ブルマイスター解放戦11
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「ベルン、ブルマイスター要塞への入城の打合せを行いたいので、カチアとクリスを呼んで下さい。
それと追撃にあたっているライナーとフィッシャー隊以外の部隊は整列の上、休息を取らせて下さい」
ベルンは今のアレクセイと私のやり取りの間、一切口を挟まなかった。
「はっ、かしこまりました」
今も余計な事は何も言わない。
「それと、残敵の確認が終わったら、ブルマイスター要塞に入城します。その連絡も頼みたい」
そんなベルンに私も必要と思われる事のみを指示する。
「リンケを使者として向かわせます」
やはり、沈黙のカチアが乗り移ったかの様に余計な事は喋らない。
「宜しく願います」
ベルンは、ウノ族との戦いに真っ先に巻き込まれ、多くの部下を失い騎士団長として主家であるブルマイスター家滅亡の責任も深く感じていた。
ブルマイスター要塞の攻略を実際に行っていたアレクセイを私が許した事に対して何も思わないはずがない。
(これは早いうちにベルンと話し合う必要があるわね)
「カチアとクリスが参りました。それと、報告があります。
アキム族の手配が終わりました。
我々がブルマイスター要塞に入城後に戦場の後片付けを行ないます」
アキム族の手配が終わったフローラが報告してくれる。
「アキム族の様子は?」
フローラが何故か一番私が知りたい事を報告しないので、私から尋ねる。
「戦が終わった、助かったと言う感じで我々への恐怖心や憎悪感は、感じられませんでしたね。
助命をヒルダ様が『乙女の命』に賭けて約束された事にひどく感謝している様子でした」
『乙女の命』と言う言葉に何故かベルンが反応する。
「お姉様の大好きな髪の毛を上げたのだから、それくらいの効果が無ければ困ります」
私は偽悪ポく言ってみるが、この演技はフローラには通用しない。
単なる私の照れ隠しだ。
「ヒルダ様は、髪の毛と軽く言われますが、ウノ族にとっては、そうでは無いのかも知れませんよ・・・・」
何か知らないが、やけに楽しそうに笑うフローラ。
こういう表情のフローラには裏がある。
ベルンも何か神妙な顔で考え込んでいる。
「ベルンもフローラもこの件は入城後にクルト伯爵も交えて話し合いをしたいと思います。
特にベルンには思う所が多々あるとは思いますが、それまで待ってもらえますか?」
「はい、カチア様。アレクセイ殿とは直接の面識はありませんが、クルト伯爵とは確かに手紙による遣り取りがあった事は存じております。要塞の様子からも彼が本格的な攻城戦を行わなかったのは、事実なのでしょう」
「フローラも何か知ってる様だし、きっちりゲロってもらいましょう」
「ヒルダ様、淑女の言葉ではありせんよ」
語尾に(ま~~嫌だ)と言う貴族言葉が続く様にフローラが軽く私の攻撃を避ける。
「・・・まあいいわ。みんな集まったようね」
どうせ、しばらくは素直に教えてはくれそうに無いので話を切り替える。
「はい、ヒルダ様」
まだ楽しそうなフローラ。
(これは、よっぽど私の知らない裏があるらしい)
「入城の順番ですが、一番はカチア、その横にベルン。
先頭は二人にお願い、カチアはブルマイスター家の旗を、ベルンはブルマイスター騎士団旗を掲げて入城して下さい」
「有難う御座います。ヒルダ様」
「身に余る光栄に存じます。謹んでお受けいたします」
二人が騎士の礼で了解するが、カチアの目には涙が浮かび、少し声が聞き取り難いのは仕方の無い事であろう。
「2番と言うか3番手はクリスが弓騎兵を率いて学園旗を掲げて進む事」
私はまだ騎士の礼を崩さないカチアの肩に手を添えて言う。
「かしこまりました」
クリスも騎士の礼で了解する。
「その後、少し間を開けてフローラとウノシルディス騎士団が入城します。
