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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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進撃7

「梶 ゆう」の初回投稿です。

書きながら色々勉強して行きたいと思っています。

この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。

皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。

火曜日と金曜日に更新を行います。

フィッシャーに呼ばれて500メートル程を全速で駆けて来たので、少し息が苦しい。

「ライナー隊長、ちょっとあの白樺のある辺り、人の気配がします」

荒い息を鎮めながらフィーシャーの指さす方を見る。


「・・・ああ、いるな・・・」

本体の宿営地からは2キロ程前方に急いで作り上げた陣地に俺達はいる。

急造陣地なのでその辺の木を切り倒し、杭にして打ち込んだだけであるが、馬を持たない偵察部隊程度であれば十分な備えである。


おまけにヒルダ様から支給されたランタンを陣地の20メートル程前方に10メートル間隔で設置したので、明かりが途切れる事無く延々4キロも宿営地を半円状に取り囲んでいる。

ランタンを500個も使った贅沢な警戒陣地である。


「さて、どうするかな・・・」

こんな事で悩むのも、考えて見れば妙な話である。

普通なら、警戒部隊が敵の斥候を発見したら、射殺すなり、白兵戦を挑むなり、とにかく排除すれば問題ない。


しかし、総騎士団長のベルンは「警戒線の越えた時以外は、偵察隊の排除の要無し」と命令した。

その目的が早く発見してもらって、迎撃に向かってきた軍を叩き潰す為と言うのだから恐れ入る。

しかし、本当に恐ろしいのは、これを迎え撃って殲滅しようと言う目論見に『その手で行きましょう』と言い放つ学園の悪女達の胆力に違いない。


そんな男前の学園の悪女達が手ぐすねを引いて待っている罠である事を知ってか知らずか、今のところ偵察隊は警戒線を越える様子は無い。

(まあ、別の見方をすれば、敵に怯えて過剰な警備をしている様にも見えなくもないが)


従って排除する必要は無いが、そこに敵がいるのに知らない振りをするのも難しい。

(部屋に『G』がカサカサしている音が聞こえるのに、知らない振りは出来ないよな)


俺は警戒は緩めず事前の作戦通りに行動する事にした。

「よし!お前らもこんな無駄な警戒で退屈だろう。俺が昨日仕入れた唄を披露するぞ」

警戒陣地で突然こんな事を言い出したら普通シラけるが、事前に作戦を知っている部下も作戦通りにノッテくる。


「ライナー騎士団長。新曲楽しみです」

「待ってました」

「騎士団長、ギターです」

とノリの良いブルマイスター騎士団の面々達。

(いいか、これは作戦だぞ、作戦。それにしても、しっかり準備してやがるし。こいつらも学園の悪女達の影響で常識がおかしくなってきやがったな)



「それじゃ、シルデイア殿下がクズ貴族共に三行半を叩きつける話」

(こんな適当な曲名でいいのだろうか)


「いょ! 待ってました」

「景気のいい奴頼みますぜ」

と好き勝手に盛り上がるブルマイスター騎士団の面々。


   ◆    ◆    ◆    ◆


「ウノシルディスに蛮族侵攻

赤白赤(こうこくのきき)を掲げる伝令隊が

五日五夜(いつかいつや)、街道を爆走する


既に愛馬は倒れ

八頭目を乗り継いだ騎士は

体を縄で鞍に縛り付け

命、まだ果てるなと願い

ひたすらに駆ける


鳴り響く

公都の早鐘

開かれる王門

謁見の間に続く

紅の絨毯を

騎馬は突き進む


黒髪の乙女が叫ぶ

直ちに軍を興すべし


しかし、公国騎士団は黙して動かず

10万の蛮族に臆して動かず

貴族の誇りは惨めに崩れる


黒髪の乙女は乞い願う

(われ)はヴァルキューレの意思を

継し者なり

我に『戦旗』を下賜すべし


美しきピンクの(ほほ)

青白く震え

バラ色の微笑みを浮かべる唇は

紫色となりて

固く引き締められる

されど、その眼光は力強く

誇り高き光を失わず


紅の戦旗を掲げ

黒髪の乙女が述べるは

決別の言葉(ことのは)


(われ)の最後の願いは

(われ)らの血を

吸い込みし土を

いつの日にか

クロスロードに葬られん

事なり


決意を示す紅の戦旗は

力強き風を纏い

ヴァルキューレの乙女は

戦場に立つ


(われ)の戦旗を共に仰ぎ見る

勇者は誰か

(われ)がヴァルハラに導きし

勇者は誰か

クロスロードの騎士を継ぎし

勇者は誰か


熱き勇者の魂が

立ち上がる

己の矜持のままに

愛馬を()

共に死せんと駆け参ず


クロスロードの

騎士の誇り

永遠に滅びず」


「「「うううおおおお! クロスロード万歳!!」」」


「「「くたばれ!臆病者!!」」


胸の鎧を叩いて騎士達が吠える。

作戦を忘れ、演技を忘れて、漢共(おとこども)の眼に涙が光る。

真夜中に鳥が一斉に飛び立ち、その雄たけびに狼が負けじと遠吠える。


事前に打ち合わせをした通り、全ての警戒線の兵も一斉に叫び出す。

「「クロスロード万歳!!」」


これだけ夜中に騒げば、どんなに間抜けな見張りでも飛び起きるだろう。


「どうだ?」

ずっと敵を監視していたフィッシャーに聞く。


「叫び声に驚いて、チラッと兜が光るのが見えました。その後気配が消えたので立ち去ったものと思います」


「そうか、作戦通りだな。しかし、これはあれだな、クマ狩りだな」


「唄で敵を追い払うとか、また神話が増えましたね」


「今更だ。この軍にいると常識とか戦いの恐怖とか、真面目にやっているのが馬鹿らしくなる」

同感ですとフィッシャーが不敵に笑う。


「さ〜、もう一曲景気付けにいくか。次は『勇者と乙女』の唄だ」


「まだやるんですか。効果はもう十分だと思いますが。それにその唄はベルン殿とカチア様に怒られませんか」


「大丈夫だ、ヒルダ様とフローラ様から許可は貰っている。それに、盛り上がってきた所で突然に止めたらかえって怪しまれるだろうが」

(俺の唄でこれだけ盛り上がるのは、本当に久ぶりだぜ。ここで止められるかっていうの)


「まあ、明日はブルマイスターを解放する大戦(おおいくさ)。景気付けに盛り上がりましょう」

(単純にご自分がノッテ来ただけでしょう。まあ部下もここで終わったら拍子抜けでしょうが)

唄にある事件が発生したのは、本編の開始前のウノ族がウノシルディスに侵攻した直後に事です。

腕木通信でいち早く事態を把握したシルデイアは学園から公都に向かい、ウノシルディスからの早馬による連絡を何食わぬ顔で待ちます。

もっともその間にシルデイアは貴族相手の工作とシュナイザー殿下への工作を行い、早馬の到着に合わせて緊急招集された席においてシュナイザー殿下から戦旗を下賜される事に成功させます。

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