ウノシルディス戦役終結
わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。
そんな作者の願望から始めた物語です。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
短編の外伝を作成しました。
こうれからも不定期で作成してまいります。
『主人公じゃないけど頑張ります』
40話から45話のお話です。
『帝国の崩壊』
本文で語られている「先の大敗」のお話です。
昨日、防御要塞の司令部設備の一部完成した。
とは言っても石材やレンガを一切使用していないから、大きな丸木小屋と言った方が相応しいけど。
しかし、ちゃんとした屋根と粗末だがベッドのある部屋で久しぶりに眠る事が出来た。
「おはようございます。シルディ様」
聞きなれた声で私は目覚めたが、有り得ない声にまだ夢の中と認識する。
「おはようございます。お姉様」
ああ、これは完全に夢ね、久ぶりのちゃんとしたベッドで寝たせいだろう。
夢の中なら何をしても問題は無いって事ね。
「え~~い五月蝿い、美女を起こすなら、王子様にキスをさせなさい」
私はそう夢の中で叫んだ。
「それじゃ遠慮無く開けるよ。カチア、ヒルダ、そこを退いて」
私の睡眠を妨げる無粋な悪魔が夢の中に現れた。
『チュ』
唇に何かが触れたので、バネ仕掛けの人形の様にシーツを勢い良く跳ね飛ばして上半身を起こす。
そして左手には最近ずっと抱いて寝ているサーベルが握りしめられていた。
だが、跳ね除けたシーツはブルックに素早く抑え込まれる。
「おはようシルディ。
王子様ではないけど婚約者の口付けだよ」
私の驚きに全開に見開かれた視界に婚約者のブルックの顔があった。
「・・・前にテントの中に顔を入れた時に、今度やったら許さないって言わなかったっけ」
氷点下の声で左手に握ったサーベルをブルックに見せる様に持ち上げる。
「今回はちゃんと許可を貰ったから、例外だよ」
サーベルを抜かない様に私の右手を押さえ、左の肩をシーツ越しに押さえながらブルックが言う。
「許可?」
「そう、『美女を起こすなら、王子様にキスをさせなさい』と言っただろう」
こんな下らない冗談が男女の粋な会話だと誤解しているこいつに付ける薬は無い。
だけれども、朝からブルックと他愛も無い話が出来て私は楽しかった。
「確かに・・・・そう言ったわね、・・・夢の中で。
じゃあ今回は問題無い事になるわね。
おはよう、ブルック」
そう言って私は自由になる首を伸ばして、ブルックにキスを返した。
「え~とねシルディ。俺としては別に構わないのだけど、扉の外にヒルダとカチアがいるのだけど」
そう言われて私は扉の方を見ると、ヒルダとカチアが真っ赤な顔で口を押えて立っていた。
勿論、口は押えても、二人の目は全開で私を瞬きもせずに見開かれている。
私の体は恥ずかしさと怒りに小刻みに震え、顔の血が上るのを貴族の誇りを総動員して抑え込む。
「ブルック、私の肩からその手を除けてくれるかしら」
跳ね除けたシーツで体の輪郭が露わになった自分の体を見ながら地の底から湧き出す様な声で言った。
「この手を除けるとあの二人から君の体を隠す物が何も無くなるけど?」
とか何とか言いながら、こいつは私の全身を撫でまわす様に見て楽しんでいる。
しかもこいつは、これが私が喜ぶ婚約者同士の粋な朝の挨拶と本気で思っている。
「ヒルダ! カチア! この無礼者を引きずり出せ!
そして、貴方達もドアを閉めて廊下に立って反省してなさい」
私はシーツを手繰り寄せて体を隠し、私の素敵な朝をぶち壊してくれた者達に命令した。
「「イエス! シルディア!」」
そう叫ぶとヒルダとカチアはブルックの右手と左手を抱え込んで部屋から連れ出し扉を閉ざした。
ヒルダとカチアとブルックに寝起きを見られ・・・そうじゃない、それは別に構わない。
ヒルダとカチアにブルックとの情事・・・・
違う! これはじゃれ合い・・・そう、じゃれあい。
あれは恋人同士の情事では断じて無い。
いくら私でも妹と、友人で筆頭秘書の目の前で情事を晒して楽しむ様な変態性癖は無い。
(あ~でもきっと、「宿所が出来たら早速、恋人と情事にふけって、それを妹や秘書に目撃された」って事実は歪んで噂になって、「稀代の悪女」伝説が又、増えるんだろうな~)
「・・・それでヒルダ、今朝到着するなら、どうして先に連絡を入れなかったの」
私は扉が閉められたのを確認して、下着を付けながらヒルダに聞く。
今日の色は赤よ赤、燃える様な怒りの色、私は今日は朝から、エンジン全開、血圧MAXよ。
「私とカチアがその連絡に参りました」
しれっと、当然の様にヒルダが言う。
「ヒ~ル~ダ~」
ガーターベルトにストッキングを付ける手を止める。
そして、さっきも使った地の底から湧き出す様な声で名前を呼ぶ。
「本当はお姉様を驚かす為だけに先行して来ました」
うむ、声に怯えた感じが上手く混じって、非常に宜しい。
それにしても、今回のイタズラは15歳のヒルダの発想にしては、ちょっと酷くない?
