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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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戦いのあと9

わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。

そんな作者の願望から始めた物語です。

この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。

皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。

火曜日と金曜日に更新を行います。


短編の外伝を作成しました。

こうれからも不定期で作成してまいります。

『主人公じゃないけど頑張ります』

40話から45話のお話です。


『帝国の崩壊』

本文で語られている「先の大敗」のお話です。

「それでエリー。4500人の台帳は出来上がったの」


「ええ、さすがにお兄様の下でウノシルディスの避難民の手配をした事があった二人です」

エリーの視線の先には、仮に作った難民収容所の本部で内の生徒達10人位に次々と指示を出すクヌートとエリオットの姿があった。


「仕事を振った時は死にそうな顔をしてたけど、何か生き生きしていない?」

学園の生徒達に次々と指示を出し、嬉々として台帳の作成や追加の調査の為にか難民の所へ馬を走らせる学園の生徒達。


「そうですね。

私と同じで、内政の方が荒事よりも向いている様ですね」


「多分、優れた軍人と言われる人は内政でも優秀なんだろうと思う。

もっとも、武勇とか勇気とかは、勉強してどうにか成るものじゃないのが厄介だけど」


「武勇と勇気だけの軍人も結構いますが」

私は「そうね」と言いながら、エリーを物置として使われているらしいテントに先導した。


「あれなら放っておいても大丈夫。

二人の仕事の邪魔しちゃ悪いから、こっちのテントで話ましょう」


「はい、シルディ様」

テントに置いてある適当な高さのタルに腰掛けるが、入り口は開けたままにしておく。

突然テントの中に人が入って来ないようにする為である。


だって、物置代わりに使っているテントに何も考えずに入った時に、公爵家令嬢と侯爵家令嬢が密談していれば、普通の騎士は腰を抜かす。


偶然に物を取に来た騎士がテントの中を見て、飛上って敬礼して出てゆくが、まあ、戦地上の混乱と言う事で許してほしい。


「そう言う人間は戦隊長までなら、戦場では役に立つけどそれ以上に出世させるとロクでもない事になる事の方が多いから、諸刃の剣ね」


「確かに困った騎士にはそのタイプが多いですが、戦いには勝たなければ話になりませんから、頭の痛い問題です」


「大体、剣や槍を構えて、殺す気満々の敵が怖くない人間なんて頭ネジが2,3本飛んでる。

まして、部隊の先頭を切って突撃するなんて、人間として何か大事な物が欠けているに違いない」

真理を説く私の言葉に何故かエリーは否定も肯定もしない顔をしている。


(あれ?戦争なんて非生産的な政治の失敗と何時も言っているエリーがどうして私の意見に賛同しないのかしら)


