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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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ブルマイスター解放戦9

「梶 ゆう」の初回投稿です。

書きながら色々勉強して行きたいと思っています。

この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。

皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。

火曜日と金曜日に更新を行います。


「宜しければヒルダ様、お考えをお聞かせ頂けますか」

総参謀フローラと総騎士団長ベルンであるならば、お姉様が考える戦後の対応について知っておいて貰うのは悪い事では無い。

フローラは出陣前に基本的な事は知っているし、軍事の専門家であるベルンなら、前に私とエリーとやらかしてしまった、策士同士が暴走した黒歴史の再来にはならないでしょうし。


「一つは、あの一団が部族の旗を上げた事。敗残軍が逃げ出し、味方が壊滅状態になるまであの旗は有りませんでした」

フローラもベルンも頷く、特に敵の司令部を開戦当初から探っていたフローラがあの旗を見逃すはずがない。


「壊滅寸前の部隊の士気を保つ為に上げたのでしょうか」


「いやフローラ殿、奴らにそんな余裕はもう無かった。敵の司令官が我々と戦うのは、これが2度目だ。旗一つで士気が上がるなら最初から揚げるだろう」


「おそらく、敵の指揮官は部族の誇りである旗を揚げたくても揚げれなかったのよ」

フローラには意味が解らなかったらしい。


「軍監が逃げ出したか、戦死したのでしょうな」

ベルンの説明にフローラの表情が曇る。

敵の指揮官の苦しい立場も理解したようだ。


「先の帝国の大敗の時、帝国に従って出征はしたけれど、お父様はクロスロードの公国旗を掲げ、お父様の戦旗を掲げて戦いに臨まれたはずよ。

少なくともクロスロードの騎士団はクロスロードの騎士の誇りを持って戦ったはず。

しかし、あの部族は壊滅寸前までそれすらも許されなかった。

あの部族旗を揚げる事を命じた指揮官と部下達は、最後は部族の誇りを掲げて死ぬ覚悟を決めたのでしょう。

私の大嫌いな命を軽んじる騎士道精神。

ですが絶望的なこの戦いの結果を考えれば気持ちは理解出来ます」

騎士であり武人でもある二人に今の私の言葉は正確に理解された。


「確かに一言でウノ族と言っても主流もあれば反主流もあるでしょう。

そう言う意味ではブルマイスター要塞攻略は略奪対象として旨味が少ない損な仕事です」

ベルンは客観的事実から、私の推論を補強する。


「つまり彼らは反主流派。戦利品を持って逃げているのは主流派ではあるが末節の派閥に属する者達ですね」

フローラも私の推論を補強し、ベルンもその内容に同意する。


「この戦いの後、お姉様はウノ族との講和を考えていらっしゃいます。フローラは憶えている?」


「はい、ヒルダ様。出征前にそう言っておられました」


「初めて伺うお話ですが、確かに戦争後の対応は必要です。同じ講和を行うのであれば、この戦争を引き起こした現在の主流派を排除した後に非主流派と講和を結び統治させた方が万事スムーズに運ぶでしょう」

さすがベルン、一瞬でお姉様のお考えを理解したらしい。

この辺りの政治能力は、フローラやカチア達よりも一枚上手というか、向き不向きの問題ね。


「そして、もう一つは、敵指揮官の能力です。

いくら非主流派でも無能では使い物になりません」


「最初は典型的なファランクス陣形でしたが、ロングボウ部隊を中軍に隠していました。

我が軍が騎兵で構成されている従来のクロスロードの部隊であれば、厄介な相手になったはずです。

更に左右から挟撃に柔軟対応して隊形を変えましたね。

確かに並み指揮官や寄せ集めの軍ではあの部隊の運用は不可能です」

ベルンの指摘に私もフローラも先の戦いの流れを思い出し納得する。


「驚嘆すべきは、左右の陣がアーレイに破られている最中に、ロングボウ兵を塹壕に隠蔽し我が軍の弓騎兵の待ち伏せを図った事です。

左右のファランクスがアーレイに蹂躙され壊滅に瀕しているあの状況でです。

恐らく初見にも関わらず、アーレイの爆音と惨劇の中、私達の想像を超えた対処を行いました。

並みの指揮官、並みの兵ではありません。もう100メートル接近していたら、相当な被害が出たはずです」

フローラに言われるまでも無く、あの勝利は運が左右した反省点が数多くある戦であった。


「そして今の戦いで見せた散兵突撃です。

兵の一人一人に司令官に対する信頼と勇気が無ければ、あの決死の突撃はありえません。

カチアやクリス部隊だったからこそ、後退迎撃のスムーズな運用が可能でしたが、他の部隊であったら、平行追撃に持ち込まれた可能性が高い。

それともう一点、3週間近く攻城戦を行っている割にはブルマイスター要塞が綺麗です」

(遠距離から狙撃も出来るし、近くに落ちただけど周囲の人間をなぎ倒すアーレイの威力を知っていながら、『死中に活』を求めるあの戦法は並みの兵では成立しない)


「ヒルダ様もお気づきでしたか。確かにその通り綺麗過ぎます。敵は恐らく本気の攻城戦を行っていません」


「初見でこれだけの対応をしてくる司令官で、反主流派の人間です。お姉様も興味を持たれる人物であると思います」

締め括った私に二人も納得した様だ。



「それでですね、ヒルダ様。本当に白旗が揚がりました」

フローラに言われて、私もベルンも望遠鏡で確認する。

タイミング的に私がさっき出した命令によりアーレイの攻撃が収まった瞬間であろう。

敵の指揮官は、それだけで此方の意図を理解したらしい。


「残存兵の武装を解除。兵は拘束してブルマイスター要塞入り口の右にある広場に集めて。指揮官とお付の者3名までとブルマイスター要塞開放前に会います」


「監視の為にカチア隊とクリス隊から槍騎兵を50名ずつ割きます」


「要塞開放前で宜しいのですね」

フローラが念を押す。


「はい、その時点であれば、捕虜に関する扱いは、私の一存で決めれますから」

チラリとベルンを見ると軽く頷いたので問題は無いのであろう。


「謁見はここで行ないます。下に連れてきて下さい。見下す事になりますが、捕虜の謁見ならば構わないでしょう」


「問題ありません。それよりも、ライナーとフィッシャー隊への追撃命令はどうしますか」


「事前の打ち合わせ通りに日没まで追撃戦を実行。

戦果を焦る必要はありません、敵の伏兵に注意。戦利品は放置する事。ついでの作戦です、味方の損害を抑える様に」


「かしこまりました」


「さて、敵の指揮官との対面が楽しみです。ひょっとしたらこの戦いで得られた唯一の戦果かもしれません。コーヒーを頼めるかしら、苦くて美味い勝利の味よ」

私の最後の一言に今まで渋く決めていたベルンが許しを請う目で私を見た。

ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織。6万の残敵が健在な中、電撃的な騎馬による機動戦術の運用をシルデイは妹のヒルダと腹心の部下のフローラ、そして新しく総騎士団長に任命されたベルンに託した。

開戦から3週間余り、僅かな可能性に全てを賭けたクロスロード大公国でも前例の無い電撃作戦が発動する。


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