルを抜き頭上に掲げる。
次の攻撃に期待する観客の歓声が最高潮に達する。
そんな歓声に関係なく次の命令を待つ冷静な部隊長の視線が私に集まるのを感じる。
(別に見えている訳じゃないんだけど、感じる物は感じる。まあこれが訓練の成果ね)
「撃て!」
私がサーベルを振り降ろすと合計で400本の通常ボルトとアーレイが轟音を立てて空気を切り裂き400メートル離れた的を木っ端微塵に粉砕した。
一応今のシルディ部隊編成は、5名の分隊を2つ集めて1戦隊としています。
1戦隊10名の弓騎兵、直衛の槍騎兵が30騎、攻撃部隊が60騎の合計100騎で1戦隊を作ります。
全部で20戦隊総勢二千騎の軍勢になりますが、攻撃部隊の充足率は100%では無いので2千騎には少し足りません。
ただ、司令部要員が300騎程いますので全軍で二千騎と思って頂いて結構です。
学園を出陣した時は千騎程でしたから倍にはなりましたが、残敵6万からすると依然圧倒的劣勢です。
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