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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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ブルマイスター解放戦13

「梶 ゆう」の初回投稿です。

書きながら色々勉強して行きたいと思っています。

この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。

皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。

火曜日と金曜日に更新を行います。

ブルマイスター要塞は、クロスロード大公国とウノ族の治めるイネス地方との国境の守りの要塞である。

この要塞以降のタマ河は川幅も深さも広がり徒歩での渡河は季節を通じて不可能である。

タマ河は最大幅1キロにも及ぶ大河であり、流れも急であり対岸がウノ族の治めるイネス地方のタカツ領と言う事もあって、橋などは存在しない。

又、このブルマイスター要塞は守りの要であると共に攻撃の拠点としても十分な機能を持っている。

2万の騎兵を余裕を持って収容出来る宿営施設と、十分な補給設備、クロスロード大公国に豊富な騎兵を有していた時は、ここに5千の騎兵が駐屯していた。

先の大戦で大敗した現在、その頼もしきクロスロードの力の象徴のである騎兵隊の姿は無い。


クルト伯爵とその城兵500人がカチア達を迎え入れたのは、ここ2年の間に学園が遠征訓練の為に整えた学園専用の練兵場であった。

   ◆    ◆    ◆    ◆


「開放軍を率いているのは、ヒルデガルド様で間違いないのだな」

玉砕覚悟で籠城した命が助かり、本来なら万々歳な所であるが、何故か城主クルト伯爵の機嫌は良いとは言えなかった。


「騎士団長の部下のリンケ殿より直接伺いました。間違いありません」

クルト伯爵の問いに側近の者が恐る恐ると言う体で答える。


「それで、その実戦部隊の指揮をカチアが執っているのだな」

側近の答えにクルト伯爵の気分は下降の一途。


「はい、総司令官ヒルデガルド様、総参謀長フロレンティーナ様、総騎士団長ベルハルト様、総隊長カチア様です」

側近は聞かれた事のみを正確に答える事のみに集中する。


「フロレンティーナ様とは、フロレンティーナ・フォン・ウノシルデス侯爵家御令嬢の事か」

クルト伯爵はとうとう腕組みまでして不機嫌を露わにする。


「はい、その通りであります」

緊張のあまり、側近の額を汗が筋を引いて流れ落ちる。


「遠征軍の総兵力が1千に満たないと言うのは本当か」

クルト伯爵の不機嫌ぶりに萎縮した側近を憐れんで長兄のエトムントが助け船を出す。


「間違いありません。エトムント兄様、弓騎兵120、槍騎兵400。

他には司令部要員が100人ほどです。入城した時に私が数えました。

あと現在、残敵を追撃している部隊が200ほど居るようです」

怯え切った側近に『下がれ』と合図をして、弟のフリッツが代わりに答える。

助かった側近がエトムントとフリッツに頭を下げて後ろに下がる。


「それで損害は? 1千に満たない寡兵で6000の攻城軍と平野で正面からぶつかったのだろう」


「それが兄上、戦死者は今の所いません。重傷者が30名ほどいるので何人かは助からないでしょうが、あとは軽傷者のみです」

負傷したエトムントに代わり、前線に立っていたフリッツが言うのだから間違いない。


「6000の攻城軍を半日で壊滅させ、敗走させて戦死者ゼロ。有り得ない・・・」

クルト伯爵が唸る。


「魔女か悪魔が魔法でも使ったとしか思えんな・・・・」

エトムントの呟きに一同は同意するが


「エトムント、注意しろ。

今の発言はヒルダ様への不敬案件になる。

もしフロレンティーナ様がここにおられたら、問答無用で風穴が空いていたぞ」

自分が頷いていた事は無かった事にしてクルト伯爵は長男のエトムントを責める。


「そうですよ、兄上。

ヒルダ様はシルデイ様の御妹君です。

カチアが今の発言を聞いていたら上下に体が分かれてましたよ」

弟のフリッツまでも自分が頷いていた事を棚に上げ兄のエトムントを責める。


「まったく、父上もお前も酷い人達だ。それでフリッツ、他に何か報告する事は無いのか」