「・・・・仕組んだのは貴方じゃないわね。黒幕はフローラで間違いないわね」
黒いブラウスを着ながら確信する。
「はい。私達の到着を待たず戦勝パーティーをした事へのオトシマエだそうです」
とうとう、ヒルダは悪役公爵の極悪令嬢らしく全責任をフローラになすり付けた。
(まあ、フローラが主犯である事は間違い無いから、間違ってはいないけれど)
「・・・そっか・・それじゃ仕方ない所もあるけど、それなら、ブルックはどうして参加したの?」
さっと髪の毛を梳かして最近お気に入りの頭の上の方で一纏めにするスタイルで決める。
「何でも鹵獲した物資の整理作業に当たっていたクヌートが捌ききれなくなって、先輩のブルックに泣きついて戦勝パーティーのあと、三徹する事になった事のオトシマエだそうです」
あ~~なんかそれだけを聞いていると面倒な仕事を押し付けた私が一番悪い奴の様に聞こえる。
まあ、実際その通りなんだけど。
「あれ? それではクヌートの手伝いを自薦したうちの子達も三徹に付き合ったの?」
だとするとそれに気が付かなっかった私は非常にマズイ。
「いえ、うちの子達の手伝いは、朝から夕方までで終わり。
徹夜したのはブルック義兄様とクヌートと士官候補生だけです」
それならまあ、許されるかな。
「しかし、よく士官候補生が付き合ったわね。結構クヌートって士官候補生に人望があるのかしら」
戦闘でもない徹夜の事務作業を自発的にさせたのであれば、クヌートの人望は中々のものだ。
「・・・いえ、うちの子達が食事を差し入れをしたり、洗濯をしたり色々と世話を焼いたそうですよ」
違った、士官候補生はうちの子達の手の平の上で遊ばれたらしい。
うちの子達の公国騎士の娘が多いから家事全般出来る健康的な美人か、可愛い子ばかりだものね。
胃袋と身の回りの世話を甲斐甲斐しくされたら、初心な候補生なんて初陣の戦場の吊り橋効果もあってイチコロか。
「これは学園に凱旋したら、教会の空き時間の取り合いになりそうね・・・」
私が何気なく言った事に対して、一刻の間が開いた。
◆ ◆ ◆ ◆
「あの、こんなイタズラをして厚かましいとは思うのですが・・・・。
私の結婚式の祝福は教会の聖職者よりもシルディ様に祝福をして頂けるとありがたいのですが」
扉の外に立たせているカチアが初めて口を開いた。
さすがにちょっとイタズラにしては酷いけど、ヒルダとフローラ、それにブルック。
悪の3大幹部が組んだとすれば、正式には戦隊長でしかないカチアが逆らう事は難しいだろう。
それにブルックが跳ね除けたシーツを素早く押さえてくれたから、私の裸を見たのはブルックだけだし。
そう考えると私にはそれほどの実害は無かった気がする。
この後に加算される悪婦、悪女伝説を除けば。
私は、勢い良く扉を開けると、カチアの前に立つ。
「それは光栄な事だわ。喜んで二人の祝福をさせて頂きます」
「ありがとうございます」
涙声のカチアを私は抱きしめる。
カチアの髪を切っても変わらない懐かしい金木犀の香りを存分に楽しむ。
「祝福がカチア達だけで終わればいいですけど」
ボソッと言ったヒルダの声は私には聞こえなかった。
ようやく、ヒルダ達も合流して、ウノシルディス解放作戦は終結しました。
帝国や、クロスロードの貴族との紛争とクロスロード帝国の建国、シュナイザーの結婚、タカツ地方の占領作戦など、シルディには多事多難な事でありますが、この物語は一旦ここで完結させて頂きます。
何しろ、ウノシルディスは平和になり、学園の生徒も学園に帰れますから。
ここまで最後まで読んで頂きありがとうございました。
尚、大幅な加筆、修正版をアルファポリスにて同名で投稿致しておりますので、こちらも読んで頂けると嬉しいです。




