戦いのあと10
わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。
そんな作者の願望から始めた物語です。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
短編の外伝を作成しました。
こうれからも不定期で作成してまいります。
『主人公じゃないけど頑張ります』
40話から45話のお話です。
『帝国の崩壊』
本文で語られている「先の大敗」のお話です。
「それはそうと、エリー。ブルックは朝食のあと何処に行ったのかしっている?」
私は、偶然テントの中の私に気が付いたカタリナを呼び寄せると、お茶とお昼ご飯の用意とハイデにクララをここに連れて来る様にお願いした。
「お兄様は朝の会議のあと、アレクセイと一緒に丘の上の要塞の工事現場に向かわれました」
「わざわざ、工事の進捗が気になったとは思えないから、タカツ地方の情報収集でしょうね」
「そうでしょうね。タカツ地方のシルディ機関でも情報収集は遅れています。
侵攻作戦を行うには、全く足りません」
「仕方ないわ。シルディ機関は帝国の情報調査に重きを置いて来たし、蛮族であるタカツ地方の調査は商人の伝聞情報しか無かったもの。
その点では留学生としてアクセレイを帝国士官学校に招いていた帝国の方が優位にあるわね」
「昨日の戦いが終わったあと、対岸を監視してはいますが、今の所、再侵攻を行う動きは無さそうです」
「恐らくウノ族の族長クラスは全員戦死したでしょうから、当分はウノ族の意思の統一は難しいはずよ。
生き残った部族の中ではアキム族が約1万で最大勢力と成ったでしょうし」
私達がそんな話をしていると、ハイデとクララ、そして何故かアンゼルム殿をつれてやって来た。
「私もご一緒してよろしいですか?」
「構わないわよアンゼルム殿。
こんな殺風景なテントでよければ」
「本部付の方々が既に陣幕を張って昼食の準備をされていますが?」
アンゼムルに言われてテントから顔を出すと、既に本陣が出来上がっり昼食の用意が整えられている。
「これは、忙しいのに余計な仕事を増やしてしまったわね」
これだけ大騒ぎになれば、隣のテントで作業をしていたクヌートとエルンストも当然覗きに来る。
「シルデイ様、一応伺いますが、どうされたのですか?」
クヌートが私に何か呆れた感じで聞いて来る。
「貴方達が忙しそうだったから、邪魔をしないように隣のテントで密談をしていたら、ついでに聞きたいことがあるのでカタリナにハイデとクララを呼びに行かせたのよね。
そうしたら、気を利かせた本部付の者達が陣屋を組み立てたと言う事よ」
私の説明にクヌートとエルンストは納得したらしい。
エリーは『いつもに比べたら些細なヤラカシです』等と要らざる事を囁いている。
「クヌートとエルンストも仕事に一段落が付いたなら昼食に付き合いなさい。
貴方達と一緒に仕事をしていた者も呼べばいいわ」
どうせヤラカすのなら、派手にヤラカシてあげましょう。
後の事はエリーに任せれば良い、私にも時にはストレス発散が必要よ。
15,6人に増えた者達が席に着き、昼食を始める。
もっとも昼食といっても、パンにハムを挟んだ物を紅茶で流し込むだけであるが、今日からは村の窯が使えるので、焼き立てのパンがあるだけ立派な昼食である。
「貴方達、ありがとう。
それとこれは余計な仕事をさせた手間賃、今晩にでもみんなで飲んで」
私は、ワインの特別配給許可証を用意をしてくれた本部付の4人にサラサラと書いて私のサインをして渡す。
「ありがとうございます」
許可証を4人に渡すと4人はそのまま、給仕係としての仕事にかかる。
「あの4人、あの許可証は使いませんよ。
各個人の名前が書かれたシルディ様直筆の許可証です。
家宝として飾られますわ」
エリーが私だけに聞こえる様に囁く。
「それじゃ感謝の意味が無いわね。エリー後で本部付の者達に差し入れを入れておいてもらえる」
「かしこまりました。
それならいっそ、今晩は焼肉パーティーにしませんか?
