戦争のあと8
わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。
そんな作者の願望から始めた物語です。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
短編の外伝を作成しました。
こうれからも不定期で作成してまいります。
『主人公じゃないけど頑張ります』
40話から45話のお話です。
『帝国の崩壊』
本文で語られている「先の大敗」のお話です。
「さてとエリー、収容した5000人の難民なんだけど、何か情報はある」
「500人はここカロッサ村の住人でしたが、男性についてはウノ族の侵攻時、騎士はカロッサ男爵に従いウノシルディスにいたので無事、それ以外は既に連れ去られたか殺害されています」
「バルタザール殿、ここの領主のカロッサ男爵はこちらに向かわれているのですよね」
「昨日手紙を出したところだから、実際にはまだ出発していないだろうが、カロッサ男爵の配下の騎士達であれば、30人程が従軍しているので、昨日の内に村に返して、そのまま村の護衛に就かせている」
「そうですか、その30人とは今日の内にお話しをしますので、時間を設けてもらえますか」
「かしこまりました」
「それとエリーうちの学園の生徒にはカロッサ村出身の者は居なかったと思うのだけど間違いないかしら」
「親族までは判りませんが、直接の出身の者は居ません」
私もエリーもまだ全ての学園の生徒の出身地をかろうじて覚えている。
来年以降は怪しいが、まだその程度の時間の余裕は欲しい。
もっとも、来年学園が再開できるかどうかが微妙な所であるが。
「クララを村に向かわせて、臨時の代官に任命し、村の立て直しを命じます。
当面の生活が出来る様に環境を整えさせて下さい。
住民も領主の娘が村にいれば、安心でしょう。
エリー、必要な物資、人手については要望を聞いて可能な限り手配してあげて」
クヌートとエルンストがクララに任せて大丈夫なのかと呟いているが、彼女達の学園での教育の主眼はそっちだから、戦争をするよりよっぽど上手く出来るわよ。
「さて、話を戻すと、あとの4500人は他の地域からつれて来られた者と言う事ね」
「では、エリー、戸籍調査をお願い。出身地と名前、親族の生死が判る場合はその情報を集めて貰える」
「かしこまりました。今日には完了出来ます」
平然と答えるエリーにクヌートとエルンストが「さすがエリー様」「仕事が早い」などと感心している。
「いっておきますが、クヌートとエルンスト、私一人で行う訳ではありませんよ」
兄のブルックだけではなく、妹のエリーからも仕事が振られると思ってびくつく二人。
「何の為に学園の生徒がいると思っているのですか?
戦争が終わったなら、本来の仕事に戻ってもうらうまで。
教室で学ぶ事だけが授業ではありません。
戸籍調査は内政の基本。
1人あたり11人の調査なんて3時間もあれば十分、午前中には完了です」
(エリーが私が言いたかった学園の生徒の自慢をチャンとしてくれた)
「なるほど、流石は学園の生徒。戦争が終わっても大活躍なのですね」
クヌートの何気ない誉め言葉に天を仰ぐエルンスト、ブルック、バルタザール殿、そして私。
「ブルックお兄様」
地の底から湧き出す様なエリーに
「わかったエリー。どうせ5日間は仕事らしい仕事は無いし、君の好きな様にして良いよ」
さっさと後輩の首を差し出すブルック。
絶望の眼差しでクヌートを見るエルンスト。
「クルート、エルンスト、二人を難民の身元調査の責任者に任命します。
今日の午前中までに報告書を私に提出する事。
調査には戦隊長を除く学園の生徒を自由に使って宜しい」
エリーから出される地獄の沙汰。
「学園の生徒と仲良くなれるチャンスよ。よかったわね」
と私は二人に雑務を押し付けられて大喜び。
「クルート」
「・・・何かなエルンスト」
「もうお前は今日は俺に無断で喋るな」
「・・・わかったエルンスト」
このクルートがエリーの逆鱗に触れた結果が何かを生むのか生まないのか、これだから人生は面白い。
◆ ◆ ◆ ◆
「さて、あとは2000人の負傷者だけど」
「重傷者は500人程で内200人は助かりませんので、楽にしてやります。
残りの300人は5分5分と言う所ですが、昨晩エリー殿から頂いた薬が効いて皆安定しています」
アレクセイ殿の報告は感情を押さえた事務的ものであった。
「エリー部隊の薬を分け与えたの?」
「はい、シルディ様。
私の独断で分け与えました」
「そう。その事を咎めるつもりはありません。
私達は野蛮人ではないのです。
戦闘が終わった以上、敵であっても助ける事が出来る命は助けるべきです」
「タカツ地方への侵攻作戦は、今から10日後位になるでしょう。
そして20日ほどで、橋頭保と侵攻拠点を建築し、本格的な侵攻は春を待ってと言う事になります」
初めて明かされるタカツ地方への軍事行動予定に一同の耳目が集まる。
「アレクセイ、30日ほど後、冬が始まる前に負傷者は全員タカツ地方に移送、各部族への引き渡しを行います。
その間に死亡した負傷者の遺品の中で武器、防具、それ以外に個人を特定できる物はひとまとめにして各部族に引き渡しが出来る様にまとめて置いて下さい」
「かしこまりました」
「それとアレクセイ。昨日エリーが渡した薬はとても危険な薬、ハッキリ言って毒薬です。
健康な者が常用すると、容易に中毒症状を生み出し、精神に異常をきたします。
くれぐれも使用方法と管理を徹底させて下さい」
「了解致しました」
「それとアレクセイ、貴方の部隊には、ここと対岸につくる要塞で使用する木材の伐採をお願いします。
ここで必要な長さにカットした上で筏に組んで一気に運搬します。
丘の上にある木材で使える物は全て伐採してかまいません。
あと足りない物はここからウノシルディス方向に向けての森を伐採して使用します」
「ブルック、そちら方面で伐採予定の木をマーキングして下さい」
「了解した」
「それでは、解散。また明日の朝にお会いしましょう」
普通戦後の処理は大変な仕事のはずだけど、何かを作るという作業は私にもエリーにも心弾ませるものがあった。
時系列的には、この会議の5日後にヒルダ率いるブルマイスター要塞解放軍がブルマイスターを出発する事になります。
ブルマイスターからカロッサ村まで、130キロ。
今回は急ぎの行軍ではないので、将来の野営地の整備も兼ねてのんびりと進んでくるので、5日から7日は掛かるでしょう。
その間9000人のアキム族は木こりに明け暮れます。
1000人の士官候補生とウノシルディス騎士団1500人は要塞建築と造船作業です。
では、学園の500人は何をしていたかと言えば、次のお話になります。




