シルディの騎士団5
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「さて3人に残って貰ったわけだけど何故だか判る?」
何か非常に疲れる結論に至った会議の結果を整理する為に、私は休憩時間を作る事にした。
大公国令嬢特権を用いて。(勿論そんなものは無いので、今作った)
「いえ、解りません。戦術的なお話ですか」
この4人の中で一番平常運転中のカタリナが答える。
「ま~普通、そう考えるわよね」
3人が私が次に何を言われても対応出来る様に身構える。
「正解は・・・・アンゼルム」
「はい」
「お城を案内してくれる?」
「はっっ・・は~~~い?」
12歳らしい戸惑いの声に私は満足した。
「さあ、それでは行きましょう。
2時間位のコースでお願いします。
但し謁見の間の辺りはバルタザール殿の邪魔になるから避けてね」
「ヒルダ様が出撃されましたのに、良いのですか?」
やっぱり、アンゼルムは真っ当な精神を持つ常識人の様だ
「全然良くない。
だからヒルダやブルック、エリーやバルタザール殿には秘密にしておいてね」
今後、私の近くで使えるなら、私の無茶にも対応してもらう必要がある。
「・・・分りました。秘密ですね。
ですが、城の案内と言っても大した物はありませんよ。
この城で一番の自慢は、昨日シルディア様も入られた大浴場ですから」
とか言いながらアンゼルムが歩き始めたので着いて行く。
「浴場は駄目、今はうちの子達で大騒ぎのはずだから。
ハイデ、バルタザール殿からのプレゼントはちゃんとうちの子達に届いたかしら」
「はい、シルデイ様。ヒルダ様の出陣を見送った後に順番に使う様に通達してきました」
400人の若い女性が押し寄せて今頃温泉はすごい事になっているだろう。
後で、風呂付の侍女にお礼を出さないといけないわね。
「4日もシャワーも水浴びも無く、最後の日は初陣までしたのだから、今日キチンとお風呂に入らないと明日の叙勲式が大変な事になります。
何よりここのお風呂マッサージは最高だとヒルダ様より伺っております。
そうですよね、シルディ様」
ハイデ、急に私を攻めるのが上手くなったわね。
(ヒルダの奴、さりげなく爆弾を仕掛けて行ったわね)
「そうね、ハイデ。
あとで風呂付の侍女達にお礼をする必要があります。
宝飾品で良いと思いますが、私が忘れないように覚えておいて下さい」
『かしこまりました』と頷くハイデ、何かカチアと似た感じがする。
「あの叙勲式の後はやはり舞踏会に参加しないといけないのでしょうか」
おずぞずと言う感じのカタリナ、止めて! すれ違った侍女が『何か殿下の怒りを買ったのかしら』と言う感じで見ていたじゃない。
「カタリナ、貴方は子爵家当主になるのよ。舞踏会への参加は必須です」
私の言葉に意識が飛んだカタリナ、止めて! さっきの侍女が『殿下はやはりキツイ方らしい』と言う感じで見てるじゃない。
「ハイデ、貴方の家族はここに居ないのよね」
私は、極力優しい口調でハイデに尋ねた、『あの一見優しそうな声が上級貴族のたしなみ』とうとう口に出して呟いてるじゃない。
『一見』って、どういう意味なの、私はみんなに優しい。
どうもここは場所が悪い、先に進みましょう。
「はい、領地はもう少し北の方ですので、まだ領地にいるか学園の方に避難したと思います」
私とすれ違った侍女との高度な遣り取りには全く気付かず、ハイデが言う。
「そう、それは残念ね。
明日の舞踏会のファーストダンスを貴方のお兄様、『タクト様』でしたか、タクト様がカタリナと踊れば、そのままの流れで婚約成立でしたのにね。
ちゃんと事情を説明した手紙を送るのよ」
「かしこまりました。シルディ様」
ハイデが真面目に答え、それを聞いたカタリナの顔が少し顔を赤くなる。
◆ ◆ ◆ ◆
「シルディア様、ここがこの城で最も高い塔になります。
周囲約40キロまで見渡せます」
アンゼルムが最初に案内してくれたのは高さ40メートルはある城の見張り台。
見張りについていた兵が慌てて騎士の礼を行い下がろうとするが私はそれを手で制する。
「少しの間お邪魔します。
任務に支障の無いようにしますので、そのまま任務を続けて下さい。
何事があろうと不敬罪には問いません」
大公国殿下と広さが5メートルも無い塔の見張り台で通常通りの任務をと言われても余計に困るだろうが、私も突然湧いて出た私とフローラの婚約とか領地の国債化とか色々と問題を抱えていたので、そう言うのが精々だった。
「あれがリール川ですね、さすがにタマ河は見えませんか」
氷かけた監視塔の空気を読んで、ハイデがアンゼルムに会話を振る。
「そうですね、タマ河はここからですと60キロは離れています。
ここからはちょっと、見えません」
アンゼルムがハイデに丁寧に答える。
ん・・・ひょっとしてこれは二人のデートなの?
