ブルマイスター解放戦4
「梶 ゆう」の初回投稿です。
書きながら色々勉強して行きたいと思っています。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
ヒルダ様達から分かれてライナーと共に前線の槍騎兵の直接指揮を執る為に馬を走らせていると、後方の本陣から『3点鐘』の全軍後退の引き鐘が鳴り響いた。
「戦いは優勢、些細な齟齬だと思うが、やはり『女』だな。引くか。まあ無理をする必要も無いが」
俺は、戦の流れよりも手順を優先させたヒルダ様とフローラ様を『女』と判断した。
前方の弓騎兵の馬が一斉に竿立つ。
その時、弓騎兵の更に100メートル前方で突然土煙が上がった。
(馬が土煙に驚いた。敵は見えなかったが、アーレイの攻撃?)
そう一瞬、そう考えたが、良く考えたら順序が逆だ。
彼女らが馬を棹立のは、土煙の上がる前だ。
「何! 地面から伏兵! これを読んでの『引き鐘』か」
だとすると、彼女らを『女』と判断した俺の考えは間違っていたらしい。
「敵兵! 突っ込め! 守りきれ!」
弓騎兵を守っていた直衛の槍騎兵が40騎、引き鐘を無視して、躊躇う事なく猛然と突撃を開始する。
まだ200メートル以上離れているが、突撃を始めた奴等の殺気が爆発的に俺を覆う。
俺の馬もそれを感じ、馬体が引き締まるのが分かった。
(数秒後に何人かは死ぬ。しかし、敵を目前にしたウノシルディスの槍騎兵が止まる訳がない)
地面から湧き出した敵兵は約500人。
全員がロングボウ兵の様だ。
(ロングボウ兵は使い潰しして良い兵科では無い。敵の決戦兵種。奴らの狙いは最初からこれか)
ロングボウの発射速度はアーレイよりも遥かに早い。
地面から飛び出して数秒で全員が矢を放つ。
馬を竿立たせて、一瞬で方向転換、全力後退をした弓騎兵。
彼女達を狙った矢は、方向転換をした場所の地面に突き刺さる。
その場所から数秒前に全力後退をした彼女達に被害は勿論一切無い。
80騎の騎兵に200本を射掛けて、まさかの無傷。
あっけに取られる敵兵の顔が見える。
(この戦場の混乱の中、何と言う素晴らしい統制と馬術)
一方、突撃を行っていた槍騎兵にも矢が集中する。
自らが囮となる事で直衛していた彼女らを逃がす事を選んだ奴らの狙い通りだ。
槍を振るって矢を落とすが、十騎程が手傷を負い落馬する。
しかし、全員が立ち上がった所を見ると即死した者はいないらしい。
「「「ウラーーー!!」」」
一番近くにいた200人程が歓声を上げて突っ込んで来る。
落馬しなかった30騎程は突撃の勢いのまま体当たりを行い敵兵を吹き飛ばす。
しかし、100人程が騎兵の突撃を避けて、落馬した騎兵に殺到する。
落馬した騎兵はかなりの手傷を負っているが槍を構える。
退く者は一人もいない。
「「「シルディス万歳!」」」
さすがはウノシルディスの騎士、一瞬で覚悟を決めた。
その時、短い笛の音が3回聞こえる。
「全力攻撃? まさかこのタイミングで? 味方ごと葬るつもりか」
俺は、攻撃命令を出したヒルダやフローラの真意を疑った。
(軍事的には、少数の犠牲で戦果を上げれるその判断は正しい。しかし、騎士としては最低だ。所詮貴族のお嬢様か)
「「「反転! 全力攻撃! 通常ボルト! 援護射撃! 各個に撃て! 鍛えしは今の為ぞ!」」」
弓騎兵を率いる部隊長の気合の入った声が聞こえる。
(全力攻撃なのに通常ボルト。200メートルも離れて当る訳がない。牽制には成るが気休めだ。しかし、彼女達は味方ごと敵を吹き飛ばすつもりはない)
全力攻撃にアーレイを使わず、通常ボルトでの援護射撃を命じる部隊長達の心意気に俺は感謝した。
漸く護衛の槍騎兵に追い付く
「続け! 続け! 突撃! 援護射撃が来る。頭を下げろ! 頭を下げろ!」
俺は先頭に立って突撃の指揮を行う。
その時、突撃を開始した槍騎兵の頭上を風が感じられる位の距離でボルトが飛び去り敵に命中する。
200メートル以上離れて、的確に敵を倒す。
そして、味方には当たらない。
何と言う技量、何という胆力、まさに神技。
全身に鳥肌が立つのが判る。
この戦場の混乱した状況で、冷静に命令に従い神技を見せつける恐るべき乙女達。
突撃を行っているウノシルディスの槍騎兵も今の神技に度肝を抜かれる。
「女神! 女神の奇跡だ!」
俺は叫んだ。
「「奇跡だ! シルディスの女神だ!」」
俺と共に突進する200騎の槍騎兵が叫ぶ。
振り返ると、彼女達は誰も矢の行先を見ていない。
髪を振り乱し、真っ赤な顔で必死にグラインダーを操作している。
淑女からは最も遠い、鬼神の闘志を纏ったその姿を俺は『美しい』と思った。
(そうだ! 彼女達はどんな着飾った貴族令嬢よりも美しい。
どんな宝石の煌めきも彼女達の流す汗に比べれば光を失う)
すれ違い様に敵を串刺しで葬り
「よく戦った! 後は任せろ!」
落馬して奮戦する騎士の横を駆け抜ける
騎士の興奮は馬にも伝わる。
奮戦する落馬した騎士を取り囲んでいる敵に俺の愛馬は躊躇う事無く、全力疾走のまま体当たりする。
200騎の槍騎兵の突撃は、既に100人を切った敵の伏兵の先行部隊を文字通り瞬時に粉砕する。
残りの伏兵300に向かおうとした時、左右から発射されたアーレイが殺到する。
50メートルも離れていなかった敵兵の集団が爆発と煙にかき消された。
その煙が消え去らないうちに左右から150騎、合わせて300騎の槍騎兵が突撃する。
敵はひとたまりも無く一瞬で消滅してしまう。
「「ベルン総騎士団長」」
カチアとクリスが叫びながら駆けて来る。
「カチア、クリス、どうして左右の部隊であるお前達がここにいる?」
「本陣から『短笛3回、全力攻撃』の命令が下されました」
カチアが『当然』と言う風に答える。
「全力攻撃の命令の後、お兄様が先頭に立って突撃するのが見えました」
クリスが久々に役職では無く兄と呼んでくれた。
「そうか、分かった。これより追撃戦を開始する事になるだろう。
二人ともそれぞれ左右の部隊を率いて、中央の進撃に合わせて追撃戦に実施せよ。
なお、敵の伏兵に備えて、弓騎兵の前方100メートルに槍騎兵を先行させる事。
敵が反撃の構えを見せた時は槍騎兵は後退、弓騎兵の攻撃で敵を崩した後に進軍する事。
以上だ」
左右のカチアとクリスには、ある程度の行動の自由が与えられている。
今回の突撃は、タイミング的に絶妙なものであり、軍律的にも問題ない。
ただ、カチアとクリスの連携には軍律など関係ない強い結びつきがある事を俺は感じる。
(クリスに見合う男を探し出さないと俺の新婚生活は非常に不味いな)
「「イエス!・ベルン!」」
そんなベルンの思いに関係なく、二人は完璧に揃った敬礼を行い部隊に戻る。
ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織する事となります。 6万の残敵が健在な中、戦術的には不味い作戦が開始されます。