父上はともかく、フリッツは俺とカチアの実力の差を判っていない。

俺が剣でカチアに後れを取る訳が無いではないか。


「え~と、ヒルダ様達が使った武器の詳細は不明。

多分火薬を使った炸裂弾でしょうが見たことのない新兵器です。

あとカチアは、『ブルマイスターの奪還』を神と契約したらしいです。

神への供物として自分の髪の毛を捧げたと言っていました」


「魔女では無く神の御加護であったか・・・・」

エトムントの呟きに一同は再び同意する。


「・・・今度は不敬案件とか言わないのか」

エトムントは、父上とフリッツの顔を見ながら言う。


「神の御加護が何故不敬案件になる? バカが」

何か言い出しそうなフリッツは父上の言葉を聞いて何も言わなかった。


「父上、兄上、到着したらしいですよ」

フリッツがわざわざ言うが、父上のご機嫌は直らなかった様だ。


「お前に言われなくても、あの歓声を聞けば判る。俺の城兵が膝まづいてカチアを拝んでいるではないか」

俺でも兵に拝まれた事など無いのに、貴様らの主人は俺だぞ。


カチアが高々とブルマイスター家の旗を掲げ、ベルンがブルマイスターの騎士団旗を掲げて実に堂々と入門して来る。

持ち手の覇気の違いなのか、ブルマイスター家の旗の方が神々しく見える。

いや、きっと気のせいだ。

その後はクリスに率いられた学園の生徒が馬の歩調まで合わせて進んでくる。

これが本当に一刻前に決戦をおこなった軍なのか?あり得ない。


私の前に差し掛かったタイミングで

「クルト殿に敬礼、頭右(かしらみぎ)!」

カチアの凛とした良く響く号令に合わせて、右手を額に当て一斉に右を向く完璧に揃った敬礼を行なう生徒、いや騎士達。(口数が少なく、部屋でも聞き取り難かったカチアの声。だが今の号令は、美しく良く通る声だった)


その動きの美しさと迫力に俺の城兵がアホ顔をして見惚れている。

城兵だけではなかった、エトムントもフリッツも変り過ぎたカチアに呆気に取られている。


「クロスロード騎士団に捧げ剣!」

仕事を忘れていた俺は慌てて命令する。

俺も呆気に取られていたらしい。


「これが、朝から2回も戦った軍だと・・・帝国にもこれほど見事な儀仗騎士はいない。比較にならん」

帝国の士官学校を卒業しているエトムントが囁く。


「そりゃ3週間も籠城してた兵隊と一式で家が建つ学園生徒の装備を比べたらそうなりますよ」

フリッツはまだあの騎士達を見て生徒と言う。

しかも、装備について値段で比較するとか、完全に視点がずれている。


「フリッツよ、だから、お前の目は節穴なのだ。

あの澄み切った彼女達の自信と誇りに満ちた目を見みろ。

あれは民を守り抜いた、誇り高きクロスロードの騎士の目だ。

家一軒の装備なぞ単なる飾りだ。貴様にはそれが解らぬか」

エトムントが弟を諭す。


「あの騎士は、6000の敵を壊滅させた精鋭中の精鋭部隊だ。

貴族のお飾りの儀仗騎士などとは格が違うわ、格が。

敵を見極める時と同じだ、味方の力量を見間違うな」

父上にまで釘をさされて、弟のフリッツはいつもの味方に温情をかける振りので自分の無能力を誤魔化そうとする。


「それは分かりましたが、父上、兄上、3週間の頑張った我が兵達にもお心使い下さい」

フリッツよ、その青臭い手はもう大人になったお前が使っても効果は無い。


「・・・・フリッツ、彼女達の敬礼を良く見みろ、汚れた兵を(さげす)む気持ちなど微塵もない。

あれは共に戦った戦友に向ける敬礼だ。

違いが判るか?判らねば、判る努力をしろ。

お前には必要な事だ」

父上は首を振りながらフリッツを諭す。


「・・・はい、父上。努力致します」

まあ、素直に努力しようとするだけ、弟のフリッツにもまだ見込みはあると言えるか。

ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織。6万の残敵が健在な中、電撃的な騎馬による機動戦術の運用をシルデイは妹のヒルダと腹心の部下のフローラ、そして新しく総騎士団長に任命されたベルンに託す。

敵の族長アキム・アレクセイの抵抗は苛烈なものであったが、運を味方に付けたヒルダは辛くも虎口を脱し、ブルマイスター要塞の解放に成功する。




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