シルディの騎士団4
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「フーーー。バルタザール殿、大変な麒麟児を育てられましたね」
思わず私はバルタザール殿と顔を見合わせ呟いた。
「いや、儂も今の今まで気がつかなかった。戦争と言うのはやはり恐ろしいものだな」
私も同感、国家がその全力を出す戦争は好き嫌も無く、個人の能力を爆発的に成長させるらしい。
「ブルックはどう思う?」
何かを達観した様に紅茶を飲んでいるブルックの意見を聞いてみる。
「いいんじゃないか。
彼が率先して騎士団を預けてくれれば、他の貴族にも先例になるだろう。
グランド侯爵家は、君の母上はグランド家の現当主の妹だ、僕は君の婚約者だし、例え同じことをしても反対派や中立の貴族を説得するには、君に少し近すぎる。
その点、ウノシルディス家なら今回の解放作戦に恩義を感じたと言う事で、ウノシルディス領全体の同意も得られやすいだろう。
何より領地の返上を金銭では無く恒久的な財政の裏付けが約束されている国債で行うと言う所が魅力的だ、俺も考え付かなかった。
ウノシルディスで上手く行けば、クロスロード大公国全体を巻き込む大きな動きになる。
本当に素晴らしい」
アンゼルムをべた褒めのブルック。
「アンゼルム、私の当面の目標は、これまでの領主貴族が主体となった騎士団ではなく、国家の軍としての騎士団を常備軍として整備する事でした。
その武力を背景に、貴族と領地を切り離すつもりでしたが、今のアンゼルム殿のアイデアを使えば、もう少し穏便に事が進みそうです」
私の計画を聞いて平然としているのはブルックとエリーのみ。
ハイデとカタリナは理解能力を越えたらしい。
辛うじて、バルタザール殿が口を開く。
「この戦争がクロスロード大公国の歴史の変革点になるな」
「その通り、私はこの戦争を利用して歴史を変えます。
それくらい出来なければ、大切な学園のあの子達を血生臭い戦場に連れて来たりはしません」
「ルーべルトの奴、飛んでない置き土産を育てて行きよった。
シルディア殿下、ウノシルディスは、シルディア殿下が来なければウノ族に滅ぼされていた。
ウノシルディス侯爵家はアンゼルムの言う通り、騎士団の全てをシルディア殿下にお任せしましょう」
「ありがとうございます。ですが、まだこの事は内密にお願いします。
ルーべルト殿は理想を優先して走りすぎる所がありました。
私は皆が納得出来る所を探しつつ段階を踏んで進むつもりです。
それにアンゼルムが提示してくれたアイデアには正直驚かされました。
今後も私の近くに置いて提言をして欲しいと思うのですがバルタザール殿、如何でしょうか」
私は初めてアンゼルム殿を名前だけで呼んだ、この意味をバルタザール殿は理解してくれるだろうか。
「やれやれ、アンゼルムには領地経営をブルック殿に指導してもらうつもりだったが仕方ないの。
シルディア殿下、アンゼルムを宜しくお願い致します。
騎士団の連中はフローラに惚れてしまったし、ウノシルディス家はフローラに継がせるか。
騎士団はフローラがシルディア殿に嫁ぐ花嫁道具に丁度よかろう。
アンゼルム、お前はそれで良いか?」
「はい、私はシルディ様にお仕え致します。
侯爵家を出て一度伯爵に降爵しますが、実力で陞爵して見せます、お爺様」
『ふほほほ、それは頼もしい』とご満悦のバルタザール殿。
(あれ?ちょっとまって、何か不穏な提案があった様な)
「勝手に私とフローラの結婚話がまとまっているけど、ブルックこれって帝国法だとどうなるの」
自分の結婚話が婚約者の前で勝手に決まると言う異常事態に流石の私も処理能力を超えたらしい。
(人間パニックになると、上辺だけは落ち着いてしまうのね)
「何故君がそこまで冷静なのかは不明だけど、フローラは今回の出兵に参加した時点で、伯爵家の当主として家を興しているから、今回の戦功によって侯爵家当主になる事自体に問題は無い。
すると同じ姓の侯爵家が二つ存在する事になるけど、一番厄介な領地問題は国債に置き換わっているから、それをどう分配するは、二つの侯爵家の話し合いで決まる。
国債に関しては帝国法の規定は無い」
「つまり、簡単に言うと、好きにして良いって事ね」
私との婚約が勝手に決まったらしいフローラはこの事を知ったらどう思うだろう?
あれ? 私の婚約も勝手に決まっていない?
おかしい、後で整理しないと理解が追い付かない。
「まあ、同性同士の婚約は、私がブルックと結婚するにしてもフローラが男性と結婚するにしても問題は無い義兄弟の契りの様なものだし、強い主従関係と言うか公式な親友契約って事で大丈夫ね」
何か根本的に違う気がするが今の私にはこの理解が限界。
「まあ、そういう事だね」
諦めたかの様に言うブルックに、何故か納得した顔のエリー。
◆ ◆ ◆ ◆
「さて、未来の事は少し置いて置いて、儂は昼からの謁見と明日の叙爵式と舞踏会の準備に掛かりたいと思うのだが、何方かお手伝い頂けるかな」
バルタザール殿は私の頭が通常に戻るまで取りあえず身近な問題から片づける事にしたらしい。
「シルディ様さえ構わなければ、私がお手伝い致しますが」
(エリー、徹夜明けで大丈夫? それとも今の国債の話を聞いて眠気が飛んじゃった?)
「それじゃ、エリーにお願いします」
(ま~あ、本人が行けると言うなら任せましょう)
「ブルックは服飾ギルドの対応をお願い」
(ブルックは徹夜明けでも大丈夫ね)
「わかった、任せておけ」
(ブルックも今の話で眠気が飛んだようね。どっちの話かは知らないけれど)
「ハイデとカタリナ、アンゼルムは騎士団の教育について意見が聞きたいからこのまま残る様に」
「では解散」
この世界の貴族世界では同性同士の結婚は特に禁じられてはいません。
また、同性同士で結婚した者が異性と結婚しても問題ありませんと言うか、普通に奨励されています。
これは、同性同士の結婚では子供が出来るはずもなく、ややこしい相続問題が発生しない為です。
ですから、血統を絶やさない為の結婚と、精神を満たす為の結婚の二つが貴族社会では普通です。
又、同性同士の結婚には肉体的な性的関係だけでなく、純粋な精神的結婚も含まれます。
したがって、強い主従関係、親友契約も結婚に含まれます。
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