戦勝祝いもかねて」
補給担当のエリーがカタリナにハイデ、クヌートにエルンスト、つまり私の軍の総戦隊長の全員が居る前で、とんでも無い事を言い出した。
(これだけのメンバーの前で私が発言したら、それはもう確定の命令じゃない)
「肉は今から準備すれば、間に合うだろうけど、酒は用意出来るの?
私達だけと言う訳にはいかないわよ。
私達だけで1000人、ウノシルディスの騎士団と士官候補生で3000人、捕虜となっていた者が5000人、アキム族が9000人、全部で2万人分よ」
補給物資の全部を把握している訳じゃないけれど、大体は把握しているから全然足りない事は私にもわかる。
「シルディ様、鹵獲した物資をお忘れでは無いですか?」
完全に忘れていた。
「毒とか入れられていない?」
「その確認は昼から行います。
毒見は学園の生徒に士官候補生を使わせて取りあえず集めた家畜を使って行います。
何、100人も使えば2万人分の酒の確認など問題ありません」
エリーは珍しく楽観的な意見。
(これはエリーも相当ストレスが溜まっているようね)
「シルディ様、そのお役目を私とここにいる学園の生徒にお任せ下さい」
クヌートが真っ先に立ち上がり発言すると、午前中まで彼と一緒に仕事をしていたらしい10人程の学園の生徒も立ち上がり。
「「私達に、お任せ下さい」」
見事にハモッた。
「鹵獲した物資の確認は急ぎで行う必要のある仕事です。
ここにいる10人だけでなく、あと50人ばかり増員して、お任せしても良いのでは?」
エリーがもっともらしく、クヌートに賛同する。
(こういう言い方をする時のエリーは絶対に何か考えと言うか、悪だくみをしている。クヌートも学園の生徒と親しくなったようだし、任せてみるか)
「そういう事であれば、クヌートに任せる。
あと要塞の護衛を担当していない者を50人程連れて行っていいわ」
私はその場で命令書を作成してクヌートに手渡す。
「エルンストはどうする?」
私はさっきから何も言わずにクヌートから距離を置いているエルンストに尋ねる。
「はっ、それでは自分は逃げ散った家畜の捕獲と柵の作成を士官候補生達を指揮して行います。
それと、今日の宴会用の肉の準備もお任せ下さい」
なぜか、エルンストはクヌートとは別行動を取りたい様だ。
「判った、家畜の捕獲は任せる。カタリナ、貴方の部隊も彼に協力してあげて」
私は、何気なくカタリナに仕事を振った。
(だって、何となくハイデはアンゼルム殿と一緒に居たそうだったから)
「はい、かしこまりました」
カタリナはすんなりと引き受けた。
(エルンストは何となくカタリナに気があるようだけど、カタリナって一応ハイデの兄と婚約しているのよね。ハイデはちゃんと手紙を送ったのかしら、三角関係のもつれは嫌よ)
「ねえ、エリー」
「何でしょうシルディ様」
「クヌートの自薦をえらく積極的に援護していたけど何か理由があるの」
「シルディ様、鹵獲した物資の量をご存じですか」
10万人のウノ族がウノシルディス中から集めた50万人が冬を越せるだけの物資。
勿論全部が残っているわけではないが、半分としても途轍もない量。
その在庫管理と目録作りとなると、大変な仕事ね。
「ああ、それで仕事を押し付ける事にしたのね。
エルンストはその危険を察知して逃げ出したか。
実に麗しい男同士の友情ね」
「はい、なし崩しに物資の管理を任せます。
学園の子達もそっちの方の能力に長けた子の方が多いでしょうから」
私とエリーは二人静かにテーブルの下に隠して乾杯をした。
哀れ親友のエルンストに見放され、悪魔の二人の上司の生贄にされたクヌートのデスマーチが始まった。
実に呑気な昼食風景ですが、大戦があったのは昨日のお話です。
このバイタリティと言うかタフネスがシルディ達の軍の強さの秘訣ですね。




