ヒルダの出陣4
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
暫く毎日更新を行います
「ブルマイスター要塞の救援部隊は、シルディア殿下の名代として私が指揮を執ります。
参謀長はフローラ、総騎士団長はベルンハルト、総戦隊指揮官はカチア、副戦隊指揮官はクリスが行います。
ライナー、フィッシャーにはこれまで通りにブルマイスター騎士団を率いてもらいますが、特にライナーにはブルマイスター騎士団の実質的な騎士団長の仕事をしてもらう事になります。
又、リンケ、ロンゲンはベルンハルト殿の直属の部下として、ウノシルディス家の騎士団を率いてもらいます。
各戦隊は10名の弓騎兵と10名の直衛槍騎兵からなり、現在の班長がそのまま戦隊長として戦隊を率います。
それ以外の槍騎兵は、総騎士団長、総戦隊指揮官、副総戦隊指揮官が直接指揮を執りますが、これは暫定的な物なので、状況に応じて人員を変更します。
何か質問はありますか?」
今朝の私との休息が効いたのかヒルダの言葉には余計な気負いも無く、自分の言葉で話せている。
大まかな所は昨日話し合った通りだが、ライナーやリンケや戦隊の扱いについてはヒルダの考えだ。
バルタザール殿とベルンが「ほう」と言う顔で関心しているので、先ずは大丈夫だろう。
「総兵力は如何ほどになりますか」
部隊長の中では一番年上のライナーが質問する。
「弓騎兵200、ウノシルディスの槍騎兵500、それにブルマイスターの槍騎兵が150。あと50名程の本部随伴騎士が加わって、900騎と言う所になります」
「たった900騎で6000人を蹴散らすわけですね・・・・」
フィッシャーの質問は正式な質問ではなく、独り言であったのかもしれないが、誰もが思う事である。
ヒルダはフィッシャーの発言に強く頷く
「ブルマイスター要塞は守りの要塞ではありません、それが包囲されてから3週間以上経ちます。
領主のクルト伯爵が如何に歴戦のの猛者であっても、城兵は限界に近い。
ブルマイスター要塞まで直線で180キロ、走破距離で220キロ、これを3日で突破します。
今日中に70キロ、明日は100キロ、三日目の午前中に50キロ進軍、三日目の昼にはブルマイスター要塞の前に陣を敷きます」
軍隊の進軍速度として常識を無視した作戦計画に一同の顔色がますます厳しくなる。
「3日で220キロ、それが可能なのは、リール川沿いに南下して林を突っ切るルートだけです。このルートならば敵と遭遇しなければ計算上は可能です」
隠しルートを知っているらしいリンケが言うと、フィッシャーとロンゲンがリンケを見る。
ベルンが軽く手の平を上げたのでヒルダは頷く
「フィシャーやロンゲンが知らないのも無理はない。
こういう時の為の秘密ルートだ。細い道だが馬道も給水所も整備されている。
馬車の通行は出来ないが、騎馬ならば林の中でも平地と同じ速さで動ける」
「3日に拘る理由は何か有るのですか」
フィッシャーが、今度はヒルダの同意を得てから発言する。
(感心、感心さっきは独り言に近かったけど、今回は会議の作法にそった発言ね)
「ウノシルディスの攻城軍の壊滅がウノ族全軍に伝わるのが3日と想定出来るからです」
「3日後以降にはウノ族の残敵がブルマイスター要塞に殺到する可能性があると」
フィッシャーの理解にヒルダが頷く。
(そこはヒルダ、キチンと声に出して肯定した方が良いわ)
「ブルマイスター騎士団とウノシルディス騎士団の替え馬としてそれぞれ2頭ずつを用意した。
又、愛馬が騎乗に耐えれないと思う者には、代わりの馬を一頭を用意出来る。
出撃前までに見極めて欲しい」
ブルックが昨日の徹夜の成果を皆に報告する。
