ブルマイスター解放戦6
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「ベルン、全軍の停止を命じて下さい。その後、警戒態勢のまま半時の休息とします。
今後の作戦を打合せしますので、カチア、クリス、ライナー、フィッシャーを呼んで下さい」
ハッキリとブルマイスター要塞が見える所まで前進した所で休息を命じる。
(遠目ではあるが、3週間も攻城線を行っていた割には城壁に戦いの跡がほとんどない)
「かしこまりました。伝令!」
ベルンが伝令を呼び私の命令を伝えさせる。
それを聞いて、本陣の兵達も本陣の体裁と私達の休息の用意を整える。
「ヒルダ様。偵察の報告です。宜しいでしょうか」
出来上がったばかりの本陣の休息所兼作戦所に全員が席に着くなり、フローラが切り出す。
「どうぞお願いします」
私達も席に付きながらフローラの報告を待つ。
「幾つか有りますが・・・ブルマイスター要塞と連絡が取れました」
「「クルト様はご無事か」」
フローラの報告を遮って俺、ライナー、フィッシャーが立ち上がる。
カチアとクリスは席に座ったまま、何かを飲んでいる。
「現在、再開した腕木通信で確認中です。判明したら真っ先に報告します。落ち着いて下さい」
フローラが子供に諭す様に言う。
「・・・済まない。熱くなってしまった。宜しくお願いします」
俺が代表して頭を下げ皆を席に座らせる。
(おかしい、俺達は完全に子供扱いじゃないか)
「いえ、当然の事です。謝罪には及びません」
今度は微笑ながらフローラ様は言う。
カチアとクリスは当然と言う顔でやっぱり、何かを飲んでいる。
(この二人以上の女傑のシルディア様に鍛えられているだけの事はある。俺はこの嫁と妹と渡り合えるのだろうか)
「次に先程蹴散らした部隊の状況ですが、残敵は1500程度。
攻城軍と合流する事なく、糧食や戦利品に荷造り、つまり逃げ支度ですが・・・匂いますね」
フローラ様が戦闘食のカンパンを摘みながら報告する。
顔に掛かる長い髪の毛を左手で後ろに流す仕草がたまらなく美しい。
「追撃を優先するなら、急ぐ必要が有ります。
しかし、戦略的には、要塞の解放が優先します。どちらを優先しますか」
俺は、ブルマイスター要塞を含む地図を広げる事で、フローラ様から目をそらす。
(カチア殿、これは浮気ではない。男なら誰でも引き寄せられる罠なのだ)
「ベルン、敵の撤退ルートは想定出来る?」
ヒルダ様もカンパンを得体の知れない黒い飲物で流し込みながら尋ねる。
(カチアやクリスも飲んでいるが、あれは、何だ?何やら良い匂いがするが)
「戦利品に手放さないとすると、馬車を使うしか無いですから、このルートしかありません」
俺がブルマイスターから川に沿って約20キロ程遡り川に架かった橋に至るルートをなぞるとヒルダ様とフローラ様が頷く。
「人だけなら渡れる浅瀬はどうですか」
同じ様に地図をなぞるヒルダ様の指と一瞬接触する。
「ブルマイスターから10キロ遡れば、今の季節で有れば、何処でも渡河可能です」
ヒルダの質問に俺は『何も無かったですよ』と言う様に冷静を装い答える。
(カチアの顔が怖くて見れない。全部年上の俺で遊ぶこの二人の罠なのだ)
「ヒルダ様、今から川を堰き止めるのは、無理ですよ」
フローラは、ヒルダが考え始めた策略を先回りして止めたらしい。しかし、川を堰き止めるとはどういう事だ?
