シルディの騎士団3
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「シルディ、その駆け引きはまだアンゼルムには無理だ」
ブルックが仲介に入ろうとするが、私は手でそれを制する。
バルタザール殿は何も言わないので、この場は私に任せるつもりらしい。
カタリナはじっと私の顔を見ているけど非難の眼差しではない。
ハイデは、私を睨むのでは無く、アンゼルムの方を見ている。
(これ、完全に惚れちゃったんじゃない? 侯爵と男爵じゃさすがに無理、でも侯爵と子爵なら有りなんじゃないかしら?後で考えましょう)
エリーは、・・・・呑気にコーヒーを飲んでいる。
(貴方は少しは私の芝居に協力しなさい!)
「私は、今後ウノシルディスには治安を維持出来る警備力としての騎士がいれば十分と考えています。
我が家に所属する対外的な戦闘で使える騎士団は、この戦いが終わった後もシルディア様の騎士団として使って頂きたいと考えております。
この対価では如何がでしょうか」
ブルックとエリーは「フローラに家督を丸投げして伯爵になっても着いて来そうだな」「お兄様、婚約者の立場が危うくてよ」と何やら物騒な話。
ハイデとカタリナは「シルディ様に魅了されました?」「されちゃったね」とこちらも物騒な話。
ったく、私の幹部連中と言うのは、どうして私に優しく無いのかしら
「バルタザール殿、アンゼルム殿に何か吹き込みましたか」
アンゼルムの論理展開の鋭さに思わず私はバルタザール殿の関与を疑う。
「いや、儂もアンゼルムに驚いている。
アンゼルムの発想は儂よりもルーべルトの奴の発想に近い。
会った事は無いはずじゃが、シルディア殿下の構想もこれに近いのではないか」
「いや、参った」と言う感じのバルタザール殿。
(侯爵家の騎士団を私に引き渡すお話なのにアンゼルム殿に丸投げでいいんですか?)
「ええ、ほとんど私の構想です、驚きました。
しかし、貴族がその権力の証である武力を差し出すなど、普通の貴族の常識では思いつきません。
アンゼルム殿、どうしてその様なお考えに辿り着いたのですか?」
アンゼルム殿は話す前に紅茶を一口飲む
「それをお話したら、シルディ様のお考えもお話頂けますか?」
そしてカップを戻してから話し出す間が良い。
背伸びしているのが判るけど、頑張っているしヒルダとはまた別の意味で可愛い。
と思ったら、ハイデが目をウルウルさせてアンゼルムを見ている。
まったく12歳の子供が18歳の女を惚れさせるって一体誰の教育なのかしら。
「フフフ、これは一本取られたわね、良ければ教えて貰えるかしら。
アンゼルム殿はもうほとんど独力で私の構想に辿りついていますが、勿論私の考えもお話しますよ」
ブルックとエリーを見ると、二人とも頷いているので、アンゼルム殿を仲間にする事は問題無さそうだ。
「2000騎の騎士が居ても10万のウノ族の侵略に手も足も出ませんでした。
しかし、シルデイ様の軍は1000に満たない騎士団でありながら、4万のウノ族を殲滅してウノシルディスの解放に成功しました。
であるならば、ウノシルディス侯爵家はシルデイ様の政に参加し、シルデイ様の軍で国土を守って頂く方が民の為にも良い」
「今、領地では無く国土と言いましたが、間違ありませんね」
「はい、あと2年以内に貴族が領地を治め、領地を分割統治する貴族が騎士団を作る時代は終わります」
「それは貴族制度が土台からひっくり返る大変化だと思うけど、その根拠は?」
「アーレイとロングを持つシルディ様の軍に、これまでの騎士団や重装歩兵の軍では歯が立ちません。
騎士の誇りも決死の突撃もアーレイとロングの前には無力です。
そしてアーレイもロングも今の所学園でしか生産出来ません。
帝国が例え現物を手に入れてもその複製に大量配備には10年は掛かると思います」
「戦術的にはやりようはあるでしょうが、戦略的にはその通りですね。
製造については、学園の技術と職人を模倣する事は帝国の組織では10年は不可能ですね」
ブルックに視線を送ると頷くので、私の見通しに間違いは無さそうね。
「であれば、ウノシルディス侯爵家は領地をシルデイ様に献上し国土に組み込んでもらいその対価として毎年の利益が保証された国債を頂きます。
また、官吏としてシルデイ様を支える政治的な地位を頂いた方が良いと考えました」
貴族の所有する領地を国債で買う! その発想は無かった!
金銭では無く国債と言う所が素晴らしい。
貴族の持つ経済力と地位は国債からの利回りで保証されるし、領地から貴族を切り離す事が出来る。
私は一度に大金を用意する必要が無く、支払いは毎年の税収から行なえる。
優秀な貴族は官吏や軍人として大公国が雇う事も出来るから、人手不足も解消される。
人材の移動が今よりも格段に良くなる。
むろん国土の管理に代官を送る必要はあるが、行政官としての代官と言う官僚制度を整えれば国土の開発もよりやりやすくなる。
何より土地に縛り付けられている農民を都市に集めて労働者とする事が貴族に遠慮なく出来る。
私が大量に叙勲させた貴族も官吏や軍人として雇い入れる事は出来るから、俸給を貰って生活する事が出来る。
私はこの戦いが終わった後の変革が、私の夢から現実の施策に変わって行く。
次から次へと政策が思い浮かぶ。
もうこの時点でウノ族の残党など、私の中では単なる障害物の一つに成り下がった。
問題なのは、こちらの損害を出さずに私の政治的立場を最大に強める形で殲滅する事だけよ。
ようやくシルディのクロスロード大公国の改革プランが明らかになりました。
一つは国家に属する軍隊の創設。これに伴い地方貴族から武力を切り離します。
二つ目は貴族と領地の切り離しと国債の発行による資本家層の促成です。
三つ目は農民の土地からの解放と貴族の人材の登用の流動化です。
ただし、シルディは貴族制の廃止は全く考えていません。
それは対外戦争の普通のこの時代、国と国民を守る為の軍は必要であり、命をかけてそれを遂行するのは貴族であり、それ故に平民から尊敬され優遇されて当然と言う思想を持っている為です。
一方、平民であっても能力のある者については、貴族にして当然であり、貴族の義務を果たさない者は降格して当然との考えも持っています。
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