舞踏会とドレス3
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
暫く連続更新致します。
「戦いである以上、戦士者が出るのは当然の事です。
その戦死者が女性と言うのは前例がありませんが、学園の生徒である以上、せめて彼女達が卒業式の舞踏会で着る予定であったドレスを着せて弔ってあげたい、万人が涙して納得します」
おお、ハイデの初めての幹部会議での発言が私の弁護。
貴方は優しいわね、覚えておきます、ハイデ。
「舞踏会で着るドレスが無いとなれば、私達は大恥をかきます。
機会はちゃんと与えたのに、たかが30着程度のドレスを用意をしないギルドが悪いのです。
甘い対応では騎士の沽券に関わります」
カタリナからは騎士として真っ当な意見を頂きました。
貴方達はやっぱり素直ないい子達ね。
「貴方達、これからこの幹部会議に参加するなら、シルディ様にする事を肯定するだけなら意味は無いわよ」
エリー! それは初めて幹部会議に参加するの二人に厳し過ぎる。
そしてブルック! 貴方はどうしてそこで頷くの。
「エリー殿、その言い様は二人にはまだ少し難しすぎるかもしれない」
ほら、バルタザール殿も『厳しい』と言っているじゃない、あれ『難しすぎる』って微妙に違う。
「例えば、戦勝祝賀の為に舞踏会を催すと言う考えは素晴らしい。
シルディア殿がそれをどう使ったかを考えてみようか」
バルタザール殿がハイデとカタリナに向かって話しかける。
ビシっ背筋を伸ばす二人と何故かアンゼルム。
(バルタザール殿の新兵教育の始まり始まり)
「普通の戦いであれば、勝っても負けても戦死者は必ず出ます。
ですので戦死者を弔う為のドレスは必ず必要になります」
ハイデって分析に関しては冷静に出来るのね。
「しかし、以前からシルディ様と敵対関係にあった服飾ギルドは、戦時下である事を理由に当然に無視すると最初から分かっていらしゃった」
カタリナ、私は「無視する」と決め着けてはいないわよ、多分無視するだろうと思っていただけ。
「ですが、シルディ様が勝利を納めれば、やはり戦死者を弔う為のドレスは必要になります。
つまり、服飾ギルドはシルデイア様が勝利する事は無いと考えていたと言う事ですね」
これまで話を聞いていただけのアンゼルムが突然発言したので全員がアンゼルムの方を向いたので、真っ赤になって俯いてしまった。
「アンゼルム、この会議では思った事を発言して構いませんよ。
今後も何か思った事があれば、発言して構わないわ。
でも問題があれば私が止めますからそれには従ってください。
今の発言は良かったわよ、これからも頑張って。
あと、この会議では不敬罪は適用しません。
それでは、バルタザール殿続けて下さい」
私のフォローにアンゼルムは顔を上げてキラキラした目で私を見つめて大きく頷いた。
(あのフローラの弟とは思えない素直さが良い)
エリーとブルックが「人たらし」「また、やらかした」とか呟いたのが聞こえる。
貴方達兄妹にだけは不敬罪を適用しようかしら。
「その通りじゃアンゼルム。しかし、シルディア様は見事に勝利を納め、ウノシルディスを解放された。それも味方の戦死者はおろか、重傷者も皆無と言う奇跡をおまけにしてな」
バルタザール殿は奇跡と言われるけれど、私の頭の中では遠距離攻撃に徹して危なくなったら後退する戦術を使う事で、事故がなければ戦死者ゼロは当然の結果よ。
「そこで、戦勝祝賀舞踏会を開催する事を決定された。
戦勝祝賀なら園遊会では不足です。
舞踏会を開催するのが当然です。
この開催されて当然と言う無理の無い流れが、シルディ様の仕組んだ巧妙な罠なのですね」
カタリナ、その通りなんだけど「巧妙なとか、仕組んだ」はちょっと人聞きが悪い、私の幹部としてもう少し言葉を選んで。
「舞踏会に参加するならば、主役は学園の生徒つまり、貴族の女性なのでドレスが必要です。
しかし、急に用意する事は出来ないのでギルドに譲歩されて、出陣前に注文をした戦死者を弔う為のドレスを寸法直しして使う事された。
つまり、出来ていて当然のドレスであるから、準備出来ない事の言い訳はできない」