そして私はお邪魔虫の悪役令嬢なわけ?
「そうですか、こうして見るとウノシルディスと言うのは両方を大河に挟まれて、本当に守りやすい地形なのですね。
私の実家は海に近いここより北の方です」
ハイデはさりげなく「北ってどちらですか」などとアンゼルムを誘う。
(太陽が出ているのに北も南の判らないボンクラが私の騎士団で隊長をしている訳ないじゃない)
「それだと、方向的にはあちらになりますね。北の門の少し右の方です。
ウノシルディスは南北には300キロと長いですが、幅は最大でも80キロしかありません。
国境は長いですが、河に挟まれているので、渡河は不可能だと思っていました。
今回はそこをウノ族に突かれた訳ですが」
アンゼルムも嫌では無いらしくハイデのぶりっ子に合わせて案内する。
(あの年の男の子って、少し年上のお姉様に懐くのよね。何かの本で読んだ事がある。しかし、ハイデって意外に男の子の扱いに慣れてない?)
「いえ今より1年前程前にウノ族らしき者が我が領地に拠点を作ろうとした事がありました。
恐らく、ウノシルディス領で警戒の薄い地域を偵察していたのだと、今なら思います」
(その報告は私もブルックから受けた、遺留品から間違いなくウノ族と断定出来たけど拠点の構築前に撤退したらしい。多分、タマ河全域で警戒度を探っていたわけね)
「あの事件はやはりウノ族の盗賊ではなく、偵察だったんだね」
アンゼルムの口調が12歳の物ではない、ウノシルディス家の次期当主としての口調に変わった。
「君の御家族が重傷を負いながらも盗賊を撃退したと聞いています。
その後の回復を伺っても良いですか」
憂いを含みながらもハイデの心情を気使う細やかさ、これは本物かもしれないわね。
「ええ、お心遣いありがとう御座います。今は回復して元気にしております」
ハイデが私達には見せた事の無い笑顔をアンゼルムに向ける。
「そうですか、それは良かった」
思わず私はカタリナをチラッと見たが、特に表情に変わりは無かったのでスルーする事にする。
しかし、確かに気晴らしにはなったけど、これってやっぱり、アンゼルムとハイデのデートに無理やり割り込んだだけではないのかしら。
生真面目で親友のカタリナの妹のような感じのハイデでしたが、初陣で部隊を指揮した事により、主体的に活動出来る様になってきた様です。
本来侯爵家の次期当主であるアンゼルムと男爵の令嬢でしかなかったハイデでは、貴族身分的には全く釣り合いが取れないいわゆる「真実の愛を見つけた」と言うシチュエーションでしたが、近い将来にアンデルセンが当主を辞退し伯爵家当主になり、ハイデの身分が男爵から子爵家当主になる事で、現実的な距離になりました。
更にハイデがシルディの側近から幹部に昇格した事で、この二人の結婚はむしろ望ましい物となります。
まさにシンデレラストーリー。
これもシルディの目指す世界の一つの現れです。
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