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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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進撃8

「梶 ゆう」の初回投稿です。

書きながら色々勉強して行きたいと思っています。

この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。

皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。

今週はGW前なので、火、水、木、金に更新致します。


「おはよう、ベルン、フローラ。昨夜のバカ騒ぎ、やっぱり偵察に来たみたいですね」


「おはようございます。ヒルダ様。

ライナー騎士団長に確認を取りました。

昨日夜半、20人程度の偵察隊を発見。

予定通り()()追い払いました」

『唄で』と言う所を強調して報告するベルン総騎士団長。


「それは重畳。

これで間違いなく敵は待ち構えているわね」

『にヒヒ』と聞こえそうなイタズラ成功の表情で喜ぶヒルダとフローラの学園の悪女の幹部1号と2号。


「・・・はい、間違いありません。

既に先鋒偵察部隊は半刻前に出発済み。

本体も10戦隊に分かれ殿軍を残し順次全軍出発いたします」

その二人に苦笑いで報告するベルン。

もうこういった細かい指示はフローラはベルンハルト総騎士団長に丸投げして口は出さない。


「ベルン総騎士団長、戦隊の編成も昨日の打合せ通り、カチア隊の小隊を基軸にして、護衛の騎兵を割り振れた様ね。何か問題はあった?」

フローラも自分も加わった打ち合わせの結果には興味があるようだ。

もっとも打ち合わせとは言っても、ベルンの提案を一方的に説明されただけであるが。


「ウノシルディス騎士団も入城戦の戦いを見ていたそうです。

その時にブルックハルト殿からブルマイスター騎士団の動きと戦術の意味を教えられていたらしく、特に問題はありませんでした。

こうなる事をブルックハルト殿は想定されていた様ですね」

ベルンは他人の良い点を称賛するのを躊躇わない。

20代中頃で騎士団長まで務める実力者にしては珍しい。

この当たりもお姉様が気に入り、フローラやエリーが手元に置きたい理由なのだろう。


「さすが、ブルック義兄様(にいさま)です。チャンスは逃さず、無駄な事はなさいません」

ヒルダの言葉にベルンとフローラが首肯する。


「それではベルン、私はフローラと共に本営軍として騎士団の後に進軍を開始します」


「了解致しました。森を抜けて陣形を整え、昼食を取りブルマイスター要塞に向け戦隊毎に進軍します」


「それで結構です」


「はっ、それでは自分は前方で指揮を行ないます」

鮮やか敬礼を決めるとベルンは前方に向かう。


「戦列線を作らず戦隊毎に戦う全く新しい戦法です。上手くいって欲しいものです」

全く新しい戦法を訓練無しに実行する事に躊躇(ためら)はある。

しかし、お姉様が『戦術はベルンに任せる。思いのままやってみせよ』と言った以上、お姉様が信じたベルンを信じてやらせてみる。


「各戦隊の指揮官が広い視野を持つ事が必要になります。

しかし、うちの学園の子達は士官学校の並みの生徒よりも遥かに高い能力を持っています。

安心して任せて、結果を期待して良いと考えます」

フローラの言葉に私は頷く。


「それにしても、自分の一番の宝物を会ってから数日の人間に任せる事が出来るお姉様は、何と言えば良いのでしょうか。大器、大物、千里眼、ふ~~~ん困った」

お姉様との差を改めて感じてしまう。


「確かにシルディ様は『これは』と思う人物は最初から重用しますね。

商人だったら絶対にしてはいけない信用行為です。

エリーだったら間違いなくそう言いそうですが、そのエリーもベルンを欲しがっていましたから、大将の(うつわ)とはそういう物なのでしょう」

目前の戦よりも人物評価で悩む総隊長のフローラ。


「まっ『お姉様ですから「カチア』『シルディ様ですから』」

上手くハモッった私とフローラが声を上げて笑う。

(そういうフローラも『これは』と思う人物は直ぐに重用するじゃない。お姉様の事は言えないと思うけど、自分の事は見えていないわけね)


その横をウノシルディスの槍騎兵と学園の弓騎兵が一つになった戦隊が通過して行く。

戦の日の朝から呑気な会話をして余裕を見せて笑いあう総司令と総隊長に学園の子達は微笑みながら敬礼して通過する。

一方、槍騎兵達はこれからの始まる戦いに青ざめる位に緊張して最敬礼で通過して行く。


気の毒な位に緊張している槍騎兵達をリラックスさせようと、私は、昨日ライナー騎士団長から覚えたばかりの右手の親指を立てる仕草で、

「ブルマイスターを取り戻せ!」

と声を掛ける。


兵達が周りのキョロキョロと見る。

「・・・」

一瞬の間を置いて、槍騎兵達だけでなく、学園の弓騎兵達まで右手を突き上げ

「イェス!ヒルダ! ブルマイスター万歳!」

と叫び出してしまった。


この手の掛け声は、昨晩のノリで一つの戦隊がやりだすと残りの戦隊にも伝播する。


当然全部隊に広がり森を揺るがす大音響となり、驚いた鳥が一斉に飛び立つ。

(夜中に叩き起こされ、早朝にビックリさせられて、鳥さん驚かせてごめんなさい)


「・・・最初に声を掛けたのが、偶然にもウノシルディス騎士団の中でもブルマイスターの出身だった様ですね」

『やれやれ』と言う表情で冷静に状況を分析して解説してくれるフローラ。


「・・・お姉様ばかりか私まで、やってしまった・・・。これが奇襲作戦だったらオジャンでした」

トホホ顔でフローラに反省する。


「別に構いません。士気が上がって結構な事です」

とおかしそうに笑うフローラ。


「気をつけます」

別に悪い事ではないので、あえて強気に謝罪はしない私。


「いえいえ、さすがシルディ様の妹君です。無意識で引き起こす大騒ぎ、血は争えませんね」

当然その隙を逃さず、きっちり(とど)めを刺しにくるフローラ。


「・・・私達も進軍しましょう」

恨めし気な目でフローラを見上げて私は提案する。


「イェス!ヒルダ! ブルマイスター万歳!」

(フローラ、頼みますからそれを我が部隊の挨拶にするのだけは堪忍して下さいね)

ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織する事となります。 6万の残敵が健在な中、戦術的には不味い作戦が開始されます。


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