アンゼルムの推論は私の思考とほとんど同じ、12歳なのに大した者ね。
「つまり服飾ギルドは、自分達を救出する為に戦った戦死者を弔う気持ちが最初から全く無かった事になる。
シルデイア様が事前に緊急通信まで使ってわざわざ直々にギルドに命令したにも関わらずだ」
私が仕掛けた罠だけど、バルタザール殿の説明を聞いていると段々ギルドへの憎しみが増して来たような気がする。
「そして、シルデイア様は最後の仕上げとしてギルドには使者を送り状況を確かめた。
一方、商会には商会長を集めてシルデイア様が直接に注文を出した」
ハイデには少し難しいらしい、カタリナとアンゼルムには理解出来ている様ね。
「外堀は完全に埋められています。
シルディア殿下の命令を軽んじ、味方の勝利を疑い、更に戦死者への弔いの気持ちを軽んじた服飾ギルドは終りです」
アンゼルムも私達と同じ結論にたどり着いた。
「あの整理しますと、戦勝祝賀会の舞踏会で主役の彼女達が着るドレスがギルドの不手際で無い」
ようやく理解出来たらしいハイデが説明しだした。
「ハイデ殿、続けて。こういう策は皆の意識が統一されていないと思わぬ墓穴を掘る」
バルタザール殿がハイデに話の整理を続けさせる。
「しかもそのドレスは元々は今回の戦いで戦死者が出た場合、彼女達を弔う為に用意を命令されたものであった」
「そんなドレスが準備されていないとは、露ほども思わないシルディ様は、ギルドに確認と招待状をお送りになられた」
『露ほども』の所でエリーが咳ばらいをする。
すると
「そんな特別の意味を持つドレスが準備されていないとは、『露ほども思わない』ふりをしているシルディ様は、ギルドに確認と招待状をお送りになられた」
わざわざハイデは言い直した。
ブルックとエリーとバルタザール殿が苦笑い。
アンゼルムにもこの策の2段構の狡猾さが見えて来たようだ。
「そして、舞踏会とは別に叙勲式にもドレスが良いと何故か突然思われたシルディア様は、商店を直接呼んで叙勲式用のドレスを注文されたので、商店は昨日の晩から明日の朝まで徹夜の仕事になります。
元から服飾ギルドと商店はあまり折り合いが良くないので、シルディア様の仕事を理由にギルドの仕事を当然断ります。
更に、二つの依頼からシルディア様が仕掛けた罠を見抜き乗ってくる可能性も高い」
さすがアンゼルムはウノシルディスの商業についても明るい。
「そして、明日には服飾ギルドはドレスが用意出来なかった事をシルディ様にお詫びに来ます。
私達は、仕方無く各商店が無償で提供してくれた叙勲式用のドレスで舞踏会に参加する事になります」
ハイデにもようやく筋書きが読めて来たみたいね。
「今回、男爵に叙勲されるのは、実家が男爵以上の令嬢です。
そんなシルディ様や私達に『なめた対応』をした服飾ギルドを実家が赦す訳がありません。
この話がウノシルディスに広まればギルドは終りです。
そして普段からギルドに不満のあった商店は間違い無く広めます」
(カタリナ、『なめた対応』とか下賤な言葉を使ってはいけません。それに私は脅してはいないわよ)
「その通り、これがシルディア様の行う貴族の世界の駆け引きだ。
戦場での駆け引きとは異なるが、今後もシルディア様にお仕えしていくつもりなら、そういう視線も必要となる」
バルタザール殿が綺麗に閉める。
「「バルタザール様、有難き教え、ありがとうございます」」
二人はバルタザール殿に頭を下げ礼を申し上げ、アンゼルムはしきりに頷いている。
尚武の国であるクロスロード大公国では戦死者は可能な限り手厚く喪られます。
それが自分達の救出の為に決死の思いで駆けつけた、うら若き少女であったらどうなるでしょうか。
自分たちの命が助かった事に対する感謝と戦死した少女への感謝が相乗効果で凄い事になるでしょう。
その喪う式典に彼女達に着せるドレスが事前に命令されていたのに無いとなれば、ギルドに対する貴族や住民の怒りは、正義の鉄槌として全肯定されるでしょう。
シルディの狙いはそこですが、これは相当にえげつない策です。
まあギルドとシルデイなら対等の喧嘩ですから構いませんが