何故かこの話は此処までと言う空気をエリーが放ち始めたので

「それで、話を難民に戻すけど、やっぱり男手はいないものが多かった?」

私は元の話に戻す事にした。


「それがですね、男手は殆どがウノシルディスに出稼ぎ、又は年貢の運搬に向かっていて、戦って殺害されたと言う者は極少数でした。

逆に言えば男手が村に居ない瞬間をついて今回の侵攻は行われたと言う感じすらします」

エリーは何故この時期にウノ族の侵攻が行われたのか前から疑問に思っていた様だから、一つ納得できる材料が見つかったという所らしい。


「無理をしてでも槍騎兵の突撃をして捕虜を救出して良かったわ」


「はい、それ以外の選択をしていたら、領民にとんでもない禍根を残す所でした」

十分にアーレイで戦力的優位を確保する前に「一か八か」の賭けに出た私の騎兵による突撃はエリーの中では評価されたらしい。


「本当ならば、村に直(すぐ)に返しても良いのでしょうが、安全の為にはやはり一度全員ウノシルディスに移動した方がいいでしょうね。

第一、今の話を聞いていると、村にこの冬を越せるだけの食糧が残っている可能性は低そうだし」


「はい、この冬はウノシルディスで保護をして来年の春に村に戻した方が宜しいでしょう。

幸いにもウノシルディスには納税の為に運び込まれた穀物がありますので、これを放出すれば来年の秋までの食糧はクロスロード大公国の援護がなくても問題ありません」


「しかし、そうだとするとウノ族はどうしてこの時期に侵攻したのかしら、ますます不明だわ」


「回答になるかどうか分かりませんが、捕虜になっていた婦女子は家畜、それも羊の世話をさせられていた様です。

さらに、既にタカツ地方に送られた捕虜達の多くが紡績の技術を持つ者であった様です」

私にもエリーにも今回のウノ族の侵攻の目的の一つがおぼろげに見えて来た。


「ウノ族の目的は羊毛生産、毛織物製造技術の獲得だったのかしら」


「どうもその様ですが、ウノ族としては羊毛生産は出来ても毛織物製造までは出来ないと考えます」


「同感ね。毛織物製造には紡績や織機とか高度な加工技術と機械が必要で、それらはウノシルディスと学園でしか持っていないもの。

あとは、帝国か・・・・」


「シルディ様、これはあくまでも仮説で憶測なのですが、帝国の毛織物ギルドが帝国に働きかけたと考えれば、今回のウノ族の侵攻の説明がかなりつきます」


「帝国はクロスロード大公国の騎士団の再建よりも完全吸収を選択したと言う事か」


「はい、騎士団の再建にはあと10年は必要です。

ですが、クロスロードが制限を掛けている軍用馬の輸出制限が無くなれば、1年で再建可能です。

練度は低くても馬に乗せる兵はいるのですから」


「ウノ族にウノシルディスを侵攻させて牧羊産業と畜馬産業をクロスロードから奪う。

その上で帝国軍をウノシルディスに進駐させてクロスロードから完全にウノシルディスを奪い取る。

ウノ族が生産する羊毛は帝国の毛織物ギルドが引き受ける事で財政面でクロスロードを葬る。

畜馬産業は帝国が支配するウノシルディスで帝国が行う。

羊毛産業と畜馬産業を失ったクロスロードは帝国に吸収されるか」


「上手く出来たシナリオではありませんか?」

エリーは私の顔色を伺う様に見つめる。


「そうね、帝国がウノ族を併合するつもりなら、クロスロードは邪魔なだけだし、この策が失敗した所で、帝国には何のリスクも無いわ」


「はい、失敗してもクロスロードとウノ族が弱まるだけで、帝国には良い事しかありません」


「唯一の計算違いが私が単独でウノ族を撃退してしまった事か」


「帝国の毛織物ギルドにすれば、シルデイ様が本当の敵だったのですから、結果的にシルディ様のクロスロードでの政治力を高めて大失敗でしたね」


「まあ、私がギルド敵と言うのは昔からですし、この仮説は良く出来ているけど、物証は無い様なものですから記憶の中に留めておくと言う事にしましょう」


(確かに良く出来ている。一応ブルックにも話をして、裏図けを確認してもらった方がいいわね。タカツ地方に侵攻した時に決定的証拠が出てくれば、帝国との取引材料にはなるでしょうし)


「はい、シルデイ様」


「それよりも、今は逃げ散った家畜の確保の方が先決ね」


「羊だけで、ウノシルディス全体では300万頭、ただし、ウノ族の占領地域だけだと100万頭。

軍馬は5万頭、農耕牛は10万頭、食肉牛は100万頭。

豚や鶏、アヒルについては算出不能です」


「どれだけ、ここに残されていたの?」


「既に羊は50万以上が運びされれたようです。

あと、食肉牛も50万頭以上。

ただ、馬については殆ど見なかったと言う事です」


「運びされれたものは仕方がない。

だけど会戦の前にここにいた羊や牛については、明日から学園の生徒に集めに回らせましょう」


「そうですね。

あと難民達にも手伝ってもらいましょう。

豚については、塩があまり無いので塩漬け肉には出来ないので、燻製肉として食糧に回します」


「それでいいわ、精々2000人程度の補給しか用意していないあから、それが10倍になったら、とてもじゃないけど、兵站が保(も)たない。

今後のタカツ地方に攻め込んだ時の課題でもあるわね」


「はい、シルディ様」

シルディの頭の中には、この戦役で誰が一番得をしたかという事が常にあります。

実際にはウノ族は侵攻した10万を壊滅させられる大損害を受け、シルディの侵略を警戒しなければならない状況に追い込まれました。

一方、帝国は何の損害も受けていません。

クロスロード大公国はその支配地域に対する軍事的政治的支配力を弱めました。

実質的に国内にシルディにウノシルディスで独立勢力を作られ、有力な侯爵であるグランド侯爵家の勢力を合わせれば、クロスロードの大勢は既に決しています。

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