私は最後尾を進みますので、先行した4人にはクルト候と共に我らを出迎えてもらいたい」
「かしこまりました」
ようやく立ち上がったベルン、カチア、クリス、フローラが了解する。
「フローラにはウノシルディス騎士団旗を掲げてもらいます」
「かしこまりました」
フローラは特に騎士の礼は取らず返答のみを行う。
「あの、ヒルダ様は?」
フローラが私に尋ねる。
「やっぱり、私も旗を揚げないとダメ?」
「ダメな事はありませんが・・・・一応、ヒルダ様はシルデイア殿下の名代ですから」
「じゃあ仕方ないので、旗持ちにクロスロード大公国の旗を揚げてもらって入城します。フローラ、適当な人を選んで下さい」
「全く、こういうのは形も重要なんですよ。ま~今回は別に構いませんが」
そうこうしている内にブルマイスター要塞に連絡を取りに行っていたリンケが帰ってきたが、顔は普通であるにも関わらず、強く酒の臭いがする。
「リンケ、お前まさかこの重要な連絡任務の途中で飲んだのか?」
ベルンが少し詰問調でリンケを問い詰める。
普段部下を頭ごなしに叱る事のないベルンにしては珍しい詰問調に私とフローラ、カチア、クリスは首をかしげる。
「冗談じゃありません。
いくら私が酒好きでもこの重要な伝令の途中に飲む訳ないじゃ無いですか。
ただ、解放された城兵に文字通り酒を浴びせ掛けられただけです。
報告致します。
学園の生徒の宿舎、施錠の出来る倉庫の確保に半刻ほど頂きたいとの事です。
城内は戦勝祝いで既にお祭り騒ぎ。
無礼を働いた者は今回だけは鞭打ちでご容赦頂きたいとの事です」
ベルンに無実の罪を疑われたリンケの報告には軽い怒気が感じられる。
「ふ~~~、ヒルダ様。入城は一刻ほど後の方が良さそうです」
リンケの報告を聞いてフローラが「仕方ない」と言う感じで言う。
「そうですね、しかしここはどうも場所が悪い。ブルマイスター要塞の入城門近くまで移動する。入城は一刻後に行う」
「かしこまりました。リンケ・・・もう一度行ってくれるか」
「はい、もちろんです。
酒は飲めなくても美女がシャワーで迎えてくれますから。
それでは失礼いたします」
やけに丁寧な敬礼をリンケはして消える。
「美女のシャワー・・・・(そんな者がいる訳が無い)」
ベルンにすれば、籠城を決めた要塞に美女がいる訳がないと考え、思わず口に出ただけである。
しかし、沈黙のカチアとしてお姉様の筆頭侍女兼筆頭秘書を約束されている彼女とその側近にして恋人でもあるクリスがそれを見逃すはずも無く。
「ベルン殿・・・」
「お兄様・・・」
と絶対零度の視線と冷凍ブレスのダブルアタックにあえなくベルン撃沈。
酒が大好きなのにきちんと酒を断り任務を全うしたリンケに無用な疑いを掛けたベルンは、リンケの狙い通りにキッチリ落とし前を払わされる事になったのであった。
「私は、良くこの緊張感のない幹部を率いて勝てたものだな」
首を横に振りながらしみじみと言う私に
「まったくです、これだから女に飢えた戦場帰りの男は・・・」
とフローラも長い黒髪の掻き揚げて白いうなじを披露し、半目でベルンを見下しながら相槌を打つ。
二人の上官も私的楽しみの為にベルンに止めを刺すのを躊躇う理由は全く無かった。
並みの男ならトラウマになる攻撃を意識を飛ばすと言う高等技術でギリギリ回避したのは、さすがベルンと言うべきであろう。
ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織。6万の残敵が健在な中、電撃的な騎馬による機動戦術の運用をシルデイは妹のヒルダと腹心の部下のフローラ、そして新しく総騎士団長に任命されたベルンに託した。
開戦から3週間余り、僅かな可能性に全てを賭けたクロスロード大公国でも前例の無い電撃作戦が発動する。




