ブルマイスター解放戦12
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「開~~~~門、開~~~~門」
先ほどの失言により、婚約者と妹からの受けた誤解を半時を掛けて取り戻し、頼りになる将軍に無事に戻ったベルンが戦場でも良く響く声でブルマイスター要塞に開門を命じる。
この一刻程の間に籠城の為に強化された障害物を取り除かれた門が、ゆっくりと開く。
薄暗い門の向こうから、籠城していた兵の視線は感じるが、ウノシルディス城解放と時と同様に直ぐに巻き起こるであろう歓声が一切上がらない。
しかし、その沈黙は先頭と行くカチアとベルンが要塞内に入った瞬間に爆散する。
「「「カチア様だ! 」」」
カチアの持つブルマイスター家の旗が強くはためく。
「「「カチア様! カチア様の凱旋だ!」」」
「「「騎士団長! 騎士団長も凱旋だ!」」
カチアと並んでブルマイスター騎士団の旗を揚げて進む俺に漸く気づいたと言う様に城兵が叫び出す。
(騎士団長も、「も」ってなんだ。騎士団長はついでか。・・・うん、ついでだよね・・・俺もそう思う)
「「ブルマイスター万歳!! カチア万歳!! 騎士団長万歳!! 」」
(俺だけが役職かよ。確かにベルンよりも騎士団長の方が叫びやすいが、やっぱり凹む)
カチアが城兵に手を振ると、城兵は何故か泣き出し、跪きカチアに向かって手を合わせ始める。
いや、良く見るとクリスに向かって手を合わせている者も多数いる。
(ちなみに俺に向かって拝む者はいない。・・・さてはリンケの奴もう一手しこんだか)
◆ ◆ ◆ ◆
最初の城門から大分進んだがこの辺りの奴らになると、カチアの姿が見えた瞬間に跪いて拝みだす。
「カチア殿、城兵がそなたとクリスを拝んでいる様に見えるのだが?」
俺の疑問を口にすると、カチアは真っ赤な顔で視線を逸らす。
振り向くとクリスも真っ赤な顔をしているので、俺も大凡の察しがついた。
「あとでリンケを酒漬けにして潰してやる。それで良いか」
つまり、カチアとクリスがウノシルディスの町でブルマイスター要塞の奪還を神に誓ったあの一件であろう。
貴族令嬢が最も大切にする長くて美しい髪の毛を神への供物として捧げ、避難民にブルマイスター奪還を誓ったあの一件が城兵に広がったのであろう。
そしてそれが出来るのは、リンケしかいない。
(リンケの奴、やってくれたな。大好きな酒に漬けられるのだから、本望と思うが良い)
「違うのですベルン。確かにあの話を喧伝したのはリンケなのでしょうが、そんな事はどうでもいいのです。私は・・・・・のです」
カチアの声は途中で涙声に変わり、全てを聞き取る事は出来なかった。
ふと後ろの妹の方を見ると
「バカ兄貴。
カチア様は約束通りに皆を守る事が出来て嬉しいのです。
ほんの僅かな可能性、それを信じて行った努力が報いられて嬉しいのです。
神に感謝しているのです。
それが解りませんか、バカ兄貴」
妹のクリスに二回もバカ呼ばわりされてしまった。
クリスに率いられた学園の騎士達も話が聞こえた者が、みんな頷いている。
クリスの掲げる学戦旗が一際、一層大きくは翻く。
改めて見ると、戦旗と同じ紅の生地に天秤を背景に剣と羽ペンが交差すると言う、何とも戦闘的な意匠を金糸で描き、旗の周りを金モールで装飾している。
(どう見ても騎士団の戦闘旗じゃないか。羽ペンがあるから学園ですって、無理があるだろうこれは)
この学園旗をデザインしたであろうシルデイア殿下の悪戯っぽいお顔を想像すると、風に靡く旗を背景に剣を杖代わりに地面に突き刺し、静かに微笑むシルデイア殿下の、お姿が目に浮かぶ。
その時、ヒルダ様から教わったシルデイア殿下直伝の秘策を行うのは今だと俺の戦場の勘が囁いた。
今だ! 勝利の女神を掴み取るのは今だと
俺はあの時のカチアが神に捧げた髪の毛が入ったペンダントを握り締めた。
「ブルマイスターの兵達よ!
カチア・フォン・ブルマイスターは神との契約を果たし、ブルマイスターを解放した!
カチア様に神の御加護あり!
ブルマイスターに神の御加護あり!」
妹にバカ兄呼ばわりされ事が起爆剤となって、ヒルダ様から『必要があれば使う様に』と言われたシルデイア殿下直伝の秘密兵器を使かう。
右手を突き上げ、俺の今まで生涯で一番デカイ声で叫んだ。
俺の叫びに跪いていたブルマイスターの城兵が飛び上がり叫び出す。
「「うぉーーーーーー~~!!」」
いや、もはや言葉では無い、むさい漢共、獣共の咆哮。
「「ブルマイスター万歳! ブルマイスター万歳! カチア様に神の栄光あれ!」」
◆ ◆ ◆ ◆
城兵達に気前よく手を振り、声援と言うか咆哮に応えていると、カチアが馬の歩みを止める。
様子を見ると、真っ赤な顔で全身を震わせている。
(しまった! これはメチャメタ有り得ない位に怒ってる。シルデイア殿下、閣下の作戦は失敗です。一体どうしてくれるのですか!)
「ベルン! もう・・・もう貴方、なんて事を・・・・なんて事を・・・・・
・・・・・もう最高じゃない!!」
そういうと、カチアは俺の馬に寄せて俺の頬にキスをした。
「あ~~カチア様、何て事を! このバカ兄貴、カチア様から離れなさい」
クリスが騒ぎ出すとカチアは鮮やかに馬を反転させると、今度はクリスの唇にキスをして口を塞ぎ、再度馬を反転させて俺の隣の位置に戻る。
全てが一瞬、軽やか過ぎて無駄に神業過ぎる馬術。
カチアが乗りこなすクラウスまで、得意げに嘶きやがる。
(お前が生まれるのを手伝ったのは俺だぞ。まあ祝福してくれている様だが)
俺の顔に血が一気に上るのが解った。
「俺は、カチア殿と結婚する! 絶対に手放さない! 神に誓う! 俺は、カチアと結婚する!」
そんの光景を見せられた城兵の興奮は最高潮。
今夜は、俺とこいつらが一生忘れられないお祭りになるだろう。
(おれの財布は結婚式前にスッカラカンだ。ま~いざとなればシルディア殿下に前借りするさ)
「してやったり」と口元を扇で押さえて笑うシルデイア殿下のお姿が目に浮かぶ。
シルデイア殿下、このベルンハルト、カチアと共に一生お仕え致します。
ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織。6万の残敵が健在な中、電撃的な騎馬による機動戦術の運用をシルデイは妹のヒルダと腹心の部下のフローラ、そして新しく総騎士団長に任命されたベルンに託した。
開戦から3週間余り、僅かな可能性に全てを賭けたクロスロード大公国でも前例の無い電撃作戦はここに完結する。