「馬の糧秣と食糧は既に替え馬に積載済みです。水についてはルートの拠点に用意されているので、最小限の携行に留めます」
エリーも昨晩の徹夜の成果を報告する。
(ブルックもエリーも3日で行かなければ成らない事を補強してくれたのね。ナイスフォローよ)
ここでヒルダが立ち上がり、皆を見回す
「この電撃作戦の成否は機動力。
途中で時間を取られれば、ブルマイスター要塞救出の可能性は低くなります。
3日で200キロ、6倍の敵を打ち破ります。
クロスロード大公国の、いえ世界の歴史にも無い常識外れの機動作戦です」
ヒルダはここで一呼吸入れる。
一人一人の顔を見て行く。
私も一人一人を見て行くが、不満や不安を感じさせる者は居なかった。
何故3日なのか、有り得ない行軍速度が必要な理由に皆が納得した様だ。
実績と経験に裏付けられた鉄の意志が、皆の戦意で熱く成って行くのが判る。
皆が、次のヒルダの言葉を爛々と目を輝かせ待っている。
(ヒルダ、この『間』はいいわね、学園の行動で皆の戦意が高揚していくのを待った私と同じ『間』ね)
「我が学園の乗馬術、
同胞へのブルマイスター騎士団の思い、
『ウノシルディスの武勇、紅旗の勇』と称えられるウノシルディスの精鋭であれば可能だと思います。
ですが、やはり無理ですか?」
(ヒルダ、最後の『だと思います』と『やはり無理ですか』は要らない。思わず本音が出てしまったのだと思うけど、指揮官の仕事は肯定を重ねる事なの、部下の前で不安を見せれば軍としての指揮が保てなくなるわ)
カチアが静かに立ち上がり、握りしめた右手を左胸にあてて言う
「我々なら可能です。ヒルダ様」
父親を助けてたいと言う様な乙女小説の様な薄っぺらな決意ではない。
戦隊を率い、部下の命を預かる指揮官としてあらゆる問題を考慮しても尚、揺るぎ無い自信を持って言い切る。
(嘘、あのカチアが指揮官として言い切った。ヒルダよりカチアの方が先に成長した様ね)
「儂が直接育てた最後のウノシルディス騎士団の精鋭部隊じゃ。
並の騎士団と同じにしてもらっては困る。
それに活躍を見せた者にはフローラの婚約者候補という餌も吹き込んであるしな」
フハハハと笑いながらバルタザール殿。
「フロレンティーナ・フォン・ウノシルデスが先陣を切ります。
私に遅れを取る者は、ウノシルディス騎士の誇りに掛けていないでしょう」
フフフフと魔性の女にしか見えないフローラ。
(怖い、怖すぎるフローラ。獅子に率いられた餓狼の群れ。貴方にそう言われたら馬を背負ってでも騎士は絶対に着いてゆく。トンデモナイ部隊に化けるんじゃないかしら)
フィッシャー、リンケ、ロンゲンも
「お任せください」とフィッシャー
「必ずやり遂げます」とリンケ
「行けと御命じ下さい」とロンゲン
最後にライナーが
「行きましょう、ブルマイスターへ」と皆の思いをまとめる。
(ヒルダ、貴方の部下は素晴らしい部下よ。大変だと思うけど学ばせてもらいなさい)
「ありがとう。必ずブルマイスターを救いだしましょう」
部下の熱意が指揮官の経験不足と気弱な所を補ってくれたようね。
確固たる自信と溢れ出る真っ赤な鉄の灼熱の意志に絆される様に、フローラとベルンが立ち上がり、カチアやライナー達を見て頷く。
「「「ヒルダ様と共に」」」
「勝利は我らの手中にあり!」
ヒルダが最高指揮官らしく言い切った。
ウノシルディス解放の時に戦旗を掲げて入城し、ウノシルディスの貴族と騎士、そして民衆の圧倒的支持を手にいれた、フロレンティーナ・フォン・ウノシルデス、絶好調です。
この後のウノシルディス騎士団の出陣式でもその美貌と魅力を最大限に発揮し、「姉さん」としてウノシルディス騎士団のカリスマ的指導者の地位を不動としました。