「チョッとした定番の策の検討、思考的なお遊びじゃない」
両手の手の平を胸の横で上に向けて『やれやれ』と首を振るヒルダ。
「チョッとしたお遊びに他人を巻き込んで大騒ぎにしてしまう悪女は、シルディ様だけで十分です」
澄ました顔で総大将で公爵家令嬢のシルディ様にエゲつないフローラ。
「腹心の部下にそんな風に思われているとは・・・・『頑張っているのに悪女扱い』される可哀想なお姉様」
『よっよっよ』と天を仰いで手を合わせる嘘っぽいヒルダ。
不敬罪スレスレの二人の会話に俺達は、聞こえない、覚えない、関わらないの三無主義を貫く。
(お二人ともシルデイア殿下を悪く言うが、男から言わせると二人とも立派な悪女です。それにしても、さっきの川を堰き止めるとはどういう事だ?水が無くなれば渡りやすいじゃないか)
◆ ◆ ◆ ◆
「それにしても、みすみす戦利品を持って帰らせるのは癪よね。ベルン、何か策は無いの?」
ヒルダ様の無茶振りに両手の手の平を胸の横で上に向けて『やれやれ』と首を振るフローラ。
(お二人とも何かそのポーズを良く見る気がするのですが、流行っているのですか)
「個人で背負っている戦利品は、適度な速度で追撃を行えば、荷を捨てて逃げ出すでしょう。馬車に詰め込んでいる物については、小細工をする暇を与えずに攻撃してやれば、荷を捨て逃げ去るでしょう」
俺は苦笑いしながら常識的な説明を行う。
(とうとう、来た直接攻撃を無難にかわす)
「あの策を考えた指揮官であれば何かありそうですが。・・・まあ今は、戦利品の奪還よりも、攻城軍の殲滅に重きを置くべきでしょうね」
『つまらない』と言う様にヒルダ様は言う。
「はい、ヒルダ様。今回は、ブルマイスター要塞の救援が主目的です。
それ以外の事は、今はお捨て下さい」
かなり真剣にフローラ様が言う。
「それが宜しいかと存じます」
俺もフローラ様の意見に同意する。
「ベルン」
ヒルダ様がニヤリと笑いながら俺を呼ぶ。
(ついに来た~~~。カチア殿、俺は悪くない)
「はい、何でしょうか」
俺は、ヘビか何かに睨まれた気がする。
「『つまらない』 でも今回はそれが正解ね。ベルン達も飲みなさい」
ヒルダ様は、イタズラっぽい感じで、俺の返事も聞かずに自分が飲んでいる得体の知れない、真っ黒い飲物を俺達にも用意させる。
(これは、絶対ロクな事を考えていない)
真っ黒い飲物を注がれ俺やライナー、フィッシャーが思案していると、伝令がヒルダ様にメモを渡す。
さっと目を通すなり、ヒルダ様はコップを上に掲げる。
「全員無事! 吉報よ! 伯爵も二人の兄も健在! ブルマイスターに乾杯!」
「「ブルマイスターに乾杯!!」」
ヒルダの乾杯に俺達も立ち上がり乾杯する。
・・・俺が初めて飲んだコーヒーは、とても苦くて美味かった。
ヒルダ様は勿論、良識派であると信じたいフローラ様まで、面白そうに俺の言葉を待っている。
「苦くて涙が出そうですが、最高に美味い勝利の味です」
「「苦くて美味い勝利の味か」」
ヒルダ様とフローラ様が顔を見合わせる。
「ベルン!そのフレーズは良い」
「エリーに教えて、コーヒーの宣伝文句に採用です」
「お兄様に詩才があったとは」
「シルディ様よりセンスが良い」
(カチア殿、頼むから不敬案件な事は言わないでくれ)
さすがにライナーとフィッシャーは何も言わないが、顔がニヤついてやがる。
『戦を前に何を言っているのか』と以前なら思ったに違い無いが、彼女達と共に戦って奴らも随分毒されてきたようだ。
「それは、光栄な事です」
俺はなるべく自然に微笑んだつもりで謙遜する。
「う~~ん その笑顔は60点」
ヒルダ様の採点は厳しい。
「その微笑が通じるのは、カチアにだけです」
フローラ様の採点では俺の笑顔は落第点らしい。
「フローラ様、酷いです」
カチアよ、突っ込む所はそこじゃない。
「お兄様・・・こっち向かないで」
妹の採点が一番ヒドイ。
「これは、手厳しい」
俺は苦笑いするしか無かった。
ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織する事となります。 6万の残敵が健在な中、戦術的には不味い作戦が開始されます。




